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世界の都市・地域の最新事例を紹介するマガジンです(平日毎日更新)。 「case」では海外記事を抄訳して海外の都市計画関連の最新事例を紹介しています。「insight」では海外の最…
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#持続可能性

ワシントンD.C.は太陽光発電を備えたドッキングステーションの試験運用を開始

case|事例 ワシントンD.C.は、公共の自転車シェアシステム「 Capital Bikeshare (CaBi)」のドッキングステーションで太陽光発電システムの試験運用を開始する。太陽光発電システムは4か所のステーションに設置される。この実証は持続可能なエネルギーを利用する試験的な取り組みの一環で、地区エネルギー環境局(DOEE)が375,000ドル(約5,700万円)を助成する。太陽光充電ステーションの設置はLyftとの協働で進められ、将来的に20%から30%のステー

ヘルシンキが観光地の持続可能性評価で世界トップ

case|事例 Global Destination Sustainability Index(GDS Index:観光地の持続可能性に関するグローバル指標)の2024年のレポートが公開され、ヘルシンキが1位に輝いた。トップ5はスカンジナビアの都市で占められており、2位から5位にはそれぞれヨーテボリ、コペンハーゲン、ベルゲン、オーフスがランクインした。アジア太平洋地域の都市の台頭も著しく、シンガポールやシドニーをはじめいくつかの都市が上位40位にランクインした。 GDS

8km未満の移動の25%を電動自転車に置き換えることは33.8万台分の自動車交通の削減と等しいと試算

case|事例 ロッキーマウンテン研究所(RMI)は、電動自転車の普及が環境や社会に及ぼす影響を評価するためのツール「E-Bike Impact calculator」を公開した。このツールでは、短距離移動を電動自転車に置き換えた際の効果を2つのシナリオで評価することが可能。ひとつは、現在の与条件の下で都市全体の影響を評価するもので、10年間の累積効果が算出できる。もうひとつは、電動自転車の普及のためのインセンティブを変数として評価するもので、市の予算やスケジュール、車両タ

気候変動対策への都市農業の効果

case|事例 ミシガン大学は、フランス、ドイツ、ポーランド、英国、アメリカの都市農業従事者が参加した都市農業と従来農業とのカーボンフットプリントの比較研究論文をNature Citiesで発表した。計73ヶ所の都市農園が参加する過去最大規模の比較研究となる。 今回の研究では、2019年のシーズン中に実施したダイアリー調査のデータを用いて農業インフラ、供給、灌漑用水からの温室効果ガスの排出量を試算している。都市農業と従来の農業を比較すると、都市農業では平均してCO2を1食

ワークプレイスの再定義―Gensler社のレポートに見る8つのメガトレンド

case | 事例 米国最大の建築設計事務所Gensler社は先般業界展望レポートDesign Forcast 2024を上梓したが、同社の16ヵ国53ヶ所の広範な設計業務の経験から構成されている内容は、仕事と生活と遊びの場としての都市の未来が焦点となっており、人々のつながり方の変化を捉えて、モビリティ問題、気候変動、インフラ、住宅などの領域で都市を再設計することを促している。 レポートでは都市に都市に関わる8つのメガ・デザイン・トレンドを提示している:(1) 「体験の乗

未来のゾーニングはテクノロジーと持続可能性の融合によって形づくられる

case|事例 世界の多くの都市が、人口増加や気候変動、経済の不平等さなどの都市課題に取り組んでいる中で、革新的なゾーニングのソリューションのニーズは日に日に高まっている。そして、新たなゾーニングソリューションは、新しい技術の台頭と持続可能性の必須性が駆動させると考えられる。 技術面においては、データ駆動アプローチによる効果的・効率的なゾーニングを可能にすると言える。大量かつ多様なデータへのアクセシビリティが日進月歩で高まり、より多くの情報に基づいて意思決定を行うことが可

ニューヨーク州は米国で初めてコンクリートの低炭素調達のルールを設定

case|事例 ニューヨーク州は、2025年1月1日から州の公共建築の開発や交通インフラの整備で調達するコンクリートのCO2排出制限「the Buy Clean Concrete」を設ける。すべての州機関が契約する38立方メートル以上のコンクリートを使用し建設費100万ドル(約1.5億円)以上の開発、およびニューヨーク市交通局が契約する152立方メートル以上のコンクリートを使用する300万ドル(約4.5億円)以上のプロジェクトが対象となる。緊急性が求められるプロジェクトや高

トロント・シティ空港の持続可能性への取り組み

case | 事例 ビリー・ビショップ・トロント・シティ空港(YTZ)は、トロント都心のすぐ先のオンタリオ湖に浮かぶセンター島にある空港で、ポートトロントが所有・運営しているが、空港をユニークな旅行体験の場にしたり、より静かで持続可能な空港にするため継続的に更新を進めながら、カナダと米国の20以上の目的地にフライトを運航している。 トロント市街側の空港エントランスとセンター島のターミナル間には、2015年に開通した歩行者用地下トンネルでのアクセスと、2021年にカナダ初の

商業空間に対する都市景観・デザインの重要性が増している

case | 事例 米国の小売環境は大きく変化しており、従来の郊外型ショッピングセンターから、ECを背景に小規模なアメニティに富んだビレッジセンターや街区商業の時代へとパラダイムシフトしている。また、パンデミックを経て、屋外での活動、歩きやすさ、自然資源や質の高いオープンスペースへのアクセスが重視されてきている。 事例研究から得られる示唆として、(1) 伝統的な都市型のメインストリート小売はあらゆる地域開発における中心的存在であり続ける。(2) 伝統的なデザイン・スキル(

バーミンガム市の「食の正義」に向けた取り組み

case | 事例 バーミンガム市議会は昨年の都市食料政策ミラノ協定(MUFPP)の世界フォーラムで「世界食の正義誓約(GFJP)」を立ち上げた。GFJPはパンデミックにおける食料不安の教訓から、国内外の都市間の協力と協働を進めることを目的にしている。社会的・経済的資源に関係なく、世界中すべての市民のために、安価で栄養価が高く、持続可能な食料システムを構築し、支援するための横断的な政策の必要性を強調している。(MUFPPは、世界200以上の都市が署名している都市の食料政策に

独ハノーファーは都心を人間中心の空間とするために自動車の締め出しを検討

case|事例 ドイツ北部の都市ハノーファーは、都心を散歩やパーティを楽しめる人間中心の空間とし、レジリエントな商業拠点へと再編するために、都心から自動車を締め出すことを検討している。より持続的で環境にやさしい都市になること、そしてオンラインショッピングの台頭によって空洞化してしまった都心の商業地を再生することを目的としている。 具体的には、都心に4,000台分ある路上駐車帯を撤去し、解放されたスペースにカフェやテラスを設置したり、緑化を進めたりする。また、都心の道路網は

ボストンは雇用条件の見直しでバス運転士の不足を改善

case|事例 ボストン市を中心にマサチューセッツ内の公共交通を担っているマサチューセッツ湾交通局(MBTA)は、数か月にわたってバスの運転士不足による運休や本数の削減を強いられてきた。5月に公表されたデータによるとパンデミック以前よりも200人も運転士が減少しており、公共交通の運行をパンデミック前の水準で維持することが難しい状況になっている。これはMBTAが今後5年間で26%サービスを拡大しようとするタイミングでもあり、将来のサービス拡充計画は幸先の悪いスタートとなった。

都市を冷やすために「スマートサーフェス」に取り組むアメリカの都市

case|事例 アトランタ、ボストン、コロンビア(サウスカロライナ)、ダラス、ニューオリンズの5都市が、都市へのスマートサーフェス技術の実装を目指すスマートサーフェス連合(Smart Surfaces Coalition)の複数年のプロジェクトへの参加に署名した。スマートサーフェス技術は、遮熱性の屋根や舗装、屋上緑化、太陽光発電、多孔質舗装、雨水貯留ガーデン、植樹などを指し、ヒートアイランドの緩和が期待される。 5都市が署名した複数年のプロジェクトは、ウェイバリー・ストリ

米オースティンのグリーン・ジェントリフィケーションの事例

case | 事例 テキサス州オースティンは米国の環境配慮型都市の1つとして知られており、持続可能性に感度が高い求職者、起業家などが近年集まっている都市でもある。しかしながら、オースティンはグリーン・ジェントリフィケーション(高級化)の課題を抱えている。持続可能性と環境に配慮した計画が理想的な地域づくりを進め、不動産価値と家賃を上昇させ、長年住んでいた住民をその地域から追い出す不幸なプロセスが見られる。環境に配慮したプロジェクトは善意に基づき進められる一方で、環境、社会、経