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二月に三月を想うということ

朝起きると12時を過ぎていた。もう朝じゃなかった。三度寝くらいしていたみたいだ。

夢を見ていた。商店街の隅にある、あのレコード屋にいく夢。その夢の中で何をしたのかは忘れてしまった。

そのレコード屋には一年前に行ったことがある。レコードプレーヤーは持っていなかった。代わりにCDを何枚か買った。1000円くらいだったと思う。Nirvanaのブート、ClashのCut the Crap、Stevie Ray Vaughanのコンピ(マーティン・スコセッシ監督の選曲のやつ)。それからすぐにレコードプレーヤーを買おうと思っていたのに、結局今も持っていない。

来月には必ず行く。レコードプレーヤーも買おう。近所の電気屋に行けば、手頃なやつがあるはずだ。あそこのオーディオ機器の品揃えは良いから。

そう、来月には。来月には高校生という資格は剥奪されてしまう。なんて嘆きながら、すでに僕は半ば高校生でもなく、受験生になってしまっている。


朝ごはんと昼ごはんを同時に食べて、皿を洗いながら小さなスピーカーからEelsを流す。アルバムタイトルは知らない。目の大きな子供のジャケットのやつだ。EelsとかWilcoとか、あの辺りのUSインディーは良いものばかりなんだろうけど、きちんと聴けてない。なんとなくUSインディーって大学生が聴いているイメージがある。ちょっとおしゃれな世界で、僕なんかが聴いてもどこか背伸びしているような感じがして。

自分の部屋へ戻り、赤本を開くことにした。数学を解いた。試験時間は120分だったのだけれど、30分を残して完全に手が止まってしまった。これ以上はどう足掻いても僕の力では解けないと分かる。

ストップウォッチを止めて、居間に行く。家族が録画していた「ミステリと言う勿れ」を観ていた。序盤だったので一緒に観る。面白かった。菅田将暉と伊藤沙莉はやっぱり上手いなと素人ながらに思う。好きな俳優を訊かれたらこの二人を挙げておけばどの層にも印象は良さそうな気がする。


Eelsを聴きながら数学の解答を見る。解き直してはいたけれど、脳は全く働いていなくてEelsに耳をすましていた。

二月にもなると、いまさら知識を溜め込んでも無駄な気がしてしまう。知識量が相対的に不足してるのは知っている。でも単語帳なんか開くと自分の知識不足にゾッとして、更に単語を覚える気がなくなってしまう。言い訳だってことは分かってる。今日も一日無駄にしたのも分かってる。甘えだって分かってる。分かってる、はず。

三月になれば、あのレコード屋に行こう。CS&Nとかレナード・スキナード、ニール・ヤングだとか、そういったレコードを買おう。近くにある、あの映画館にも行こう。どんな映画でもいい。どうでもいい映画を観よう。

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