リヴァプールのMF補強は何処へ向かうのか

※本記事は全文無料で読めますが、記事に価値を感じて頂けた方は100円でも100兆円でも構いませんので投げ銭/サポート下さい

リヴァプールは適切なMFを買う。ただし夏に話がまとまる可能性は低く、冬か来夏になる可能性が高い。理由は下記の通り

1優秀なオーナーによって適切な投資が継続的に行われている
2現行ルールより厳しい新FFPルールが来年から施行される為、予算が限られている
3評価していた選手(チュアメニ)が他クラブへ移籍し、狙っている選手(ベリンガム)が売りに出されておらず評価している選手(ネベス?)の所属クラブが売りたがっていない

最後にリヴァプールの補強が進まない原因についての仮説と問題解決法を提唱し、今後のリヴァプールのあるべき姿を妄想して本稿は終了です

1最高ではないが優秀なオーナー

買収後のFSGの動きは酷いを通り越して呆れるとしか言えないものだったが、クロップ就任後の彼らの動きはMFの補強を除けば素晴らしいとしか評価のしようがない。何故そう言い切れるのかと言えば、リヴァプールと他クラブの資金の使い方をまとめた下の良ツイートをご参照ください

上記の金の使い方を見てもらえば分かると思うが、最近のFSGの運営には何も問題がない。勿論、FSGのサポートは無尽蔵の資金を供給する天然資源をバックにした金満オーナーの資金的な支援とは大きく異なる。FSGの目的が無尽蔵に資金を供給してタイトルを獲得する事ではなく、クラブの資産価値を上げる事であるのは疑いようもない

しかしクラブの資産価値を上げる為にはタイトルを獲得してファンを増やして良好な関係を築く必要があり、FSGの目標は最低限の投資でタイトルを目指してクラブの資産価値を高めようとしている。その証拠に財政事情が厳しかった買収直後にはスタジアム拡張を名目に市場の金利よりも遥かに安い金利で大金を貸付け、貸し付けた金の一部を資本金に組み込んで資金の回収を諦めた

確かにクロップ就任後からは一切の資金援助を行わなくなり、COVID問題でリヴァプールが苦境に陥った際に資金の援助をしなかった。結果として過去5年間でのオーナーからの資金供給は0、そのうえ£37mをクラブから回収している最悪のオーナーに見えるのかもしれない。それでもクラブに貸し付けた金を回収するのはクラブが安定的に利益を出せる状況に限られると言った通りの行動をしている。コウチーニョ等の売却益で儲かった際には過去の貸付を回収した一方で、COVID問題で収入が減ったリヴァプールから資金を引きあげる事はしていない

リヴァプールが事業で稼いだ金の全てをリヴァプールFCに再投資する事を認めており、実際その通りになっている。オーナーが一切の資金援助をしなかったのでリヴァプールはCOVID問題でスタジアム収益が途絶えた影響の穴埋めに£150m近い金を銀行から借りて乗り切り、£70mを1年後に返済してコロナによる無観客という経営危機を乗り切る事に成功した

£70mも財政的に余裕が生まれたのなら金利も低いのだし銀行に返却せず補強をするべきだった、という指摘は正しい。だが、中盤の補強が上手くいっていない根本的な原因はクラブの思想よりも短期的な解決策を一切好まないクロップの補強に対する哲学にある、と私は考える。この点については4補強が進まない真の原因はクロップにある?説という仮説にて取り上げる

オーナーについては勿論ユナイテッドのように金は出さない、お金は盗むといったオーナーであれば退陣を要求するのは賢い行動である。しかしながらFSGは非常に賢いオーナーで一切の資金援助をしないものの、クラブの基準を著しく高める事に成功させた優秀なオーナーだ。彼らを退陣させるなどマヌケがやることである。何故なら来季からルールが変わると分かっているからだ

さてオーナーからの資金援助が足りないのでシティに勝てないと思っている方々に素晴らしいお知らせがあります。オーナーからの資金供与は行き過ぎたバブルを生みだしバルセロナのようなマヌケな自傷行為をするクラブを生んでしまったため、23/24シーズンから制限がかけられる事になりました

チェルシー、シティ、PSGの成功原則はニューカッスルという最強チートクラブの登場によって来季からチートと認定される事になりました。自分の成功のためには都合の良いルールを作るけど他人の成功は認めない為にルールを変える、いやー現金です欧州フットボール界(というかPSG)

これまで通りにオーナーからの資金援助が無制限に認められ、赤字を垂れ流してもルールで認められていた過去の世界ならFSG OUTは良い掛け声だった可能性があります、たかだか1000億円くらいの売上しかない欧州フットボール界に数兆円の資産を持つ人間から毎年数十億円を貰えばバカげた補強が可能ですから全く否定する気はありません。しかしルールが変わってもFSG OUTと叫んでいるのは、くどいようですが賢明とは言えません

2立ちはだかる新ルール

新FFPルールの適用により2324シーズンから売上と移籍金で得た利益の90%、2425シーズンから80%、2526シーズンから70%しか選手の給与と移籍金に使えなくなる。2324と2425シーズンについては新ルールへの移行時の特別ルールであり、長期的には70%に制限される。一部の報道とはPlayer Wagesと記載されており、一部の報道ではPlayerが記載されていないので制限は選手への支払いに限られるのか、スタッフのコストも含まれるのか、社会保障費も含まれるのか、細かいルールは条文が公になるまで定かではない

ただリヴァプールは平均するとP/Lベースで給与と移籍金に70〜80%(上記ツイートの表を参照するとキャッシュフローベースでは過去5年は77%)を投じてる。だが選手以外の給与に5%程度は使っているから選手の人件費と移籍金や代理人への手数料に70%の制限がかかるならば新ルールの影響も殆どないはずだ。またケイタとチェンバレンという2大不良資産の償却と年俸負担が今季で終了するのでそれなりの補強予算が生まれる。そのため来季にベリンガムという高価な買い物をしようとしているようである

費用面だけでなく売上面でみても支払い余力は増えていく。詳細は(私は暇つぶしというより小遣い稼ぎで記事を書いてるので課金して)下のリンクを読んでもらいたいが、端的に言えばリヴァプールの売上は劇的に伸びている

上のリンクの記事に記載されてない更なる増収要因としてStandard Charteredとの契約延長と実現すればスタンドのネーミングライツがある。昨シーズンにリヴァプールが冬に必ず補強するといって的中させた私の計算上では、今夏に誰も取らなければ冬に確実に補強する(夏に獲得したなら当然ですが冬には獲得されません)

抜け道に対して厳しい罰則が設けられているならば、この新しい規制ルールはオーナーからの資金供給でバブルが起きているフットボール界に歯止めをかけるルールになる。リヴァプールのオーナーであるFSGはお金を使う事なくリヴァプールが稼ぐお金だけで出来る最高の成功をする事でクラブの資産価値を上げようとしているため、この規制によってリヴァプールが受ける影響は殆どない

というか新ルールの制限ギリギリまで攻めた経営をしている為、リヴァプールにとっては大きな追い風となるポジティブなルールである。オーナーからの資金でブーストしているインチキクラブをリヴァプールと同じ次元まで下げようという新ルールの導入が私は待ちきれない(3年先の話です)

ちなみにプレミアリーグでもUEFAの新ルールに合わせて年俸と移籍金を制限するルールが制定されると言われているが、UEFAのルールよりも緩いルールが作られる予定だという。現在のUEFAのFFPでも過去3シーズンの損失0が基準のUEFAルールに対してPLルールは£105mまで赤字を出せる。そのため欧州大会から漏れている中堅クラブの方がオーナーのローンを使って過剰な投資を行っている。彼らを羨ましいと思う必要はありません。彼らは欧州の大会に出られないから欧州のルールを無視してお金を使っているだけ。欧州大会に出られない寂しさを移籍期間という僅かな期間に埋めているだけなのだから

昨季アーセナルが過剰な投資を行ったのも欧州大会への参加がない為に奮発しただけの話だ。そのアーセナルは昨季までの3シーズンの結果でFFPルールを違反した可能性がある。昨冬に選手を放出した分の補充が出来なかったのはUEFAの大会に出る可能性が高いのでUEFAのFFPを守るためには余裕が全くなかったからである。彼らの売上はPLの放映権料が増える今季も上手くいって£450m程度であり、リヴァプールの収益からすれば70~75%程度過ぎない。新しいFFPルールが導入されればリヴァプールのようにそもそもの収益が大きいクラブが得する仕組みになっている。彼らが金を使い込んでいるのはオーバメヤンの給与負担が減ったことやラカゼットなど退団した選手の移籍金負担が減ったからルールが緩い間に戦力を積み上げてCL出場できるチームにしようと頑張っているだけの話だ

またチェルシーはアブラモビッチの債権放棄による特別利益が生まれた事とリュディガー、ドリンクウォーターなどのフリー移籍やバークリーとの契約解除で負担する減価償却費が減った事を穴埋めしているだけである。彼らの収益はリヴァプールの収益よりも少ないため、CLの出場権で逆転できなければ少ない収益で移籍金と給与面でもリヴァプールに太刀打ちが出来なくなるのである。くどいようだが新ルールが厳密に適用される事を祈っていれば、リヴァプールは優秀なFSGが執念で積み上げた英国No.1の売上のベースによって競争を優位に進める事ができるようになる

もちろん、売上がNo.1だったにも関わらず補強をしないでオーナーにお金を盗まれてチームが弱体化してから慌てて投資を再開し、微妙な選手に大金を払って競争優位性を失ったクラブが近くにあるのでリヴァプールの成功が永続するとは決して言えない。だがオーナーからの資金供給を断つ新ルールが成立することで世界トップ5の競争優位性を築くことができるだろう

新しいルールをクリアして恩恵を受けるクラブはリヴァプールだけではない。バイエルン、トッテナム、マドリー辺りも恩恵を受ける事になる。特に恩恵を受けるのはリヴァプールと同様に稼いだ金を全てビジネスに注ぎ込んでいるレアルまどりーになる。彼らとリヴァプールも現在の水準と同じペースで許されるギリギリまで投資をするだろう

一方でシティの収益は放映権料に依存しており、20/21シーズンは英国最高の売上高になったのは放映権料の支払い遅れで普段より多く放映権料が計上できたからである。オーナーの関係会社と新たなパートナー契約を結んでいるので更なる増収が見込まれているが、リヴァプールの売上に届く事は恐らくない。そのため今後のルールを守るためにククレジャに大金を支払わずベルギーから若手獲得する事になった。彼らは賢く新しいルールへの準備を始めている

短絡的にFSG OUTと言っている人たちは3シーズン先の25-26シーズンにFSGが行ってきた収益を増やすための取り組みが実を結ぶことが見えていない。FSGは過去の失敗を踏まえて優秀な選手を維持する事が重要だと考えるようになった為、彼らのように無責任にリスクを取る事はしなくなった

”We cannot just push the button, say 'bring him in' and we worry about all the problems it could create next year or later on. Yes, then we get injuries and all of a sudden it looks like, oh yes, we need a midfielder, definitely.

クロップがこのように言っているのは短期的な選手の獲得によって長期的なターゲットの獲得に支障をきたすという意味だけではなく、今季にお金を使いすぎる事によって来年・再来年・再再来年から生じる新しいルールによって問題が引き起こされる事をクラブから聞かされているからだろう

リヴァプールは仮に欲しい選手が市場に出ていなかったり、法外な価格を要求されたせいで夏に選手を取れなくても冬に選手を獲得する。また冬に限らず新ルールを守れるギリギリの水準で今後も補強を続けるだろう。全ては冬に結果が判明する。私は次の補強が楽しみである

3イライラさせる進まないMF補強。適切な選手っていつ市場に出るの?

確かにリヴァプールのような強いクラブが必要とする選手は非常に少ない。該当するポジションに対して世界で5人すら居ない事もザラである。したがって正しい選手が居なければ補強はしないというリヴァプールというよりクロップの方針は出場時間のリスク管理が出来ていれば正しい方針と言える。20/21シーズンでロヴレンの代役として短期的な解決策となる選手を買わなかったのは大失敗だったが、今回のMFについてはクロップが言う通り「量」の問題はミルナーを守備的MFの戦力とカウント出来るメンタルがあるならばないと言ってもいい。問題は全て「質」の問題なのである

したがって正しい選手が取れなければ選手を買う必要はない。そこは認めよう。だが、その状態を放置して何年が経つだろうか。2018年のCLでヘンダーソン、ワイナルドゥム、ミルナーというEL決勝のメンバーが間違ってCL決勝のピッチに立っているのではないかというレベルのMFをスターターに据えて完敗を喫してから5シーズン9度目の移籍期間となった今もファビーニョとチアゴしか補強出来ていない。控えになるべきヘンダーソンが2022年のCL決勝も先発で出場した事は衝撃であり、控えとして相応しい戦力も調子が悪くない時(年に20回ほど)のケイタしか増えていない。だからバカげた話と言っているのだ。一体何年にわたって弱点を放置しているのか

だがしかしファビーニョとケイタに大金を支払った1819シーズン以降でリヴァプールが必要とするレベルの即戦力が移籍することは非常に少なかった。若手としては驚異的なスタッツを叩き出すカマヴィンガは獲得したかった選手の1人だが、本人のレアルマドリー志望が強烈に強く数多の強豪クラブを門前払いしたので取れなかった

給与も能力も適切だったと思われるのは9月に獲得することになるチアゴを追いかけていた2020年に金がない中で8月に移籍を決められてしまったホイビュア、ローンという短期的な選択は取らないというクロップの方針によって獲得が見送られた1819シーズンのコヴァチッチくらいしか居なかった。チュアメニに£85mを払うだけの財力はなかったので「長期的なプラン」を選択し続けると、なんと現在のスカッドが完成するのである…なんという皮肉だろうか

全ての弱点に資源を割り振って沢山の同じレベルの選手を買ってリヴァプールの基準に到達しないと選手を糾弾し、金をドブに捨てていたクロップが来る前のリヴァプール。これを変えたのがクロップの長期的な視点で適切な「本物の」選手を厳選して獲得するという移籍市場の哲学だった。その成功を支えた長期プランというドグマによって短期的な応急処置を行わないためリヴァプールの中盤の脆弱さを生み出しているのである

4補強が進まない真の原因はクロップにある?説

クラブが出来る限り投資を抑えて可能な限りの長期的な成功だけを目指していて資金を注入する気がサラサラない事。来シーズンから適用されるオーナー資金の供給制限。クロップが成功した秘訣である長期的な移籍プラン最優先主義によって補強は進んでいません

リヴァプールはロヴレンが退団後に補強しなかったのと同様にワイナルドゥムが退団した後もMFの補強がされていない。この点についてクラブの野心を疑う声も多いが、果たして本当に全てがクラブの責任なんだろうか

果たしてこの決断がクラブ上層部によって引き起こされたものなのか、クロップの決断によるものかは不明である。だがクロップが現状のMFに満足していて素晴らしいMFが安価でやってくるまで補強する意思がなかった可能性を否定する事も出来なくなってきた

加えてリヴァプールはもっと多く不良債権となった選手を売却して補強の資金を稼ぐことにより、中盤の質を底上げする事は出来たと私は考えている。何故それをしなかったのかを推測するため、クロップのニューキャッスル戦の前の会見での発言を見ていただこう

"The situation is the following: we started the season with nine midfielders and every aspect was in; creativity, speed, excitement, young players, technique, runners, fight, stuff like this. Whatever you wanted, it was all in.

初っ端から目眩が止まらない発言で申し訳ない。ファンのひいき目を込みでもファビーニョとチアゴしかクラブのレギュラーに相応しい選手は居ないというにも関わらず、クロップはシーズンが始まった頃には9人のMFを抱えて全てが揃っていたと言うのだ

周囲と連動してスペースを使って周りに使われたり周囲の味方を上手く使う能力に長けたエリオットとカルヴァーリョはプレミアの16クラブを叩くだけの控えレベルにはあると言える。ただエリオットには素晴らしいトラップ技術と左足のキック精度があるものの、身体能力と守備意識や対人守備力といった課題がありどちらかといえば現時点でのスキル構成はFWだ

狭いスペースでボールを受けるトラップ技術とエリオットにも見習ってほしいほど上手なボールの受けるイメージを持ったカルヴァーリョもフィジカルが弱くて相手ブロックの外側から仕掛けるIHには向いていない。彼らを戦力にカウントするならば4−2−3−1など2センターに切り替える必要があり、4−3−3で戦うための戦力とは言えない

4−3−3で戦力と言える選手は衰えたとはいえどボトム10クラブを殴る際のアンカーにはなる控えレベルのヘンダーソン、(年に20−25試合しかないが)調子が並でロングボール戦術じゃないCLベスト16、PL中堅レベルのチームを殴る時だけ頼りになるケイタの4人しか居ません

昨季ワトフォード戦で大活躍しノリッチやバーンリー戦でも活躍したミルナーは既にPLに残留するクラブを相手にMFとしてプレーすれば良くて足を引っ張らない程度で、活躍できる能力ではなくなった
ジョーンズはエリオットやカルヴァーリョに匹敵する技術を持ちながら周囲を使う能力も周囲に使われる能力も守備力もなくMFとして計算するのは無理がある
コンディションの良い時のチェンバレンは屈強なPLでも殆どの選手が止めることが出来ないドリブル突破力を持っているが、パスもトラップも雑でとてもMFとは言えないクオリティだ

私の中では5人しか戦力と認められない9人のMFはクロップに言わせると完璧な9人との事です。この発言はとある疑惑を生む恐ろしいものだ。クロップがMFに問題を感じていない為、補強が遅れているという恐ろしい説である

"They all have contracts and then you start a pre-season and when a player with a one-year or two-year contract comes in and [hypothetically] says: 'I didn't play often enough last season, I want to go' in that moment, they go. But the one thing that we actively push people out and say 'you are cut out now, what you did was great until last year but now we don't like you, so go'. We are not like this.

ここは恐ろしい発言です。契約が残り1,2年で昨年出場が少なかった選手が退団希望を出したので許可した。ここまでは良い事です。この次の文は暗い気持ちにさせるには十分な発言です。「貴方は戦力外だ。これまでの活躍は素晴らしかったが、貴方に出て行って欲しい」我々はこういうのは好きではない…

"So it means we had all different aspects of a midfield game. You all told me - you are the ones who ask the questions - do I need a midfielder? A 10th midfielder!? I am not sure, but we were going for a midfielder who decided to go to another club, which can happen.

我々は全く違う見地でMFの駆け引きをしている。10人目のMFが必要かって?私には分からないけど仮にMFが退団希望を出せばMFの補強は起きるかもね

"So at that moment it's now not like this 'oh we can't take him, so let's see if we can take another one'. Some players are not available at this moment but for us, it's really interesting. That's how it is.

だから現段階では彼が取れないのか、じゃあ別の人を取ろうぜとはならない。我々にとって何人かの選手はとても興味深いけど現段階では獲得が不可能だった。そんな感じ

"Now we can make a decision if we bring someone in, is it the right one? I'm not 100% sure. Short-term? probably yes. Long-term, I am not 100% sure. What does that mean for the next transfer [window]? All these things are going through my mind.

現段階では仮に誰かを連れてきたなら、彼が適任かどうかという事に確信を持てない。短期的な視点ならYesになるし長期的な視点だと私は100%確信を持てない。誰かを連れてくる事が次の移籍市場でどういう意味を持つことになるんだろう?こういう事が私の頭の中をよぎるんだ

"That is how our life is. We cannot just push the button, say 'bring him in' and we worry about all the problems it could create next year or later on. Yes, then we get injuries and all of a sudden it looks like, oh yes, we need a midfielder, definitely.

これが我々の人生だよ。我々は誰かを獲得しようとボタンを押す事(恐らくSNSなどで発言する事)も出来ないし、誰かを連れてくることで翌年やその先に生まれる問題について心配する事なんて出来ない

"We always wanted (恐らくa midfielderの言い忘れ) but it was always about the right one and we cannot change that just because of some things. Yes, more injuries but that can change a bit and then we say that we can do this now and maybe that would help next year as well. It must always be short and long term and this didn't happen yet, that's it."

はい、全ては短期的な視点と長期的な視点の両方から見て最適な選手を取るという事です。1億回以上聞いてます。これはクロップの方針と考えて間違いないです。クロップが来る前のFSGリヴァプールは毎年アホみたいに同じレベルの選手に能力以上の移籍金を払って赤字を積み上げていたのだから

“I’m not careful. I don’t think I thought in one moment, ‘I have to be careful’, no. We get told what’s possible and what’s not possible, that’s it.”

私は用心深くない。私は用心深くなければならないと考えた事もない。我々は何が可能で何が不可能かを伝えられるだけ。そんだけだよ

"Let me say it like this, from time to time, I would like to risk a bit more, but I don't decide that. We have a great team and we will really try to squeeze everything out of this season."”

私はもう少しリスクを取りたいと思うけど、そういう決断はしない

クロップの発言から私が絶望した点は次の3点だ
1つ目。昔から不思議に思っていた戦力外の選手を追い出さないのはクロップが選手に戦力外通告したくないからだった。能力の問題から控えに落ちてるのに稼働率が低くて主力を休ませたいときに控えとして計算できない選手を追い出す真似をせず、フリーでの退団を促していたのはクロップの方針だった
2つ目。クロップは現在のMFに対してパーフェクトと言っている。クロップは今いる戦力がどんなものでもパーフェクトといいそうな人間だが、大半のファンが不満に感じている選手に戦力外通告をして退団させることをしないのがクロップの方針だという事
3つ目。クロップはクラブから与えられた予算に満足できず、もっとリスクを取って戦力を増やしたいと考えている

リヴァプール補強と売却の流れから誰に責任があるかを考察する

補強の流れは次の通りと予想される
①クラブの財務部門が長期的なFFPのルールを守れるように年俸や移籍金の予算を決定する
①クロップがクラブに何処を強化したいか、また誰が欲しいかを言う
②予算とクロップの短期的な補強の要求から編成とスカウトが候補を出す
③提示された選択肢をクロップが判断

また売却の流れもこんな感じのはずだ
⓪クロップが選手を追い出す事はない(本人談の前提)
①クロップや編成が絶対に残すと決めた選手のオファーは全て却下(コウチーニョ、マネなど)
②退団希望者には必死で売却希望金額を満たす売り先を探し、1番良い条件の移籍金を積んだクラブに売る(南野、ネコなど)
③退団希望者を無理やり引き留めて契約が残り1年になった場合には割引価格で選手の希望する移籍先に売る(マネ、シャキリなど)
④他クラブからのオファーは選手にも拒否権がある(オリギなど)
⑤最終的にクロップが決断する(コウチーニョ、アレンなど)
⑥他クラブからのオファーを受けて売却した場合の予算でどんな選手が取れるかという可能性もクロップには伝えられる(フーバー+金銭とジョタトレード等)

契約延長のルールも次の通りだろう
①クロップが契約延長を希望してもクラブは選手への評価額を曲げない(サラー、ワイナルドゥム)
②クロップが契約延長を希望してもクラブは選手への契約解除条項などの特例を認める事はない(チャン)
③クロップが契約延長を望めばクラブは評価額の中で必ずオファーを出す(オリギ、ヘンド、ナット)

これで何故こんなにもフリー移籍が多いのか原因が分かるだろう。クロップが戦力外通告を一切しないからだ。だから全く戦力になっていない選手でも退団したいと言わなければ退団させられることはない。カリウスすら契約の最後まで所属した。またオリギもウルヴズからのオファーを本人都合で断っていた事が報じられており、選手が嫌と言えば無理強いはしない、それがクロップのポリシーの基に認められるのだ。選手の売却よりもフリー移籍を好むのはクロップの方針が生んだ結果だと私は考えている

おまけに編成チームの評価額はクロップからの残留要請を受けたり競合クラブが現れても一切ブレる事はない。サラーの契約延長もPSGからエンバペが退団した時に有効になる途方もないオファーが来ていた事だろう。それを一切無視してクラブはボーナス込みで年俸£26m、基本給は現在の出来高込の年俸£18mぐらいから一切譲らなかった。結果的にエンバペは残留しサラーは契約延長したが、エンバペが退団していた場合にはサラーをフリーで強奪されていた可能性は高いと私は考えている

クロップとフロントの評価軸は間違いなくMFだけズレている。だからクロップが高く評価して契約延長を求める選手にもサラーのように過去最大のオファーをする努力もなくクラブは容赦のない対応をする。週給£130kや契約解除条項を要求したと言われるチャンはクロップの残留要請を蹴りましたが、クラブはチャンの要求をどちらも満たさなかったことが報じられている。またクラブは貢献度が低いワイナルドゥムに昇給を与える気はなく、怒りを堪えるのに必死だったという舐めたオファーを提示された事を本人が語った。※PSGでの失敗からワイナルドゥムにビッグクラブのレギュラー待遇の給与を与える価値がない事はハッキリしているおりクラブの評価がただしかったことが証明された

クラブが今夏ケイタの契約延長を望んだのはチャンもワイナルドゥムも残そうとしたことを考えると社交辞令のオファーの可能性がある。つまり、残ってほしくないが形式上はフリーで移籍されるとファンの心象が悪いからオファーしたという可能性だ。実際ワイナルドゥムには本人の評価額からかけ離れたオファーを送ったのだから残す気がないオファーを送ってケイタがやる気を失った可能性はある

ケイタが起用を増やして欲しいと代理人を通じて発言したのはレギュラー待遇でのオファーではなく出来高の比率が高いリヴァプールにとって利益しかないようなオファーだったから行った可能性も高い。いずれにせよケイタは残留しないはずだ

こうした売れるはずの選手をフリー移籍させて補強資金不足の状況を自ら作り出しているクロップがもっと金を使いたい、他クラブのように長期的なターゲットの所属クラブの両頬を金でぶっ叩いて吐き出させたいというのは筋違いだろう。エドワーズであれば出場時間が非常に少なかったモレノ、スタリッジ、ララナ、クラインなどを売却する事も出来たはずだ。勿論はした金にしかならなかっただろうが、年俸の削減を考えれば2人は取れたはずである。しかし取らずに年1000分も出場しない選手をフリーで退団するまで抱え続けた

エドワーズの功績を挙げれば限りがない。だがその一方で多くのフリー移籍を生んでおり、一部のファンからは疑問の声もあった。その原因は選手を追い出したくないというクロップの哲学にあるというのだからバカらしい事この上ない。選手は売りたくない、だが新しい選手は欲しいというのでは経営は立ちいかない。これでオーナーからの出資が足りないというのは出来る努力をしてから言えというのがオーナーの本音だろう

最悪なのは現在クラブにエドワーズが居ないという事だ。サラーの契約延長がまとまる前にヘンダーソンが契約延長の話がない事に不満を表明すると急遽として8月31日に契約延長がまとまった。この前日である8月30日に契約を延長すると思われたエドワーズとの契約延長の雲行きが怪しいとの報道が出るようになった。どう考えてもこの2つは繋がっている

選手が望まない限り売却しないクロップのせいでエドワーズら編成陣は手足を縛られており、評価していないMFが契約満了する2023年に向けて準備をしていたのにクロップがヘンダーソンの契約延長を認めて補強の予算と枠を勝手に奪えば絶望するに違いない

2015年の段階でクロップを招聘したのはエドワーズ招聘に並ぶFSG体制の大ヒットである。クロップが短期的に必要なポジションを厳選してエドワーズが全ての資源を使ってクロップが求めるポジションを強化する選手を取った。クラブはクロップ前に間違った人をトップに据えていた為に移籍市場で莫大な失敗を重ねてクラブの財政は火の車だった

クロップはこのハンディキャップを乗り越えながらチームに成功をもたらした事は銅像を建てるに値する。クロップの長期的な視点を持って移籍市場に取り組むことが成功をもたらしたのは間違いない。選手を追い出さない事で一致団結した事で劣勢を跳ね返した事が成功の要因なのかもしれない。しかし使っていない選手を売却せずに予算が足りないというのは筋が違う

クロップは中盤(の質)が弱点であるという内外からの声に対して中盤の量は十分に居るという的外れな回答を繰り返した。これは進まぬ補強へのいら立ちかと思っていたが違った。チアゴやケイタやチェンバレンが故障する事など太陽が毎日沈む事くらい当たり前の事なのに抱えている選手を絶賛し、全てが揃った完璧なスカッドだからMFが必要ないと考えていたのはクロップだったのだ

彼は弱点であるMFと向き合わずにこの夏の移籍期間の大半を過ごし、残り1週間となったところで急にMFが足りない事を認めた。誰もが分かっていた事である。しかし、そのニュースから数日が経過した今も状況は欲しい選手は高すぎたり売ってないので進展していないらしい。なんとバカげた話だろうか

報道を見る限りクラブとスカウトは数多の選手をリストアップし最高の人材と次善の人材まで代理人と関係を築きながら検討を重ねてMFの補強を考えていたに違いない。しかし選手と契約が切れるまでは既存の選手によって登録枠と予算を奪われるために動くことが出来なかった。クロップのニューカッスル戦前の会見の言葉を信じるならば中盤の補強については完全にクロップに責任がある。こう断じて問題ないだろう

クロップ独裁政権という恐怖

現在のリヴァプールは予想がつかない。故障者が出なければMF以外の圧倒的な戦力差でPLは2位になるだろう。シティに故障者が続出する追い風が吹けば1位になる可能性は0.数%残されている。しかし故障者が続出してクロップがサッカーを変えなければ6位か7位まで落ちる危険性をはらんでいる

クロップは2019年にブバチという副官と関係が悪化した事から彼を切ってリンダースを副官に任命した。ブバチ政権時代には故障者が続出すればシステムを変えて選手に合わせた戦い方を行った。フィルミーノとサラーとマネとコウチーニョという最高の選手を4人抱えれば彼らが活きるようにサイドにコウチーニョとマネを配置しフィルミーノとサラーの2トップで戦う事もあった。CBが壊滅すればチャンとワイナルドゥムをロヴレンの両脇に抜擢する3バックで戦うなど柔軟な発想で戦力を活かす事が出来ていた

それが今はどうだ。戦い方に選手が合わせる本末転倒なサッカーを続けているだけではないか。選手が変われば特徴も変わるのに99%の試合を4-3-3で戦う。ヘンダーソンは6シーズン前くらいは34.5km/hで走るフィジカルに長けた技術的にはそこそこ上手い良いMFだったが今はアリソンよりも鈍足で殆ど走れていない。それでいてプレースタイルを変えられていないのにIHで起用を続けている。おまけに左サイドのIHで起用して殆どがバックパス方向に戻すか時間がかかって相手に準備する時間を与えてからのクロスしか出来ていない

最近のクロップの起用は選手の特徴を全く発揮できていない縛りプレーのような事態が頻発している。何よりも許せないのは利き足とサイドが同じFBがインサイドを駆け上がって利き足でシュートアングルを作れない状態でシュートを放ち、利き足とサイドを逆に配置しているIHとWGがクロスを上げているバカげた設計である。シティも4-3-3でクロスを上げる配置をしていた時期もあるが、左サイドに左利きのサネ、右サイドに右利きのスターリングを配置して利き足でクロスを上げられるようにしていた

現在リヴァプールが行っているバカげたサッカーは近代エリートサッカー史の中に存在しない、バカげた最悪のサッカーだ。予想もつかない攻撃がしたいというが、ファンも選手も予想がつかず即興でプレーすれば意思疎通のズレが生じて必ずパスミスをする。それなのに攻撃に比重を置いてスペースの管理をせずに攻撃参加に人数を割けば中央がガラガラになりカウンターを受ける。リヴァプールがスタートダッシュに失敗したのはクラブのオーナーが他クラブに比べて資金注入をしていなかったことも事実ではあるが、99%がクロップのサッカーによって引き起こされている

2ボランチにしてヘンダーソンの攻め上がりを封印し、CBとファビーニョと4人でスペースを埋めて後の6人に即興で攻撃をさせていれば少なくともクリスタルパレス戦とマンチェスターユナイテッド戦は大勝しなければならない程の戦力差があった

正しかったのはブバチだ。クロップはブバチなくしてはサッカーの監督として1流ではない。リンダースに責任を求めていたがリンダースはクロップが描こうとしているサッカーを必死に構築しようと努力しているだけなのかもしれない。彼は練習メニューを作る天才と評されており、現在リヴァプールが行っている支離滅裂なサッカーを何とか形にできるよう練習で選手の技術を引き上げている有能な人材かもしれない。実際、選手の能力は上がっているように見える

リヴァプールを復権させた立役者はクロップだけではない。彼を補佐したブバチとエドワーズを追い出して支離滅裂なサッカーをしておきながら優勝するためにもっと戦力を増やしたいとは何様のつもりなのだろう。断言するがこのサッカーでは更なる補強をしてもシティには勝てない

クロップが私が間違ってたMFが必要だと言う発言は既存のMFを売って選手を買うスカウトの提案をクロップが断った事でスカウトチームとクロップの関係が険悪になったのを宥める為に言った可能性はあるだろうか。最近のクロップは団結を異常に強調しておりクラブの中で内紛が起きている可能性すらある

優秀なスカウト陣を失えば伝統のお陰でファンを多数抱えているお陰で収益が多いだけのマヌケなクラブに成り下がる。それでは近くの町にあるPLの恥さらしと同じではないか。クロップによって再建されたクラブはクロップによって破壊されるのか、現在のリヴァプールは瀬戸際にあるのかもしれない。繰り返すがMF以外は世界最高の戦力が揃っており、補強不足のせいではない

明るいキャラクターで選手を見守り、モチベーションを与え、長期的な視点で徐々に移籍市場を通じてチーム強化したクロップは間違いなくクラブ再建の立役者だ。私はクロップを銅像が建てられるべき素晴らしい監督だったと思う。私もこんなことを言いたくないのだが、クロップが言ったこの言葉は今のクロップにこそ相応しい言葉だと言わざるを得ない

'You are cut out now, what you did was great until last year but now we don't like you, so go'.

混乱するリヴァプールに何が必要か

しかしクロップの解任や辞任がリヴァプールに必要なのではない。必要なのは2つだけだ。1つはクロップの謝罪である。素晴らしい戦力を使って酷すぎるサッカーでストレスを与えているファンへの謝罪は必要ない。成功を支え合ったブバチとエドワーズに対する謝罪と復帰要求である

そして彼らの仕事に一切口を出さない事、クロップはチームをまとめ上げて彼らが生み出す精神的な軋轢を解消していく事に専念すればリヴァプールの混乱はたちまち解決されていくだろう。クロップは最高のモチベーターであり、様々な人を惹きつけることが出来る人間だ。誰にでも間違いはある。自分の成功を支えてくれた人が誰だったのか、今一度考えなおす必要がある

そしてもう1つはMFの補強である。それも潰し役のMFと組織守備とパスでの配給が出来るMF、つまりファビーニョとチアゴの控えの獲得だ

5必要なMFは誰だ

必要なMFを定義するには目指すべきサッカー像がなければならない。クラブが望むのはチームの財力をフル活用して利益0損失0の範囲でサッカーはタイトルを取れるチームになる事だろう。クラブはスタジアム拡張などで短期的に資金を注入する事はあっても長期的に支援する気はない

リーグは37勝1分で100%リーグ制覇できるので再現性の高い支配的なサッカー、CLのようなカップ戦は絶対に負けない鉄壁の守備陣が必要になる。今のチームに足りないのは支配的なサッカーを行うためのMFである

黄金期バルセロナはイニエスタ-シャビ-ブスケッツのMFにメッシが絡む黄金の四角形を構築してCLを3回制した
マドリーにはモドリッチ-クロース-カゼミロが君臨し、中央にベンゼマを据えてロナウドとベイルの両翼で点を取るパターンと現在のようにベンゼマとヴィニシウスの2トップにバルベルデが働きバチとして機能するサッカーでCLを5度も制した
シティはフェルナンジーニョ-ダヴィド・シウバ-デブライネからWGがサイドを切り裂いて中央へ折り返してアグエロ等が合わせるサッカーからロドリ-ベルナルド・シウバ-デブライネの3人に代わっても世界最高のリーグとなったPLを牛耳っている

リヴァプールがシティに遅れを取るのは中盤と戦術が弱点だからだ。そしてCLでマドリーに負け続けるのも同様に中盤と戦術が弱点だからだ。先に挙げた3つの成功したクラブは下の3種のMFを揃えていた
守備的な潰し屋(ブスケッツ、カゼミロ、フェルナンジーニョやロドリ)
パサー(シャビ、クロース、デブライネ)
仕掛け役(イニエスタ、モドリッチ、ダビド・シルバやベルナルド・シルバ)の3種類である。一方でリヴァプールが抱えるトップレベルのMFはチアゴとファビーニョだけである。エリオットの急成長は見事でカルヴァーリョの獲得も予想通りに大成功だったが、彼らはシティやマドリーではベンチ入りを争うレベルの子供に過ぎない

現在のリヴァプールが持つ「9人」のMFをタイプ別に分類すれば下記の通りだろう

①低い位置からパスを供給できる潰し屋=ファビーニョ
②守備的なBox to Boxの潰し屋=ヘンダーソン
③低い位置でボールを貰ってドリブルで運ぶ攻撃的なBox to Boxの崩し役=ケイタ
④低い位置からパスでゲームを組立てつつ集団で囲い込んでボールを奪う守備的なIHと3列目のMF=チアゴ
⑤攻撃的なIH=強いて挙げればジョーンズ
⑥10番や偽9番=カルヴァーリョ(⑤も出来なくはないが⑥が適任)
⑦カットインが得意なサイドハーフ=エリオット(⑤⑥も出来なくはないが適任は⑦)
⑧縦に抜いてクロスが得意なサイドハーフ=チェンボ
⑨ポジションという概念を持たないフリーマン=ミルナー

そもそもの戦力もタイプがばらけていて9人が9通りの仕事カオスな状態だ。この戦力を同じフォーメーションで戦わせるのは狂っている。ではリヴァプールが今夏の市場でMFを獲得する候補として挙げられていた選手の特徴を見てみよう

①チュアメニ
②カイセドとライマーは身体能力の高さを活かして潰した勢いで前線までボールを運ぶ守備的なBox to Box型のカンテ的な潰し役。
コネとべナセルはリスクを取って運びに行くのでロストも多いが2人よりもパスまで出せる上位互換。ダグラス・ルイスはコネとベナセルからロストとリターンを減らした系統
③ベリンガム、フレンキー・デヨング、グラフェンベルフ
④ネベスとエンツォ・フェルナンデスとアルトゥール
⑤バレラ
⑥(パケタ)

一部のメディアでは探しているMFはチアゴやケイタのように保持力があって運べるMFだというではないか…この特徴や多くのメディアを信じるなら本命はW杯後または来夏に売却されそうな③のベリンガムだろう

一方でスカウトが挙げたのはBox to Boxの潰し役のライマーとネベスだという報道もある。結局のところメディアの情報はさまざまな関係者が好き勝手言っている事を適当に話を膨らませたものが多いので話が決まるまでは分からない

今夏に移籍が決まるかは謎だが、クラブが金を出さないのか、クロップがいつものようにチームを強くする正しい選手以外は要らないと言っているのかは不明だ。しかし私はMF獲得する予算はあり、必ず夏か冬か今シーズン中にMFを買うと確信している。仮に買わなかった場合でも2023/24シーズンが2018/19シーズン以来のビッグサマーで£100m級の純支出というリヴァプールには珍しい夏になる。(冬に買えばビッグサマーではなく毎年と同じくらいの普通の夏)結果は2023年8月には分かるだろう

獲得競争に勝てば、の話になるがリヴァプールがベリンガムに£100m払う可能性は十分にある。ちなみにスタッツ主義者の私から言わせればスタッツ上ベリンガムは完璧なMFでは決してない。能力は戦術面でのバフやデバフの恩恵を受けるものの、能力があればスタッツに表れる

10代からトップクラブのレギュラーになった中盤の選手は居ないので当然だがベリンガムは年齢がピークの選手と比較しても最後のアシスト能力が非常に高いという以外は図抜けたスタッツがない。彼は私の中で身体能力を向上させてロングパスを少し下手にしたセスクのような選手だという結論になった

周りにパスを出し、リターンを貰いながらピッチを駆け上がり、ロストが多いものの最終的に決定的なアシストをするのが彼の仕事だ。セスクはボールコントロールの雑さが取れず、バルサのような支配的なサッカーをする際にはMF失格の烙印を押されて偽9番をやらされることになった。早熟で成長することなく支配的なサッカーをするチームの主力MFにはなれなかった

またベルナルド・シウバを3列目に置いて支配的なサッカーをしているシティの例もあるにはあるが3列目からMFが飛び出していくサッカーを強いクラブが行うのは稀で低い位置の選手はパサーになる事が多い。昨シーズンまでの実績では同世代で最高の選手だったが、今季からエリオットが急成長を遂げているので今後も彼が世代最高の選手になるかと言われたら私は賛成できない

上記に書いた通り私の理想はネベスを獲得してダブルボランチに変更しフィルミーノやカルヴァーリョを10番起用して崩し役のレギュラーを作りだすものだった

短期的なプラン再び!

しかし最終的に獲得するのはアルトゥールになりそうだ。ブラジルのグレミオ時代は凄い選手になるんじゃないかと思っていたが、その後に伸びた印象が全くない。ダブルボランチでスペースを埋めてボールを拾いパスミスが少なくドリブルもソコソコ、という使い方をすれば頑丈じゃないワイナルドゥムを獲得した感じでありカバクほど悪い選択ではないと思う。ミルナーやチェンボやジョーンズをMFで使ったり左IHにヘンドを使うよりは戦力になるはずだ

ダグラス・ルイスは故障も少ない守備的なBox to Boxでヘンダーソンの上位互換になるとは思う。だが長期的に彼が最適なMFかと言われると自信がない。どちらかと言えばファビーニョの後継者を3年以内に見つける事の方が優先だ。チアゴの控えを同じスぺに任せるのは不安も大きいが、適切じゃない選手を長期契約するよりは良い契約になるだろう

短期的な解決策を取ったのはCB危機に陥った2021年の冬移籍市場ぶりの事になる。前回は冬の最終日にカバクを取ったが、今回は夏に先行して短期的な解決策を獲得するのは進歩したと言える。恐らくリヴァプールがアルトゥールを買い取る可能性は少ないが、アルトゥールのキャリアを立て直しつつ本命MFまでの時間稼ぎが出来れば良い

大失敗だった20/21シーズンにロヴレンの代役を買わなかったのも、狙っていたコナテが適当な金額で市場に出ていなかった事で生まれた悲劇だった。コナテには契約解除条項があり2021年の夏に安く買える事が判明した一方で20/21シーズンに買うには£100m近い大金を要求されていた為、クラブはコナテを20/21シーズンに買うことを諦めた

最終的な結論は守備的なMFが足りないにも関わらずファビーニョを4番手のCBとして計算して乗り切るというバカげた解決策にならない対処法だった。ダイクを事故で失うとファビーニョがCBに入る事になった。結果として中盤から潰し屋を失った事でフィルターが効かなくなりCBにかかる負担が増加。当然のようにファビーニョとヘンダーソンを巻き込んでCB陣は壊滅した。冬に獲得したのは2部レベルのカバクとデイヴィスで大失敗に終わった

最終的には奇跡的に3位に滑り込むことに成功し、結果としてコナテを信じて投資した事は今のところ成功に見える。ただ20/21シーズンも短期的なロヴレンの後継者&マティプの長期的な選択肢としてダビド・カルモとブレーメル、またクラヴァン的な短期的な解決策となる補強候補としてルーベン・セメドの名前も挙がっていた。恐らくSDであるエドワーズは短期的な解決策もクロップに提示したが、彼が断ったのではないかと私は邪推している

この点については報道がないので勝手な憶測にすぎない。だが今回のケースからも分かるようにスカウト陣が複数の選択肢をクロップに提示しなかったとは考えにくい。候補者はその後カルモはポルトに、ブレーメルはユベントスへ出世する事になり、セメドは中東へ飛んだ。スカウティング対象は過去のリヴァプールの投資同様に非常に精度が高くリヴァプールのスカウト陣は非常に優秀なのだ

クロップがMF獲得について私の間違いだったと非を認めた結果がこの短期的な解決策を呑むという結論だったのだろう。クロップはCLがなくても一緒に戦うメンバーしか要らないと言って短期的な応急処置をせず、1シーズンCLを逃そうと構わないような発言をしている。しかしクラブの方は絶対にCLの放映権料も今季から増えるPLの放映権料も可能な限り稼ぎたいと思っているのだ。だから当然のことではあるが、短期的な視点でも補強を考えているクラブの方がチーム強化に必死である

確かに長期的な視点は非常に重要だし、他のクラブがどれだけ市場にお金を投じようと移籍市場にお金を使っているクラブよりも大きな戦力を抱えるリヴァプールには関係がない話である。ドルトムントやアヤックスのように市場から代替できるレベルの若手を法外で売りつけるクラブからババを引き続けているマヌケなクラブで世の中は溢れている

彼らのスカウト力や育成力はそれなりに高いものの、実際は良い若手を法外な金額で売りつけているだけだ。だから彼らが売りつけた選手たちの大半は高い移籍金の割に活躍できない。彼らが売りに出す選手の殆どは年齢の割にリーグとCLでの実績が豊富な良い選手に過ぎない。沢山の良い選手の中から素晴らしい選手に成長するのは非常に稀なケースで多くの場合、例えばケイタのように良い選手で止まり続ける。ベリンガムが素晴らしい選手に成長するかはギャンブルに過ぎない。私は獲得に反対だ

ハーランドやギュンドアンやオーバメヤンのような即戦力でない限り彼らと付き合う必要は全くない。むしろマイナスである。クラブがドルトムントやアヤックスから距離を取っているのは賢明な判断だ。また年齢と人間性の観点からオーバメヤン獲得を見送ったのも良い判断だった

アルトゥールは長期的に最適な選手ではないからローンでの獲得となったわけだが、クロップの方針をクラブ側が押しつぶしたという事はクラブ内でのクロップの評価が下がっているという可能性も考えられる。不要な戦力に戦力外通告をしてでも長期ターゲットのための資金を捻出するため、エドワーズを呼び戻し、戦力を上手に活用できないクロップを監督するためにブバチを呼び戻してクロップの独裁政権だけは潰さないといけない

6まとめと総括

補強が進まない原因はクロップに60%の責任があり、39%はクロップの前任たちが無秩序にお金を使ったことにあり、お金を出さなかったオーナーの責任は小さい

オーナーは金を出して口を出さない最高のオーナーではない。ただ金を出さずクラブの運営を改善した良いオーナーではある
オーナーからの資金援助による収益ブーストが使えなくなる3シーズン後までリヴァプールが上位に居ればリヴァプールの優位性は現在より大きくなる
ただしスカウトが狂えば直ぐに没落する危うい立場である事に変わりはないので現在のスカウトたちを抱え続けるのは大事

クラブは短期的な補強プランも用意している。選ばなかったのはクロップの責任
他クラブが金を使っているかは全く補強すべき理由にならない
他クラブがチームを強化していればそれに勝つための戦力が必要
リヴァプールにはMFを除いて全てのクラブに勝つだけの戦力がある
本物の選手は少ないのでリヴァプールは長期的な視点で最適なMFを今期と来期で最低1人できれば2人買う必要がある。理想はネベス
その長期的に最適なMFを買う予算も今季と来季で相当な規模で存在する

クラブを立て直せたのはクロップの功績
だが立て直したのはクロップ1人の力によるものではない
戦力を活用できていないのもクロップの責任
戦力になってない選手の売却を進めずフリー移籍を連発して資金を稼げなかったのはクロップの方針の問題
クロップが苦手な分野は専門家の力を借りなければならない
感情面のこじれでクラブから去った専門家を呼び戻すべき

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?