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洋楽の情報は全部「音楽雑誌」に教えてもらった

 70年代から80年代前半の中学〜高校、大学時代に洋楽を聴いていて、何を情報源にしていたかというと、それはもう音楽雑誌以外にないわけです。

 でもビートルズしか聞いてなかったときは、あんまり音楽雑誌とか見てなかったと思います。ところが、EL&Pでプログレに目覚めてからは、とにかくリアルタイムな情報が欲しくなって、その結果音楽雑誌にはずいぶんお世話になりました。

 もちろん、ラジオの洋楽番組とか、テレビも70年代に近畿放送が制作したPops in Pictureとか、1981年放送開始のベストヒットUSAとか、雑誌以外の情報もそれなりにあったといえばあったのですが、やっぱり日常的にいろいろな情報は雑誌から吸収したものがほとんどだったのです。

 当時、洋楽を扱う雑誌として君臨していたのが、「ミュージックライフ」でした。こちらは、どちらかというとアメリカンロックよりの情報が多かったと思います。ただ、クイーンを猛プッシュしたことで知られるのもこの雑誌でして、音楽だけでなく、ファッションとかルックスとかそういったロックのカルチャー面からの切り口が多かったように記憶してます。要するに、プログレ少年にはノリの合わない雑誌だったということです(笑)。

 で、わたしが愛読していたのは、もう一つの「音楽専科」という雑誌でした。こちらは、ブリティッシュロックの比率が高く、そのため当時の最先端のロックとされていたプログレッシブ・ロックの情報もけっこう多く扱われていたのです。ですから、当然わたしは「音楽専科」派でした。確か、日本の雑誌で初めてジェネシスを特集したのもこの雑誌だったのではないかと思います。

 当時の音楽雑誌は、だいたい月刊でした。それでも情報更新のタイミングが毎月やってくるというのは、相当に早いものだったのです。これが昭和の最新情報のスピード感なんですよね。今じゃ考えられませんよね。そして、雑誌の特集記事などだけでなく、こういう雑誌には必ず「三行情報」なるページがありました。これが当時最速の音楽情報だったのです。これは、海外とのリアルタイムな通信手段が国際電話とテレックスしか無かった時代に、恐らく雑誌の〆切直前に、現地レポーターと電話で話した内容か、テレックスで送られてきた情報を掲載するというようなページだったのだと思います。

 洋楽の情報を扱う音楽雑誌にはだいたいこのページがありましたので、情報に飢えているロックキッズは、洋楽雑誌のこのページだけでも必ず毎月発売日に書店をまわって立ち読みするわけです(笑)。 洋楽を扱う雑誌も、先の2誌の他にも、ヤング・ギターとか、ミュージック・マガジンとか、他にもいくつもありましたので、当然雑誌によって載ってる情報が異なるわけです。なので、本屋を回って全誌立ち読みする必要があったのでした。 たしか、ジェネシスからピーター・ガブリエルが脱退したことも、その後釜のボーカリストが、(何と!)フィル・コリンズだという情報も、わたしはこの雑誌の三行情報で読んだ覚えがあるんです。

 さらに、雑誌の誌上には、もう一つ情報源がありました。それは記事ではなく、レコードショップの広告なのです。わたしが愛読していた「音楽専科」には、ヨーロッパ系の輸入レコードを扱うショップが複数社、必ず広告を出しているわけです。すると、その広告でプッシュされているアルバムとか、アーチストが目にとまるわけで、輸入レコードショップがイチオシするバンドは、本紙記事よりも早くいろんなバンドの存在や、過去にリリースされた名盤を伝えてくれるひとつの情報源だったのですね。

 そんな音楽専科でよく見ていた輸入盤レコード店の広告で、すごくよく目にして気になっていたバンドがありました。それが、ジェントル・ジャイアントとジェネシスだったのです。

ジェントル・ジャイアントのこの何だかよく分からないジャケットは、雑誌の広告ページでは結構インパクトありました。
モノクロページに小さくこのジャケットが掲載されていた当時、レコード屋でこれを実際に見るまでは、足元に転がっているのが人の頭だというのに気づいてなかったような気がします。

 そうして、これを聞いてみたくなるのですが、これがなかなか聞く機会がないし、なけなしの小遣いで、聴いたこともないバンドのアルバムを買うというギャンブルは当時まだなかなか出来ないわけです。そうこうしているうちに、わたしは同級生からジェネシスのアルバム(上のとは違うやつ)を貸してもらうことができて、コレにハマっていくのでした。ジェントル・ジャイアントは、ずいぶん後になってようやく1枚自分で購入しました。なかなか面白いとは思ったのですが、ジェネシスとはまた違って、何というか、コテコテのプログレ(笑)でして、こっちには正直そこまでハマることはありませんでした。プログレと一言で言っても、まあいろいろありますからね(^^;)

 このように、自分の洋楽についての基礎情報のほとんどすべてを吸収した音楽雑誌ですが、自宅でMTVが見られるようになってからは、ほとんど見なくなってしまいました。(1990年頃にMTV見たさにCS放送を契約したんです)その後、ミュージックライフは1998年に廃刊。音楽専科を出していた音楽専科社は2016年まで粘った(確か洋楽ではなくJ-Popに軸足を置いた雑誌になっていた)みたいですが、そこで倒産と、やっぱり時代はネットに変わってしまったわけです。でも、そうですよね。ネットを検索すれば、いくらでも洋楽の情報にアクセスできる、邦楽ならミュージシャン本人のSNSとかYouTubeにアクセスできる今となっては、なかなか雑誌の存在意義は見いだせなくなってしまったということでしょう。

 最近思うのですが、「雑誌」という情報パッケージは、まさに20世紀を代表するメディアだったのだと思うのですが、恐らく21世紀中に絶滅するものなのではないかなと。なんか寂しいけど、それだけ長い間生きてきたのだなあというちょっとした感慨もあったりするわけです。


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