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インパクト投資家になることで、社会課題を解決するコミュニティに参加できる。

株式会社LivEQuality大家さんです。住まいをかりづらい困窮世帯のシングルマザーなどを対象に、安心安全で快適な物件を市場より低い価格で貸す「ソーシャル大家さん」事業に取り組む会社です。

わたしたちは資金調達の手法として、インパクトボンドを活用しています。インパクトボンドは金利のリターンを低めに抑え、ソーシャルリターンという社会的インパクトを最大化するように設計した投資の仕組みです。

日本ではまだ事例も多くないこの枠組みに、インパクト投資家として参画してくれたみなさんに理由や期待を伺っています。

今回は株式会社ベネッセホールディングスの元代表取締役社長  福島保さんにお話を聞きました。

株式会社ベネッセホールディングスの元代表取締役社長  福島保さん。株式会社LivEQuality大家さんのインパクト投資家であり、NPO法人LivEQuality HUBの理事でもある。

ーーーベネッセホールディングスの社長を退任されてから、福島さんはどんな取り組みをされているんでしょうか。

2014年にベネッセを退職してから色々なことを少しずつやっています。

福武書店からはじまってベネッセホールディングスまで、一つの会社が大きくなっていく・・・私はその中にずっと身をおいてきた人生でした。

なので退職後はまったく違う、これまで触れたことがない世界に関わってみたいと思っていたんです。それで若手起業家に出資をしたり、社会課題の解決に取り組むソーシャルセクターと関わりをもつようになりました。

今まで気づいていなかった、社会課題の解決に取り組む会社の存在を知ったり、若い人たちの感性にふれたり。会社の延長線上にいたら気付かなかったこと、できなかった経験がたくさんありました。一つの団体や取組みにどっぷりと真ん中で浸かるというより、少しずつ関わらせてもらっています。

当時ソーシャルセクターで活躍されていた岡本さん(株式会社LivEQuality大家さん・NPO法人LivEQuality HUB代表、千年建設CEO)とも、そんな風に活動する中で知り合いました。


ーーー福島さんは、シングルマザーによい物件を安く貸し出す事業に取り組む株式会社LivEQuality大家さんのインパクト投資家です。同時にシングルマザーの自立に伴走するNPO法人LivEQuality HUBの理事も引き受けてくださっていますよね。

岡本さんから、コロナの時に「色々考えていることがあるので、会ってもらえないか」と連絡をもらいました。

久しぶりにお会いすると「LivEQuality HUBというNPO法人をつくって、シングルマザーの自立支援を行う事業を計画しているので理事に入ってほしい」と。

そのときにはまだ活動はしていなかったはずですが、かなり具体的な計画ができあがっていました。熱意だけではないなと思ったことをよく覚えています。

岡本さんは当時、地元に戻って家業の千年建設会社を継いで、初めての建設会社の社長業に苦労していたと思うんです。慣れない業界で経営を担うことは相当大変だったはずです。

そんな中、じっくりいい人間関係をつくっていって。千年建設の社員や役員に「コロナ禍で大変な思いをしているシングルマザーを支援する活動をはじめたい」と自分の気持ちを話したときには、応援してもらえたと聞きました。

右端が代表の岡本。39歳の時に未経験で建設業界の社長に就任。慣れない社長業に奮闘しながら、コロナ禍にシングルマザーの支援をはじめようと動き出した。


社長が全然違う事業をはじめようという時は、内部に反対されることも多い。でもみんなの納得感を大事に対話して、応援も共感もしてもらっている。これはしっかりやっていけそうだなと思いました。

新しい事業といっても、シングルマザーの住居や暮らしを支援するためには、建設会社がもっている不動産の知見やリフォームのノウハウを活かすことが重要です。

建設会社側の納得感はとても大事な部分になるので、岡本さんはそこを疎かにしていなかった。それがよく分かったので、理事も引き受けようと思いました。

NPO法人LivEQuality HUBの理事になってからは、スタッフがシングルマザーの方々に寄り添う力に驚きました。物件の手続きや行政関連の手続き、仕事探しなど、やり取り一つずつに大変なサポートが必要です。

そのすべてにとても親身になって対応していて、困っている人を本気で支える、その熱意と行動力は本当にすごいと感じました。


ーーーインパクトボンドについてはいかがでしょうか?

まずシングルマザーの自立を住まいから支援することは、とても重要なテーマだと思いました。

家を借りられないというのは、個人ではどうしようもない事情を含む、社会的な課題です。支援が必要にも関わらず、自己責任だと言われてしまう難しさがある。

しかも住居支援をするには不動産を取得しなければいけないので、まとまった資金が必要です。支援する側の難易度も高い。

クラウドファウンディングや寄付で取り組みを続けるのは難しいので、何らか持続的なスキームをつくったほうが支援が継続すると思いました。これをインパクトボンドという仕組みで解決しようということだったんですね。

岡本さんから説明を受けたときは「世の中に新しいスキームをつくりたい」という話も聞きました。LivEQuality大家さんが継続的な活動をするだけでなく、いずれ社会のインフラのように広がる仕組みをつくりたいという思いもある。これは参加することに意味があると感じました。

ずっとベネッセにいたので、こどもを取り巻く課題は個人的にも関心が高いテーマです。すべての子どもたちが、自分の未来をつくっていける社会であるべきです。でもこれも住むところが安定しないと難しい。

児童養護施設の職員採用を支援しているNPOとも関わりがありますが、住居が安定して親子が安心して過ごせる状態がないと、子どもの発達にも影響があると感じています。

私はシングルマザーの支援とはつまり子どもの未来を応援することだと捉えています。


ーーー福島さんはこれまで寄付という形でもさまざまな支援を行ってきていると思います。寄付とインパクト投資はどんな点が違うと感じますか?

寄付という方法で支援することは重要ですが、単発の関わりになってしまうというか。たとえまとまったお金を寄付したとしても一過性のものという感覚があります。

インパクトボンドだと債権でもあるので自分も関心を持ち続けられるし、投資を受けた団体からは投資家に対する定期的な報告もある。寄付よりもさらに参加メンバーという感覚を強くもてるので、いい関係で応援し続けられると思います。

インパクトボンドに参画する投資家が社会にたくさんいることが大事なんじゃないでしょうか。我々はファーストペンギンのようなもので、社会的なことに取り組む投資家が増えていけば、それだけ世の中にいいことがある。銀行のような金融機関も社会貢献を目的に参加していることが増えてきています。

私自身は、インパクトボンドに参画しているというより、コミュニティに参加している感覚のほうが強いですね。債権者や投資家であるというよりも、社会課題を解決するコミュニティに参加して応援している。そんな印象があります。

LivEQuality大家さんは他の投資家のみなさんもすばらしい人たちだというのも大きいです。先日は初めての投資家向けの説明会がありましたが、みなさんそれぞれ専門性も経験も豊富なので、コメントを聞いているだけでも勉強になりました。

コミュニティだと思っているので、周りの人にもよく話すんですよ。「こういう投資をしている」でも「こんな寄付をした」でもなく「こういうおもしろい仕組みで社会課題を解決しようとしている会社があるんだよ」という具合です。共有がしやすいのも特徴かもしれませんね。

NPO法人LivEQualityHUB、名古屋で開かれた理事会


ーーーLivEQuality大家さんやインパクトボンドに期待していることはありますか?

いま、世界中で格差が広がり、寛容さが失われているように思っています。
行き過ぎた自己責任論もある。

インパクトボンドの取り組みを核にして、シングルマザーに限らず、住まいや暮らしに困っている人たちを支える持続的な仕組みをつくっていってほしいと思います。

LiveQuality大家さんが支援する地域や対象を広げてもいいし、そのノウハウをつかって他の地域でやろうという別の人が出てきてもいいですね。この支援の仕組みは広がってほしいと思っています。

LiveQuality大家さんやLivEQuality HUBでは、いまスケールアウトの仕組みを作るためにノウハウをまとめたり、様々なトライを重ねているところだと思います。

代表が建設会社も経営していたから、たまたまいいスタッフがいたからーーー。そんな“自分たちだからできた”で終わらせずに、インフラのように社会の仕組みにしていってほしいと期待しています。


株式会社LivEQuality大家さんの取り組みに関心をもっていただけた方は、ぜひこちらのページもご覧ください。


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