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窒素過多で、「葉は茂れども花咲かず」はなぜ?

「ダリア栽培のしおり」に肥料の目安として、
・化成肥料 窒素が少なく、リン、カリの多いもの
と記載しました。
農業初心者の私、これも最初は理由がわかりませんでした。
疑問に思いつつ答えに辿り着けなかったのですが、たまたまイベントで登壇された方のお話を聞いてふに落ちます。
「窒素」とは植物の生育に最も大きく影響する要素ですが、なぜ少ない方がいいのかということについて、今回は書きたいと思います。

1、代表的な窒素・リン酸・カリウムの役割

化成肥料を購入する際に「8-8-8」とか書かれていたりしますが、
左から 窒素-リン酸-カリウム の数字(単位%)が書かれています。
窒素が少なく、リン酸、カリウムが多い化成肥料は例えば「8-10-10」のように、左側の数字が中央や右よりも小さい数字の肥料を選べばOK!
各役割は以下。
○窒素:葉や根などの器官づくりに必要。
 ・不足すると 生育が停滞する。不足の目印として下葉が黄色くなる(下葉の栄養を上部に回すため)。
 ・過剰になると 葉が濃い緑色に、茎葉が過繁茂(かはんも)となり、花や実がつきにくくなる。さらに、病害虫に対する抵抗性も著しく低下。葉物野菜では品質と日持ちが低下する。
○リン酸:植物の生長、分けつ、根の伸長、開花、結実などの促進に必要。
 ・不足すると すぐに枯死(こし)する。また、果実の成熟が遅れ、収量、品質が低下する。
 ・過剰になると 土壌病害を助長する。
○カリウム:根の肥料と言われ、植物体内での浸透圧の調整に使われ、根の浸透圧を高めることで水を吸えるようになる。また、葉で作られたデンプンを糖化するのに使われる(デンプンを植物の各部に運ぶためには、糖に変える必要がある)。
 ・不足すると デンプンの糖化がうまくいかず、タンパク合成や細胞の骨格づくりが進まない。
 ・過剰になると カルシウム(石灰)やマグネシウム(苦度)の吸収を阻害する。

2、窒素過多になるとどうなる?

植物が葉を使い、光エネルギーと水と空気中の二酸化炭素から炭水化物を作り出す光合成。
ここで作り出される炭水化物がポイント。
炭水化物は
・窒素と組み合わさり、細胞を構成するタンパク質に
・タンパク質を作り出すための燃料に
・細胞の骨格(細胞膜)に
・根から吸収した窒素やリン酸を伸長葉に送るための燃料に

と、あらゆるところで使われるとても大事なものです。
窒素が適量であれば問題は起こりません。

しかし、窒素が多くなるとどうなるか。
元々窒素は土の中で水に溶けやすく吸収されやすい肥料分で、
リン酸土の中で鉄やアルミニウム、石灰と結びつきやすい、吸収されにくい肥料分です。
また、窒素は根の伸びが悪くても吸収されやすいですが、リン酸は根の先端の若い部分で吸収されるため、根がたえず新しい根を出し続けている状態でないとじゅうぶんに吸収できません。
①窒素が多いと窒素ばかりを吸ってしまい、葉に過剰な未消化の窒素が溜まる
②過剰に溜まった未消化の窒素をなんとかタンパク質に変えようとする
③多くの炭水化物が消費される
④根を伸ばすための炭水化物が少なくなり、リン酸の吸収が減少していく
⑤葉を形成するための骨格となる炭水化物が不足するので、軟弱で働きの悪い葉ができる
⑥働きの悪い葉では窒素をタンパク質に変える力が弱く、葉に過剰な未消化の窒素が溜まる
以降、②からの繰り返しという負のスパイラルにはまります。

また炭水化物が多く消費される弊害として、
本来なら根や花や果実に回るはずだった炭水化物が回らずリン酸の吸収量が減るので、花が咲かない。
そして光合成して炭水化物を増やすため、葉はよりたくさんの光を求めて自らを大きくし茂らせる。
これが、窒素過多で「葉が茂れども花咲かず」のプロセスです。

ちなみに、病気に対しての抵抗力を発揮するにも炭水化物のエネルギーが必要ですが、そんなエネルギーが残されているはずもなく。(病害虫に対しての抵抗性の低下)
しかも病菌は未消化の窒素が大好きな餌になるそうです。
参考にした資料「野菜つくりと施肥」

何事も適量が大事ですが、植物と会話できるわけではないので、案外難しいですよね。
さらに鶏糞や牛糞といった堆肥にも窒素は含まれています。
ですのでまずは参考資料通りに使用してみて、反応を見てから調整をしていくのがオススメです。
余談ですが、
未消化の窒素に虫が群がるため、無肥料・無農薬の自然農や自然栽培と呼ばれる栽培方法で栽培された野菜は虫食いが少ないと言われています。
「虫食いがあるのは、虫が食べるほど美味しい証拠」では必ずしも無い。
未完熟な堆肥を用いた有機栽培では、未消化の窒素を野菜に溜める場合もあるからです。
私がダリアを無施肥で栽培している理由の一つに、「虫の被害が少ないであろう」というのがありますが、けっこうやられるんですよね(苦笑)
周囲を完全に除草しているわけでもないのに。
周囲の畑よりも安全だから集まるのかしらね。

まとめ
・過剰な窒素の供給は、植物にとって毒!
・解毒するために葉を茂らせ、体をつくるエネルギーの全てを注ぎ込むから、貧弱で病害虫に弱くなる。
・栽培経験がなければ、まずは参考資料通りにやってみる。

素敵なダリアを咲かせてくださいね。

冒頭に書いた「ダリア栽培のしおり」はこちら


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