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さようなら、マホガニーの秋

二日目。

私は常日頃から彼女に英力を供給するのが仕事だった。この仕事も気がつけば長い期間になっていた。最初の頃はお互いほとんど口も聞かず、口を開いたかと思えばそれは十中八九仕事関連の話を意味していた。

楽しい?

初めて会話をしたのは彼女の方から。それも今と同じ秋が深まって渋みがではじめた頃だった。私は彼女と話をするまで自分というものを確認することもなかったし、そうする必要もなかったのだと思う。彼女と言葉を交わすうちに自分の存在と彼女の存在を強く意識し、生活に色が出てきたように思う。
彼女はおしゃべりな方ではなかったがことあるごとに私に話しかけ、私もそれに応えた。私の周りには同じような存在があったが話をすることがかなったのは彼女ただ1人であった。


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