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ティアラメンツを勧めたい(歴史編)part2

*こちらの記事は前回アップした「ティアラメンツを勧めたい(歴史編)の続きとなります。

https://note.com/lively_pansy144/n/n47588feec73c
(前回の記事)

まだ読んでいない方はそちらも読んで頂けると幸いでございます。
また、本記事は筆者個人の考えや主観が顕著に表れている記事となっております。
当時の環境との差異や相違が多々あるかと思われますので、一個人の意見や主張としてお楽しみください。


長きに渡って続く遊戯王史の中でも、2022年度は良い意味でも悪い意味でも一際印象的な時代となった遊戯王OCG環境。
しかしながら、そんな環境をより一層混沌とした環境へと導くスタートラインを作ったきっかけとなるアーキタイプが、この時期に突如として参入を決める事態が起きます。

所謂、ミラーは先行+運ゲー(*)という先入観を与えた第一人者であるデッキ
イシズティアラメンツ」がその産声を上げることとなります。

(*プレイで何とかなる場合も割合的には存在しますが、それでも互いのデッキのコンセプト上、少なからずそう言ったゲーム外の要素に意識を割かれてしまう場合が何度もありました)

イシズティアラメンツとは

前回の記事と同様、万に一つの可能性としてこのアーキタイプをご存知ない方への解説として、簡単にですがその一部を説明します。

2022年5月21日発売のブースターパック
デュエリストパックー輝石のデュエリスト編ーにて登場した地属性,天使族,レベル4という共通ステータスを有する4種類のモンスター「剣神官ムドラ」「宿神像ケルドウ」「古衛兵アギド」「古尖兵ケルベク」による展開力と墓地肥やしギミック(*)を生かし、従来のティアラメンツ構築に出張させることで、これまでの常識を覆すほどの圧倒的なシナジーを形成し、これまでのほぼ全ての○○ティアラメンツというアーキタイプが過去のものへと感じてしまうほどに互いが互いに噛み合ったアーキタイプへと成り上がったのがこのイシズティアラメンツ(*)というデッキです。

(*)公式での正式なカテゴリの呼び方は「現世と冥界の逆転」という呼び方ですが、便宜上やユーザー間での認知度と普及率の観点から本記事では「イシズ」「イシズギミック」「イシズティアラメンツ」と呼称させていただきます)

(サンプルレシピ)

こちらは2022年5月末〜7月上旬にて流行り始めたイシズティアラメンツの構築のサンプルです。(ニューロンでも公開中。サイドは候補として名が上がったカード群です)

現在(2023年6月当時)のOCG環境やマスターデュエルで遊んでいる方々からすれば、ただのアンリミットレギュレーション構築かと思われても仕方のない構築だと思います。
(現在はそのほとんどが制限カード指定を受けています)

そして、このアーキタイプを知らない方々からするとここまで種類の少ないカードたちで本当に強い強いと散々言われているあのイシズティアラメンツをデッキとして回せるのかと少し疑問に思うかもしれません。
同じ種類のメインモンスターをこれでもかと盛り込んだだけに見えますが、その実態は互いに高次元の領域で凄まじいシナジーがあるデッキとなっています。

ティアラメンツに関しては概ねテキスト通りの使い方で戦うので詳しい解説はまた追々させていただきます。
よって本記事ではその相方である「イシズギミック」が一体どのようにして使われたのか、どのようにして互いにシナジーし合うのか等についての解説をさせていただきます。

モンスター解説

イシズティアラメンツにおけるイシズギミックとして採用されるモンスターは4種類存在します。

その中で、さらに二つの用途や役割に分かれます。

・手札から自身以外の地属性,天使族モンスターを捨てて自身を特殊召喚。その後固有効果。
・フィールド、墓地から自身を除外して互いの墓地のカードをデッキに戻す効果。

この二つの効果を持つのが
宿神像ケルドウ
剣神官ムドラ
となります。

・手札、デッキからカードが相手の墓地に送られた場合に発動。自身を特殊召喚(固有効果も含む)
・このカードが手札、デッキから墓地に送られた場合に発動。お互いのデッキを上から5枚墓地へ送る。その後固有効果。

この二つの効果を持つのが
古衛兵アギド
古尖兵ケルベク
となります。


文字だけだとすぐに理解するのは難しいと思います。
かく言う自分も、初見の時は正直どう使えばいいかわからないといった具合でした。
これから個々のモンスターについて解説していきますので、どうか最後までお付き合いいただけると幸いでございます。

宿神像ケルドウ


星4/地属性/天使族/攻1200/守1600
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:手札から他の天使族・地属性モンスター1体を捨てて発動できる。
このカードを手札から特殊召喚する。
その後、デッキから「現世と冥界の逆転」またはそのカード名が記されたカード1枚を手札に加える。
②:自分・相手ターンに、フィールド・墓地のこのカードを除外し、
自分・相手の墓地のカードを合計5枚まで対象として発動できる。
そのカードをデッキに戻す。
自分のフィールド及び墓地に「現世と冥界の逆転」が存在しない場合、この効果の対象は3枚までとなる。
(テキストより引用)

先ほどの見出しで解説した通り、自身を特殊召喚する効果、フィールド、墓地から除外して墓地のカードをデッキに戻す効果を持つモンスターのうちの1体です。

①の効果により同名である自身はもちろん、別のイシズギミックのモンスターをデッキからサーチすることが可能な点が非常に優秀で、このカードの①の効果で特殊召喚することにより、召喚権は割いてしまいますが、サーチしたモンスターを即座に召喚してランク4のエクシーズモンスターやリンク値2を稼ぐことが可能になるなど、このデッキにおける足りない手数や展開力を補ってくれる非常に優秀なモンスターです。


②の効果は自身をフィールドか墓地から除外して、お互いの墓地のカードをデッキに戻す効果です。
場から除外する場合、盤面を開けてしまうことになるので少々コストが重くなる場合がありますが、それでも墓地を多用する相手や墓地を使うことを第一としている相手からすればこのモンスターが棒立ちで存在していること自体がある種の制圧札として機能するほどです。

しかし、自分の墓地に「現世と冥界の逆転」(以下、現冥)が存在していない場合、自身の効果でデッキに戻せるカードが3枚になってしまうというデメリットがあります。
②の効果をフルパワーで使う際は現冥を同時に採用しないといけない点、そもそもその現冥を墓地にあらかじめ落とす手段を用意しないといけない点など、現代遊戯王においてそれらを要求される事は多少のテンポアドバンテージロスを強いられることとなってしまいます。

ただ、フルパワーなだけあって決まった時の効果は現冥無しの場合以上に広範囲に墓地メタを及ぼすことができますので、自身のコンセプトも相まって狙ってみる価値は大いにあるかと思います。

剣神官ムドラ


星4/地属性/天使族/攻1500/守1800
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:手札から他の天使族・地属性モンスター1体を捨てて発動できる。
このカードを手札から特殊召喚する。
その後、デッキから「墓守の罠」1枚を選んで自分の魔法&罠ゾーンに表側表示で置く事ができる。
②:自分・相手ターンに、フィールド・墓地のこのカードを除外し、
自分・相手の墓地のカードを合計5枚まで対象として発動できる。
そのカードをデッキに戻す。
自分のフィールド及び墓地に「現世と冥界の逆転」が存在しない場合、この効果の対象は3枚までとなる。
(テキストより引用)

先ほどのケルドウに続く、自身を特殊召喚する効果、フィールド、墓地から除外して墓地のカードをデッキに戻す効果を持つモンスターのうちの1体です。

①の特殊召喚(コストも含む)はケルドウと同じですが、その後の固有効果がケルドウとは大きく異なっております。

「墓守の罠」という永続罠を置く、という効果なのですがこちらの効果も単純ながら強力で、相手の無限泡影や灰流うららといった、所謂汎用妨害札を避けつつ自身を着地させることができ、その上メインギミックに触れられるシステムカードに容易にアクセスできる点がケルドウと明確に差別化できる利点です。
攻守も1500/1800と特殊召喚できる下級の中では優秀な数値を持っていますので、詰めのタイミングでの攻め札やスローゲームになった際の壁役としても非常に優秀なモンスターです。


②の効果や用途については先ほど紹介したケルドウと概ね同じなので割愛致します。

余談にはなりますが、この効果を2種類のモンスターが持っていると言うことが実戦、ないしはミラーマッチにおいて重要な役割を持ちます。
この部分に関しては今回の記事では取り上げないので、次回以降のイシズティアラについての詳しい解説の際に書かせていただきます。


墓守の罠

このカード名の(2)(3)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:自分の墓地に「現世と冥界の逆転」が存在する限り、
相手は墓地のカードの効果を発動できず、墓地のモンスターを特殊召喚できない。
②:お互いのメインフェイズに、手札を1枚捨てて発動できる。
デッキから「墓守」モンスターまたは天使族・地属性モンスター1体を手札に加える。
③:このカードが表側表示で存在する場合、相手ドローフェイズのドローの前に、カード名を1つ宣言して発動する。
通常のドローをしたカードを確認し、宣言したカードの場合、墓地へ送る。
(テキストより引用)


こちらがムドラの①の効果で置くことができる墓守の罠の効果になります。

①の効果は永続効果で、墓地に現冥がある限り相手に墓地メタを敷くことができます。
インフェルノイドや暗黒界の龍神グラファといったチェーンブロックを組まないルールによる特殊召喚はもちろん、自身の効果による蘇生効果を持つモンスターを諸共機能不全にさせる効果は、墓地のモンスターをリソースとするデッキからすれば各種手札誘発や各種単発妨害を直撃させられるよりもかなり苦しい妨害になってしまいます。
この形容の仕方が正しいかどうかはわかりませんが「無限妨害」と言う言葉がこれ以上ないくらいしっくりくる表現だと思います。

また、モンスターだけにとどまらず、墓地で発動できる効果であれば魔法と罠も例外なく機能不全にさせることが可能な点も非常に優秀かつ強力です。
昨今の魔法、罠カードには墓地効果を持つカードが多く、墓地から除外して効果を発動したり、墓地に送られたことで効果を発動したりするカードが例年と比較して増加している傾向にあります。
そう言ったカードは墓地で発動する関係上、カードの発動そのものを無効にする系統の妨害をすり抜けて効果を押し通したりできるのが強みの1つだったりするのですが、墓守の罠の①の効果が適用されている間はそれすらも発動することができなくなるなど、こちらの効果も先述の墓地のモンスター効果の封殺と並んでかなり強固な「無限妨害」を敷くことができます。

現代、ないしは競技シーンに精通している方なら説明不要かもしれませんが、遊戯王OCGにおける墓地というのは「第二の手札」「第二のデッキ」とも言われるほど試合において重要な役割を果たします。
そんな重要な要素をたった1枚のカード、しかも3つある効果のうちのたった1つの効果で実質使用不能にしてしまうのははっきり言って理不尽以外の何ものでもないでしょう。
(ある意味では現代遊戯王への風刺的な効果とも取れますが…それでもやはり置かれて困る効果であることに変わりはありません)


②の効果は互いのメインフェイズ限定で、手札コスト1枚で墓守モンスターか天使族,地属性モンスターのサーチを行う効果です。
前半は今回の記事とは関係がないので割愛致します。
後半の天使族,地属性モンスターのサーチがこのデッキだと非常に優秀で、ケルドウの①の効果以上にサーチ範囲が広いのが特徴です。
基本的には今回の記事で紹介する4種のイシズギミックのモンスターをサーチすることになるのですが、このサーチ効果の起動条件が手札コスト1枚というのが見た目以上になかなかに強力となっております。

手札コストが強い、と聞くと「1枚捨ててるのだから単純に損をしているだけでは?」と思ってしまうプレイヤーも少なくないかと思います。
何より、遊戯王というアドバンテージが大事なゲームにおいて「コストが強い」という単語自体が矛盾していると言わざるを得ませんよね。
ですがこの墓守の罠の②の効果に関しては、その常識が微量ながら覆ってしまいます。

それが所謂「コストが強い」現象です。
サンダーブレイクで捨てる黄泉ガエル
クイックシンクロンで捨てるボルト・ヘッジホッグ
竜の渓谷で捨てるドラグニティ・ファランクス
等々……
往年のプレイヤーならピンとくるワードではないでしょうか。


墓守の罠に倣った場合、ここで捨てる手札コストをケルドウとムドラにしてしまえば即座に墓地にこの2枚の弾を用意できるので、場に用意することなく墓地効果を使う準備が整います。
後述のアギドかケルベクを手札コストとして使用した場合、即座にそれぞれの②の効果を発動できるので、少ない消費で大量のボードアドバンテージと墓地アドバンテージを稼ぐことができます。

また、細かなテクニックとして
墓守の罠が表側で存在している状態で、②の効果を使う際の手札コストを現世と冥界の逆転にすることにより、永続的に適用される①の効果がその場で即座に適用され始めるので、相手の不意を突いて①の墓地メタを展開する、といったこともできてしまいます。
これにより墓地効果を渋っていた対戦相手のプランをその場で崩すことも可能となる等、相手からしてみれば手札コストすらも警戒のうちに入れておかないといけなくなる分「その場に存在するだけでヘイトを集めることができる」といったある種の番外戦術じみたことも役割として持たせられることが可能となります。

ただ、永続罠で尚且つメインフェイズ限定であるが故の弱点も同時に存在するので、安全に置けたからといって必ずしも上記の役割を毎回果たしてくれるかは試合によって異なります。
それでもやはり置ければ強いものであることに変わりはないため、使う際は是非とも上手く使いこなしてみてください。


③の効果は、相手のドローフェイズのドロー前にカード名を1つ宣言し、ドローした相手のカードがこちらが宣言したカードである場合にそのドローカードを墓地へ送る効果です。
やや蛇足気味ですが、強制発動な点も無視はできません。

言うなれば、当たれば実質ドローフェイズスキップのような効果です。
おまけの効果、と形容するにはいささかピンポイントかつ使い心地に欠ける効果とは思いますが、この遊戯王OCGというゲームに長く関わっている方からすればこの効果がいかに強力かつ深いものかがわかるのではないでしょうか。

そもそもの話、対戦型カードゲームというのは、よほど特殊なゲームや環境でもない限り、対戦相手の手札やデッキを確認したりすることはかなり難しいものとなっています。
というのも、単にそれらを相手に開示してしまえばこの上ない情報アドバンテージを相手に与えてしまうことになり、こちらが狙っているプレイング、やろうとしている行動はもちろん、それらがほぼ全て対戦相手に筒抜けになってしまうからです。
そういった目に見えない要素があるからこそ、対戦者同士の読み合いやプレイヤー同士のメタの張り合いが繰り広げられていき、結果としてコミュニケーションツールの地位を保っているのだと個人的には考えております。

何故このような話になったのかというと、この墓守の罠の③の効果はそういった目に見えない要素……遊戯王に倣って表現するなら「非公開領域」に干渉しうる効果を秘めているからです。

ドローしたカードを確認し、と書いてありますね。
至極当然の結果になりますが、相手のみならず自分自身もそのドローしたカードを確認できてしまうのです。
これはどういう事かというと、相手のドローで手札に加わったカードを予め把握した上でこちらの攻め方を工夫できたり変えられたりできるという事になります。
これは遊戯王のみならず他のカードゲーム環境でも喉から手が出るほど欲しくなるような情報のアドバンテージになります。

当然、相手からしてみればこちらのターンのスタートとなる札が予め相手側に割れているわけですから、引いたカードによってはマストカウンターを直撃させられたり、よりによってそのドローで引いてしまったカードがその時その状況の大本命であるが故に確実に妨害を当てられてしまったりと、とにかくやられている側が不利を背負ってしまう結果となるケースが多くなってしまいます。

しかも、上記のこの状況に関しては宣言したカードを外した場合に起こっている出来事であるため、ただでさえ強力な情報アドバンテージ獲得力のある効果であるにもかかわらず、自分(墓守の罠を置いているプレイヤー)にとって都合の悪い札を使わせない為にこちらが負け筋となるカードを宣言して万が一の捲り札さえも叩き落としてしまう可能性があるといったある種のピーピングハンデスのような動きも狙えてしまうなど、③の効果だけでもプレイバリューの塊が過ぎる事態となっています。

もはやここまでくると先述した番外戦術と言われても差し支えない気もしなくはないですが……それでも、この遊戯王というゲームにおいて③の効果と類似効果(*)を持ったカードが今現在でも軒並み規制されている事実を踏まえると、やはりというかモンスター効果で簡単におけてしまう永続罠ごときがここまで強力かつ理不尽な効果を有しているのははっきり言ってオーバースペックと言わざるを得ません。
(*エラッタ前の死デッキ、強引な番兵やいたずら好きといった往年のハンデス系カードやその他ウイルスカード、ゼンマイハンター、ガンブラー等の手札=手数の数式を否定してくるカード全般です)


少し話が逸れましたが、③の効果だけでもここまで説明できてしまう分、見た目以上に恐ろしいモノを秘めた効果である事が理解できたかと思います。

ただ、先ほども書いた通り
毎回必ずフルスペックで置けるわけではない。
永続罠であるが故の弱点。
③の効果が強制発動。

等々…紹介した内容に関して意外と脆い部分もあります。
悲観しているわけではないのですが、決して弱いカードではありませんので、上記の内容はあくまで用途やテクニックの1つとして頭のどこかに置いておくのがちょうど良い具合かもしれません。
(ここまで紹介しておいて匙を投げるなと言われそうですが…)


古衛兵アギド


星4/地属性/天使族/攻1500/守1300
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:手札・デッキからカードが相手の墓地へ送られた場合に発動できる。
このカードを手札から特殊召喚する。
その後、自分の墓地から「古衛兵アギド」以外の天使族・地属性・レベル4モンスター1体を選んで特殊召喚できる。
②:このカードが手札・デッキから墓地へ送られた場合に発動できる。
お互いのデッキの上からカードを5枚墓地へ送る。
その後、自分の墓地に「現世と冥界の逆転」が存在する場合、
自分または相手のデッキの上からカードを5枚墓地へ送る事ができる。
(テキストより引用)

上記の見出しで解説したもう2種類のモンスターのうちの一体です。
先ほどのムドラとケルドウとは打って変わって効果が変わっているのが分かるかと思います。
カードが違うので当然と言えば当然ですが、ここから目まぐるしく内容が変わったり増えたりしていきますので最後までお付き合い頂けると幸いでございます。


①の効果は、手札かデッキからカードが相手の墓地に送られた場合に自身を特殊召喚し、その後墓地から別の地属性,天使族モンスターを特殊召喚するといった、かなりこちらの展開に貢献してくれる攻め寄りのデザインとなっています。

説明した後でこのような事を書くのは自分でもどうかと思いますが……この効果を初見で読んだ時に「どういうタイミングで使うの?」と思った方が居られるかもしれません。

かくいう自分もその一人で、展開効果に関しては評価は高いと思っていて、状況によって召喚権を使わずにランク4とリンク2を作れるのはなかなか強力なのですが……効果の起動条件がやや限定的では?と考えておりました。

ですが、この当時の現代遊戯王という環境を想定した場合、このアギドの①の起動条件というのは思いのほか、否、思った以上に緩い条件なのではという結論に至りました。

「手札、デッキから相手のカードが墓地に送られた場合」
この一文が示す事は

・ワン・フォー・ワン、トレードイン、ライトニングボルテックス等の、発動条件により手札コストを要求してくるカード全般
・おろかな埋葬やおろかな副葬、烙印融合といった「デッキのカードを墓地へ落とせる札」全般
・増殖するG、灰流うらら等の汎用手札誘発カード、及び手札で発動し、効果処理後には墓地に送られているカード全般。

主にこの三つの要素がデュエル中に起こる事により、アギドの①の効果を起動できる条件が達成されている事を意味します。

先程申したように「当時の現代遊戯王を想定」するのであれば、その発動タイミングや条件も容易にクリアする事ができます(*)
(*実際、ミラーマッチを筆頭にそれらが起こりうる機会は予想以上に多かったです。)

リンク値を稼いだり、バグースカ、深淵に潜む者やヴェルズビュートといったシステムモンスターや捲り札となるランク4を召喚権を使わずに出せるのはやはり破格であると考えます。
実際のところ、素引きやケルドウの①の効果からのサーチ、後述の墓守の罠からのサーチをしていなければ展開効果は使えないという点を抜きにしても、そのスペックの高さは十分に分かるかと思います。


何よりこの効果の恐ろしいところが、対戦相手の一挙手一投足が自分への思わぬアドバンテージを与えてしまいかねないという部分にあると個人的には思っています。

これも後述のケルベクについても同様に言える事なのですが、これはカードを消費した側がより一方的に損をするタイミングがいつも以上に多いという事を意味します。
カードを消費してるのだからそりゃ使った側が減るのは当たり前では?と思った方もおられるかもしれません。
実際はその通りで、も何もそのような事は誰もがすぐに理解できる基本的な事なのですが…このアギドの①の効果が絡むとその常識が簡単に覆ってしまいます。


*具体的な例を挙げるとすれば*
死者への手向けを使ったのに、その破壊したモンスターが墓地から復活した、しかも挙げ句の果てにもう一体別のレベル4地属性天使族も復活してきた、という状況になるわけです。

対して死者への手向けを使ったプレイヤーは死者への手向けという魔法カード1枚とその発動条件としての手札コスト1枚という合計2枚のカードを消費しています。
対して死者への手向けを使われた側のプレイヤーは、破壊されたモンスターをアドバンテージの頭数に入れないのであれば手札のアギド1枚でこのシチュエーションを乗り切り、あろうことが盤面にモンスターというリソースを残すことになり、あまつさえ死者への手向けを使われた時よりもモンスターの数が増えているという意味不明な状況が生まれてしまう事になってしまいます。
(あくまでこれは一例です)


と、ものすごく短絡的な発想のもとこの効果が絡んだ場合の一例を説明してみましたが、こうして文字に起こして頭で理解してみると、その恐ろしさが段々と解ってくるのではないでしょうか。

実際にこの効果も、あらゆる対面ではもちろんのこと、特に同タイプのミラーマッチにおいては非常に重要な役割を持ち、この効果を上手く使えるかどうかで勝負に直結する要因が横から挟まり込んで来てしまうほどです。(こちらも次回以降の詳しい解説にて書いていく予定です)

ここまで①の効果とその他諸々を長々と説明しましたが、②の効果も先ほどのムドラとケルドウとは打って変わって全く別のものとなっております。
②の効果は、自身が手札かデッキから墓地へ送られた場合に、お互いのデッキを上から5枚墓地へ送り、その後墓地に現冥があれば、追加で自分が相手のどちらかのデッキを5枚墓地へ送る効果です。

条件付きではあるものの、往年のおろかな○○系魔法カードや針虫の巣窟も顔負けするレベルの墓地肥やし能力です。
この条件は手札コストにされた場合にも発動可能で、効果で手札かデッキから墓地に送られたり、(自分と相手に)手札から捨てられた場合でもタイミングを逃さず発動できる等、とにかく対応範囲が広いのが魅力的です。

墓地肥やしの用途については概ね皆さんが考える通りだと思うのでここでは詳しくは解説をしませんが……この②の効果を見た時に気づいた人も居られるのではないでしょうか。

この②の効果、上述のムドラとケルドウの①の効果とは抜群の相性を誇ります。

思い出していただきたいのはその①の効果です。

「手札から天使族,地属性モンスターを捨てて、自身を特殊召喚」

つまり、上述のムドラとケルドウのうちどちらかを一緒に引いていれば、あっという間に②の効果を使って墓地を5枚肥やせるということになります。
…当然、両方を引いているのならもはや説明は不要かなと。


あっという間に墓地アドバンテージとボードアドバンテージの両方を稼ぐことができるため、アギドの両方の効果がいかに強力かをご理解いただけたのではないでしょうか。
拙い文章で申し訳ないですが…正直なところ、このアギドだけでnoteを一つ書けてしまうくらいには色々な要素が詰まったカードであるため、使用者のバリューによって千変万化していくとても良いカードだと個人的には思っております。
もしこの環境でゲートボール等を遊ぶ機会がありましたら、是非ともそのパワーを存分に有効活用してみてください。

古尖兵ケルベク


星4/地属性/天使族/攻1500/守1800
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:手札・デッキからカードが相手の墓地へ送られた場合、
相手フィールドの特殊召喚されたモンスター1体を対象として発動できる。
このカードを手札から特殊召喚する。
その後、対象のモンスターを持ち主の手札に戻す。
②:このカードが手札・デッキから墓地へ送られた場合に発動できる。
お互いのデッキの上からカードを5枚墓地へ送る。
その後、自分の墓地に「現世と冥界の逆転」が存在する場合、
自分の墓地から罠カード1枚を選んで自分フィールドにセットできる。
(テキストより引用)



いよいよイシズギミック最後のモンスター、古尖兵ケルベクの説明になります。
もはやここまでの情報だけでお腹いっぱいになりそうな勢いですが、その例に漏れずこの古尖兵ケルベクにも様々な要素が詰まっております。
どうか最後までお付き合いくださいませ。


①の効果は、起動条件は先ほどのアギドの①と同じものの、その後の効果が全く異なっています。

そしてこれもアギドの時と同じように「ん?どうやって使うの?」となるテキストだと思います。
(かくいう自分も最初はその一人でした)←2回目

アギドと同じ条件で、尚且つ相手の特殊召喚されているモンスターを対象に撃てる効果……タイミングがかなり限られているのでは?
と思った方もおられるかもしれません。
ですが実際のところ、これもアギドと同じように思いの外撃てるタイミングというのは巡ってきます。

以下、具体的なケルベクの撃てるシーンを記述いたします。


(現代遊戯王版)
・影依融合でデッキ融合をした後に出てきたエルシャドール融合モンスター
・フュージョンデステニーから出てきたD-HERO融合モンスター
・烙印融合スタートで、神炎竜ルベリオン及び最終的に出てくる氷剣竜ミラジェイド
・ヴェーラを除く春化精の①の共通効果
・古衛兵アギド、古尖兵ケルベクの②の効果の処理後に、相手の場に存在している特殊召喚されたモンスター
・手札誘発(灰流うらら、増殖するG等)の効果の処理後に、相手の場に存在している特殊召喚されたモンスター
・自身を手札から見せて発動するタイプのモンスターカードを、神の通告やその他モンスターの効果を無効にし破壊するカードで処理を行った処理後に、相手の場に存在している特殊召喚されたモンスター
・手札コストを必要とするカードの発動の処理後に、相手の場に存在している特殊召喚されたモンスター

(昔のカードでの一例)
・サモンプリーストからリクルートしたレベル4モンスター
・クイックシンクロンの自身の効果での特殊召喚後
・暗黒界の門の②の効果処理後に存在している特殊召喚された相手の場のモンスター


と、分かりやすいタイミングを一例として挙げてみましたが、これだけでも分かる通り実戦ではかなりのタイミングでケルベクを撃てるタイミングが存在します。

特に現代遊戯王版の方での上記3つのデッキ融合ギミックはこの当時からよく見られており、競技シーンではもちろん、カジュアルでも遭遇する機会は多かったほどだったので、ケルベクの①の効果は単純にそれらに対するメタとしての側面を持たせることが可能であり、普段目にする各種手札誘発よりも質の高い妨害として機能させることができます。
うっかり手札コストやデッキ融合で素材を切ってしまったばかりにケルベクを踏んでしまい、そのまま手数が足りなくて押し切られた…なんてこともよくある話です。
こちらも先述のアギド同様、プレイヤーの一挙手一投足に割り込んでくる厄介な効果であるため、使う際、使われる際は十分に注意してプレイすることが大切です。


②の効果は、前半の5枚肥やしに関してはアギドと同じなのでここでは割愛します。

後半の固有効果は、墓地に現冥が存在する場合に任意の罠カードをセットする効果です。
こちらもデッキによっては重い条件を強いられるものの、墓地にある好きな罠カードを再セットできるのは似たような効果を持つカードと比較しても自身の効果とのシナジーと相待ってかなり強力です。
最大出力で、メインに入れている同名の罠3枚をもう3回使いまわせるので計6枚分の仕事をこなしてくれます。
流石にそこまで来ると運にはなってしまいますが、それでもここまでやれてしまう可能性を秘めているカードである以上、カード単体の効果、ないしは2つあるうちの1つの効果でここまでできてしまうのはこちらもやはり破格のスペックと言わざるを得ません。

自分が知る限りではこの罠カードサルベージ効果を有効的に使えた、あるいは使っていたというシーンや意見には遭遇しませんでしたが、それでもやはり強力な効果であることに変わりはないので、メタゲームの変遷によってはこの効果を有効活用、ないしは悪用していた世界線というものがもしかしたら存在したのかもしれません…


まとめ

以上が、イシズティアラメンツにおけるイシズギミックのモンスターたちの簡単な紹介になります。
簡単な紹介と言っておきながらここまで長くなるとは個人的にも思っていませんでしたが…それだけ使い甲斐があって遊び甲斐のあるカテゴリーなので是非みなさまにも一度そのパワーの一端に触れていただきたいなと思っております。


次回は、新弾であるDABL(ダークウィングブラスト)が発売し、それによってこのイシズティアラメンツというデッキががどのように変化し、どのようなメタゲームが繰り広げられていったのか、どのような環境だったのか……ティアラメンツというテーマに、どのような風が吹いたのかを簡単にですが記事にしていこうと思っております。
(今回ほど内容が長くないように努力するつもりです)

今回は紹介していませんが、そこに+してティアラメンツの要素が絡んでくるので相手からしてみてもそうですが自分ですらもキャパオーバーになること必須なところがこのアーキタイプの(よくないところでもあり)面白いところでもありますので、ゲートボール等でやれる機会がありましたらぜひこちらの記事を参考にしていただけると幸いでございます。

次回…ついに奴が襲来する。


ここまで読んでいただきありがとうございました。


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@miyanaga_san

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