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20年来の愛の核へ

『ふわふわシナモロール展FINAL』に行ってきた。
8月半ば、お盆真っただ中の東京駅、丸の内南口を抜けて丸ビルに入る。
ラフな格好の人々の中、白い子犬を身に着けた人がちらほらいることに、ひとりほっこり。かくいう私も珍しく鞄にキーホルダーなんかつけて、エスカレーターに乗る。何をするにも重くなってしまった足取りは、心なしか軽かった。

『ふわふわシナモロール展』は、2017年から全国を回ってきたイベントで、イラストレーターの奥村心雪先生のラフ画を始め、シナモンやフレンズたちの歴史、歴代グッズに、ポスター、ぬいぐるみなどが集結する360度シナモロールの世界観で満ちた贅沢な展覧会だった。
4年連続キャラクター大賞1位の肩書は凄まじい。ただ、歩んできた道は決して平坦ではない。心無い言葉を投げられた過去。対象とする客層の成長。『かわいい』だけを武器に歩んできたわけではないことを、しっかり文字にして伝えてくれる強さが眩く、サンリオや先生方の誇りのようにも感じて、心から頼もしいと思った。

私がシナモンを好きになって、かれこれ20年が経つ。
当時は確か幼稚園を卒園する頃で、家族に小学校で使う筆記用具やら何やらを買ってもらっているような時期だった。
幼い私が一体どこに惹かれたのか、白いほわほわの見た目か、明るい空色の瞳か、ふんわりとした雰囲気か、はっきりと覚えてはいない。ただビビッときて、「シナモンの筆箱が欲しい」と強請ったことは覚えている。
あの頃はデビューして日が浅いこともあり、グッズ化もされたばかりで、シナモンが描かれた筆箱はなかった。それでも、家族がギフトゲートやらデパートのサンリオグッズ売り場やらを梯子してくれたこと。ほとんど同じ柄のシナモングッズを幾つか買い与えてくれたこと。シナモンの声で起こしてくれる、可愛い雲の形の目覚まし時計を買ってもらったこと。それを今も家に置いていること。ずっと、覚えている。すぐに取り出すことも、できる。
遠い記憶は大切な家族との思い出で、今日の私の「好き!」に繋がる大切な核だ。様々な愛の核にシナモンがいることが、とても幸せだと展示を見ながら改めて感じていた。

更に幸運なことに、シナモンと1分間会話ができる『超スペシャルグリーティング』にも当選することができ、実際お話をしてきた。
参加費は3000円だったため、「シナモンからのメッセージ付き(事前収録)」なのかな~何言ってくれるんだろ~とぼんやり並んでいたら、グリーティングが始まる前に「シナモンに呼んでもらいたい名前を書いてください」と紙を渡され、サービスすげ~と呑気に「本名+ちゃん」を書く。
時間になると、綿菓子みたいなお声が壁の向こうからぼんやり聞こえてくるので「ワ~~~」と孤独に沸いていた。友達がいないのである。

すぐに自分の番になった。
シナモンは、スタードームのかっこかわいいアイドル衣装で迎えてくれた。

「わ~!〇〇ちゃん!ありがとう~♡」トタトタッ(足音)

ア!!自分!!この声知ってる!!シナモンだ!!
幼児より幼い感想が浮かんだ。今思うと、名前を呼んでもらうというだけで30000円の価値があるというのに、出会い頭に推しにお礼を言われるなんて恐れ多すぎる。そもそも3000円でリアルガチに推しと会話できるとは思わないだろ!一気に動揺と喜びと恐れ多さで顔が皺くちゃになった。

背中に汗をかきながら、シナモンのちっちゃい低いおててに導かれるまま、壇上へと上がる。お姉さんがマイクを向けてくれたので、「アッ、シナモッ コンニチハ..!」とオタク特有の挨拶をした。

「こんにちは~♪」
「アノッCDハツバイオメデトッフヘヘ!」
「ありがとう~聞いてくれてるの?」
「ウン!!キキマシタ!!」
「わ~♡ありがとう~♡」

今、文字に書き起こすために当日の動画を見ているのだが、とてもきつい。
シナモンはお声も動きも何もかもが可愛いのに、挙動不審な自分が映り込んでいるのが耐えがたい。見る天国と地獄みたいだ。推しを前にしたオタクの声って、何で妙に高くて籠ってて気持ち悪いんだろうな(自戒)。
そもそもシナモンが3枚目のCDを発売したのは2か月前なので、今更にも程がある。まあその間シナモンに会う機会もなかったし、咄嗟に出てきた言葉がCD発売のお祝いなのは、我ながらオタクとしての立ち位置を弁えられているなと思った。

その後は一応、20年間ずっと好きなこと。いつも元気をありがとう。と、一番の感謝は何とか伝えられたものの、この時点で既に声が泣いていた。
推しと会話ができていることへの実感がようやく沸いてきたこともあるし、何よりシナモンは謙虚で優しいので、こちらが発することに逐一、「とっても嬉しいよ」「ありがとうねぇ」「僕いっつも元気だよ♪」と返してくれるのが夢のまた夢で、ぐっときてしまったところがある。

ヘヘヘエヘヘと不気味に笑いながら、最後はスタードームの格好良い衣装が似合っていることを早口で伝えれば、「ほんとお!?うれしい~」と飛び跳ねてくれたのがたまらなかった。自分の発言に喜んで跳ねてくれる推し、健康に良すぎる。スタードームの衣装、大人っぽい深い青色と、白いフリル、豪華な金色の刺繍に白い靴と、アイドルオタク的に大変有難いのだ。なにわのダイスマ衣装と系統が近いので、いつか一緒に歌ってほしい(強欲の壺)

「今日はお話してくれてありがとう」
「うん!僕も逢えてすっごく嬉しい!ありがとう、また会いに来てね~」

シナモンは、最後もお礼で締めくくってくれた。
お礼を言いたいのはこちらなのに、どこまでも愛に溢れていて、東京駅にたどり着いたときにはぼろぼろ泣いていた。
夢かな。夢だったのかな。
でもスマホにはちゃんと、1分間、シナモンとの大事な思い出が増えている。一生の宝物だ。シナモンもきっと、生涯の推しだ。

今これを書いているときも、シナモンを見て目を輝かせ、口々に可愛いと呟き、写真を撮る老若男女の姿が思い出される。愛に満ちた寄せ書きも、会場に流れる『みんなピース!』も。

私自身、これからも自分のペースで、シナモンを応援していきたいと思う。
そして願わくば、またいつか、お話しする機会が頂けたら、その時は「これまでも、これからも好きだよ」くらい言えたら良いな。


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