ひづけ
子供は時に思いもよらない事を教えてくれる。
私の息子も例外ではない。
時に、お誕生日などの、その人が持つ数字には何かしらの縁があると思っている。
例えば、私の親、兄弟、妻の親、兄弟の誕生日に中頃の日付を持つ物は居なくて、必ず1〜10日か、20〜31日に収まっていたりする。
そして、その日付には大体何かしらの縁がある数字が多い。
私の息子は29日に生まれた。
しかし、私達夫婦は『29日』と言う日付けに縁があるなどピンとこない。
「……肉の日…?」
などと言いながら思慮深く探したが、全く心当たりがない。
私達夫婦は何か特別な縁も無く、ただその日に産まれて来ただけなのである。
話は変わるが、昨今の記念日ブームの創造物の一つに、『ハーフバースデー』なる物が存在するらしい。
生誕から半年を祝うと言う、ケーキ屋か撮影スタジオなどが得をする、いわゆる『産業記念日』である。
私達夫婦もまんまとその謀略にハマり、某スタジオの不思議の国へ足を運んだ訳だ。
様々な衣装の数々から、息子に似合いそうな物を選ぼうとはするが、やはり親心、全く選びきれない……
ので、ココは息子の力を借りようと思う。
陳列されてある衣装に息子を寄せて、息子が手に取る物を選ばせる。
親バカと思われるだろうが、この方法で選んだ服はめちゃくちゃ似合う。
到底我々のセンスでは選ばない様な服を選ぶのだが、見事に着こなすのだ。
今回は3着選び終え、お着替えが終わると撮影に入る。
うん。
可愛い。
ひたすら可愛い。
ただただ可愛い。
撮影が始まれば、意外と集中力を発揮してくれて、カメラマンさんとのコミニュケーションもばっちりな様子だった。
カメラマンさんも、『本番に強い!』と褒めてくれた。
写真撮影が終わると、お次は写真の選別である。この時に初めて、不思議の国の恐ろしさに触れる事となる。
商品にした写真以外は削除されるシステムだ。
つまり、写真を残したければ商品にしなければならない…
写真を選ぶたびに課金してしまうが、可愛いから写真を残したい親心の負の連鎖…
なんと言う恐ろしい商売なのであろうか…
案の定、重課金をしてしまい、夫婦共に疲弊してしまうのであった。
会計の時に料金に驚愕する事にも慣れできた気がする今日この頃なのだが、この時、当然の事ながら名前や写真の商品、そしてハーフバースデーの日付けなど、事細かに確認される。
確認中、ふと私はある事に気付いた。
私「あ……れ?」
妻「???」
私「ハーフバースデーの日付け…」
妻「うん?」
私「結婚記念日よな…?」
妻「………‼︎‼︎⁉︎」
私達夫婦は結婚して7年になる。
その間、努力はしていたが結果として結びつかず、やっと授かった小さな命を、お互い必死になり、半年間育んで来た。
その7年と言う時間の中で、お互いの大切な記念日など、何処かへ置き去りにしてしまっていた。
息子に、また一つ教えられた。
私は誕生日などの自分自身の持っている数字には、必ず何かしらの縁が有ると信じている。
私達夫婦が生まれた日をもう2度と忘れない様にと、息子がその日に産まれて来てくれたのだから。
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