キス

<キス>
ぼくはふたつのことを考えていた
男の狡さと
ただキスがしたかっただけ、ということ
愛はなかった、恋でもなかった
間違いでもいたずらでもなかった
ただキスしたいと思ったのだった
それ以上言えば嘘になり
それ以下では心が余る
けれどそれが私の狡さかもしれなかった
そうやって困った顔のあなたに近づいていったことが

あなたは泣いたろうか
それが気がかりで夜を見つめていた
見つめながらふたつのことを考えた
そしてまた朝が来た
ふたつは
ふたつながらに本当なのだ

花に鼻を近づける
同じようにぼくはあなたにキスをした
ただそれだけのことだったんです

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