映画『アーティスト』を観て
映画会の課題である『アーティスト』という映画を観た。この映画の特徴は何と言っても,「白黒」と「サイレント」であるということである。白黒サイレント映画はこれまで観たことはないので,初めは抵抗感があったが,最後まで飽きることなく観ることができた。感想を以下にまとめる。
①想像力が掻き立てられる。
私は映画よりも原作派で,小説を好んで読む。小説を読んでいると登場人物の顔や姿,声や情景などが自然と想像される。それがとても面白い。今回の映画の場合は,顔や表情は風景はわかるものの,どんな会話をしているのか何を考えているのかを終始想像しながら観ていた。そのためには,表情や仕草などにこれまで以上に目を向けてじっくり観る必要があった。相手の気持ちを汲み取るために頭を働かせる練習になった。また,声が届かない分,細かな仕草や表情の変化で心情を表現する俳優たちの演技もすばらしかった。無駄な間がなくてテンポが良く,かつ想像を膨らませる絶妙な余白も残されていると感じた。子ども達へとの関わり方,授業の進め方にも大いに参考になった。
②本当の「誇り」
主人公のジョージはサイレント映画に固執し,結果落ちこぼれて人生のどん底へと落ちていくことになった。ペピーの力もあり,最終的には「ミュージカル映画」という新しいジャンルを確立し,新たな人生を歩んでいくことになった。作中のジョージのセリフに「自分は芸術家(アーティスト)である。」というセリフがあった。確かにプロのアーティストとして自分の仕事に「誇り」がなくてはならない。しかし,それが足かせとなり,新しいことへ挑戦する足かせとなってしまっては良い「誇り」とは言えない。「何のために映画を撮るのか」そこに立ち返って,「観る人を楽しませたい」「観ている人の心を感動させたい」という大前提を忘れてはいけない。そして,それが本当の「誇り」ではないだろうか。最後には人物たちの声が聞こえた。ジョージの頑固な部分がなくなって,本当の自分を取り戻した表れだったのだと感じた。
気になったこと①
作中でジョージが夢でグラスや町の音が聞こえるシーンがあった。なぜ,音が聞こえたのだろう。サイレントでやっていくという自分とそれの限界を感じている自分との葛藤だったのか。
気になったこと②
ペピーがジョージの家財を買い取ったことにショックを受けて自殺をしようとしていたが,その行動の理由がわからなかった。自分だったら,それほどまでに自分の力になってくれようとしたのだと嬉しくなると思うが。
大変良い映画だった!
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