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梅雨の蟻

煙草は煙を吐いた後に吸う空気が美味しく感じるから好きだ。いつか知り合った同じ大学の退学した後輩と一度だけ呑んだ時、メンソールは口が臭くなると言っていた事を思い出す。彼はお笑い芸人を目指していた。目の先がチカチカする。目眩だろうか。今日は曇りなのに太陽の光はこんなにも強いのか。いつか、誰だったか、紫外線は曇りの日も60%は地面に届くと言っていた。昨日は大雨だった。木製のこのベンチ以外地面はぬかるんでいて水溜りも乾いていない。雨がぽつりぽつりと降ってくる。また降るのだろうか。読んでいた本が雨に濡れないように閉じ、吸いかけの煙草を地面に押し付けた。刹那、煙草の先と濡れた砂利の間に蟻を見た。水分の蒸発音。吸い殻を地面から離してみる。白い灰の中には何も見えなかった。ぬかるんだ砂利の中に押し込んでしまったのだろうか。白い灰に水分が侵食し灰色に滲んでいく。僕は殺しと埋葬を同時にやってしまったのだろうか。神の気まぐれだ!神の気まぐれが僕を操って蟻を殺したのだ!こう思うと少しおかしくなった。僕は僕の気まぐれで死にたい。しかし僕の気まぐれもまた

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