前立腺がんだって。なんだよ、それ!#010

あぁ、寝不足。

眠ってるはずなんだけど、牢名主が暴れている記憶がある。気胸がうなっている記憶もある。
眠りが浅かったのか、はたまた夢を見ていたのか?
とにかく、トイレには2回立った。ニョロンは無かったが、大流血に変わりはなかった。

朝だ、希望の朝だ・・

目覚めてかれこれ90分、オムツの交換を求めた以外はなにもしていない。
午前8時、やっと朝食が配膳される。ゆうべは有り難かったが、今朝の内容はしみじみとしたものだった。
だがそれでも「標準食A」、胃腸やその他主要臓器に問題のない者用、平たく言えば「最も普通の食事」。
こんなに薄いシャケの切り身は初めて見た。

と、朝食の最中に「渡辺」先生来訪。
「くまさん、どうですか?眠れましたか?
いやハイ、まあまあは。
「えー、出血はどうですか?」
それはもう。真っ赤っ赤です。どれくらい続きますか?
「まぁ、個人差ありますけど・・その真っ赤な状態は、うーん、今日明日ですね。それからどんどん茶色くなって・・薄くなっていきますね。」
「2週間、という見当です・・止まるまでに、だいたい。」

なんと、出血は2週間程度は続くらしい、普通に暮らして。
激しい運動をしたり、ハードな職業に就いている場合はもっと長引くし、できたら安静にしておいたほうが良い、とのこと。そりゃそうだろう。

「生検の結果が出るのに、えー、10日ほどかかります。ですから、次は・・15日ですね、正確な状態・・というか今後の方針をお伝え、うん、できます。その頃には出血も、まず止まっていると。」
「朝9時に来てください。」

「渡辺」先生は言うべきことを言って疾風のように去っていった。
そして朝ご飯は完全に冷めてしまった。

退院の手続きは午後とのこと。通院患者でごった返していることと、朝の病棟業務がほぼ戦争であることが主な要因。しかもウチの牢名主のようなツワモノがそこここで局地戦を繰り広げたりするイレギュラーさえ、ある。

えーっと、軽く4時間かぁ。

どうしようもないくらい、どうしようもない。院内のファミマでも覗いて雑誌でも買おうと、1階へ降りる。

ファミマは小規模ながらちゃんとファミマだった。菓子類はすくないね、でも飴の類はそこそこ。サンドイッチや弁当は結構揃っている、個室なんかだとご家族が詰めたりとかあるしね。
さすが病院内ってのはマスクに箱売りが揃ってるとこ、なるほど。

週間ポストがあった。普段読んでないからどんなものか分からない。ちゃんとテープで閉じられてるからチラ見もできない。もう買うしかない。とにかく、しょうがない。


・・ツマラナイ。

1時間も潰れない、なんてくだらないんだ。出版不況だとかデジタルの脅威だとか言ってるけど、単純につまらないだけなんじゃないの?グラビアと醜聞・・IQが低すぎる。
この病室で繰り広げられているライブの実況のほうが数倍面白い、主に牢名主によるものだが。


入院費用の計算書が届いた。下着に替えようかと思ったが、とりあえずこのまま帰ろう。途中で薬局へよってオムツとか買おう!と大変前向きに決意した。
同時に、予約票・・と処方箋も届いた・・




えー、またあの気休めの薬出すの?
癒着?








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