前立腺がんだって。なんだよ、それ!#007

あぁ、来たね、運命の一日が。

夕べ荷造りしていて、はたと気付いた。「一泊」なんだ。
なにを思ってあれやこれやの大荷物を背負っていこうとしてるんだ?ワールドカップの弾丸ツアーじゃないんだぜ。

やめやめ!やり直し、やり直し。

というわけでナイキのショルダーには、
①フェイスタオル✕2
②バスタオル✕1
③下着(上下各1)、靴下2足
④パジャマ
⑤洗面一式、歯ブラシなど。
少数精鋭、である。この際だから携帯も置いていくかと思ったが、万一の連絡には 必須であり、なにより夜が寂しいので同行することにした。
あれ、俺、万一って・・誰に?
考えまい考えまい。今は眼の前の一つ一つと向き合わなければ。

絶対に負けられない戦いが、ある。


さて、8時30分である。
きのうの失態がちょっと堪えて、逸る気持ちをどうにかなだめ、時間ちょうどに「入院受付」に到着。
どうだどうだ、やればできるだろう!

極々事務的に本館4階南病棟「426」号室を案内される。426かぁ、ボートだったらそこそこの配当になる偶数艇トリオだなぁ。4が捲って焦った1がすっ飛んで・・・

4人部屋、である。

なにが折角かわからないがとにかくせっかくだから、一週間ほど前に個室を問い合わせてみた。一万円ぐらいならいいか、って感じである。
「当日、空室の個室はエグゼクティブルームから、でございます。」
いくら?
「一泊税込み、4万4千円からとなっております。」
無理無理無理無理。申し訳ない、貧乏人が不遜な野望を抱いてしまった。夢敗れるのも速いね、瞬殺だ。

で、もちろん満床。
今宵を共にするバディは、
①なんかテニスしてたら「痛、痛い。息ができない!」ってことで担ぎ込まれた気胸発症50代、なんかずっと焦ってる。仕事の穴埋めかな、小声でずっと電話。
②なんだかナースコールを押しまくり、ああでもないこうでもないと、やたら主張・注文をがなり立てる糖尿病70代。声でかい身体でかい態度でかい、牢名主。
③?。いる、確かにいる。気配はあるが実態は不可視。たまに衣摺れの音が・・不穏と言えば不穏。
といった豪華メンバーである。やれやれ

「本日、事前のお手伝い 等担当します、川原です。よろしくお願いします!」
なんか快活で眩しい青年看護士が多いね、この病院。
「さっそくですが本日のスケジュールです。手術室に向かうのは、11時15分を予定していますが、前の手術次第で若干前後があります。よろしくお願いします。」
はいはい
「このあと、事前準備として下剤の服用と浣腸の施術を」
おぉ、浣腸!うひゃぁ!
「行いまして、あ、その前に施術着に着替えていただきます。」
そうか、その手に持っている若草色の布ッキレ、それが施術着なんだね。
やにわに「患者感」が高まってきたぞ、俺は今、病んでいる

パンツ一枚の上に施術着という、あられもない姿でベッドに腰掛けている。寝転ばないのはしばしば襲ってくる便意に素早く対応するため。だってもれちゃうもん、気は抜けない。

もう「シャー!」って音しかしないよ。固形物なんか見当たらないよ。


「くまさん、そろそろ手術室に向かいます。下着を脱いで、ベッドに横になって・・」
?、歩いて行けるよ?
「いえ、途中ではだけたり・・」
あ、あぁ、そだね。粗末なモノがね、見苦しいよね。



よし!








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