親が老いていくということ
母の日。
車で1時間ほどの実家を訪ね、好きなケーキと花を渡す。
80近い父と母はまだ元気で、2人で喧嘩しながらもなんとか毎日過ごしてくれている。
「やっぱり大きい会社がいいで」。
母と2人きりになった時、言われた言葉。
私の娘(母にとっては孫)の彼氏の話をした時のこと。
私の娘はそろそろお年頃な年齢。彼氏とはうまくいってるらしく、このままいけば結婚するのかなという雰囲気。
私は一度会ったが、爽やかな青年で優しそう。素敵な人柄に見えたし、娘よ、でかした!と思える人だった。
嬉しくて、私が母に「この間〇〇の彼氏に会ってきたよ」と言ったのが始まりだった。
どんな人か聞かれ、職業を答えたときに私の母が漏らした感想が「大きい会社がいい」だったのだ。ちなみに彼氏は大企業の人ではない。
母としては誰もが知る一流企業の人が良かったってことか。
その瞬間、私は目の前に過去の私を見た。
30年以上、いやもっと前か。受験戦争に勝ち抜き、エリート企業に就職。女性は会社に結婚相手を探しに行き、うまくゲットしたら寿退社で、羨ましがられながら会社を去る・・・
男女雇用機会均等法で肩で風を切ってブイブイ言わせる女子もいたが、寿退社組もまだまだいたそんな時代。
私の家庭は私をその正解に乗せるために、努力していたと思うし、私もそれを疑ってなかった。
時が30年経ち、色々あった私は自分の目で見て、耳で聞いて、自分なりにただしいと思う価値観を積み上げてきていたらしい。
母から昔、何回も言われてたセリフを聞いて私はほんとうにビックリした。
そう言えばそんな価値観の時代があった!と。
そして目の前に過去の私が見えたのだ。社会が決めたルールと線路からはみ出さないよう、負け組にならないよう、必死にもがいている自分自身を。確かに見た。
あの時に戻って言ってあげたい。
自分の頭で考えなさいと。それでいいのか?と。
年老いた母が、価値観をバージョンアップするのは難しいだろう。
「優しくてイケメンだったよ。〇〇も彼が大好きみたいだよ。」と言うのが精一杯だった。
「いやーでもやっぱり大きい会社やで」
まさかの追い討ち😅
「今時は大企業に勤めても離職率が高かったり、精神的に参ってしまう人もたくさんいるよ。大企業神話なんてとっくに崩れてるよ」と思わず言い返してしまったが、母はガンとして譲らなかった。
その昔、まだ21ぐらいで田舎から都会に嫁いできた母。
必死に子育てするために、見つけた育児の正解がそれだったんだろう。
それって当時は母だけじゃない、多くの人が人生の勝ち組を目指していた。
我が子の幸せを願ってのことだったと思うしかない。
でも、私は今は違う。
変化は起きるのだ。ゆっくりと。
母を否定せず、
でも自身が見つけた価値観も大事にしたい。
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