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100倍、身につく国語力(69)外来語篇

❤小~高校生と,母親向けのレッスン

  (1年間で国語力の悩みが解決できる!)
 
カタカナ語篇 ⑦
【日本語の外来語の特徴】
 
4.外来語を 乱用する国民性
(2) なかなか一定しないカタカナ語
 
 外来語の乱用の影響はとても大きくて、
それを使用せずに文章を書こうとすると、
たちまち書けなくなることでよく分かり
ます。
 
 ご存知のように日本語は主に和語・
漢語・外来語の構成で成り立っています
が、「帰省、高速道路、新幹線、相当、
混雑、予想」などの漢語なくして、文章
はもはや成立しないことは、一目瞭然
(いちもくりょうぜん)といえます。ちな
みに、若い人の場合は次のようにカタ
カナ語が増える傾向にあります。

  例えば、
 「サマー・バケーションのリター
  ン・ラッシュで、ハイウエイや
  新幹線は相当にパニックが予想
  されるよね」
 
 このようにカタカナ語が増えると、
漢字の比率がグッと減る
という現象が
起こります。これは、外来語の傾向を
如実に示しているわけです。なぜなら、
歴史を遡(さかのぼ)るとまず中国語から
の漢語が取り入れられ、次にヨーロッ
パ諸国の西欧語の翻訳語及び和製漢語
などが登場し、現在のように英米語が
中心のカタカナ語になってきたからで
す。


 ところで、外来語の導入は日本語の
発展に大いに貢献(こうけん)してきた
ことも事実として認めなければなりま
せん
。それは古くから外国語を取り入
れることにより、日語は語彙を豊かに
してきたからです。今では、日常語の
75%が外国語となっているという驚
くべき状況になっているのです。
 
 ですから、もし純粋の日本語を和語と
すれば、まったく貧弱な文章や会話しか
できなくなってしまう恐れがあります。
そういう状況を避けるため、漢語の造語
力に頼ったのですが、これはひとえに
和語に造語力が弱くて機能しなかったと
いう外ありません。
 
 特に、江戸時代の蘭学者(らんがくしゃ)
のオランダ語の受容に始まり、明治以降
の学者や思想家たちの近代語の造成語彙
は、西洋語の翻訳によって、その内容を
一新しました。その翻訳の過程で、なぜ
和語ではなくて漢語が使われたのか疑問
に思われるのもか知れません。

 その理由はいろいろありますが、和語
は一般的に冗長(じょうちょう)(=ダラ
ダラとして長たらしいという意味)な
単語が多く、ズバリと端的(たんてき)に
表現しにくいという特徴があったため、
新概念を表現する日本語として適当では
なかったと考えられるからです。今、
高野繁男著の『日本語になった西洋語 
急増するカタカナ語』(大空社)による
と、和語の造語力の弱点を次のように
指摘しています。  

 「たとえば、<引力><動力>
  <水素><色素>などは、  
  オランダ語の翻訳から生ま  
  れた訳語である。   
  <引力>を訓読すると、ひく  
  ちから<(引く力)、(水素)は  
  みずのもと(水の素)とな  
  ろう。言語の概念を初め訓  
  (和語→引く力=ひくちから)  
  で置き換え、のちに音読  
  して語(漢語→引力=イン  
  リョク)とする。はじめの  
  訓読は意味として語に付与  
  されることになる。これは  
  漢字を造語要とし、その音・  
  訓を使い分けた見事な造語  
  法といえる。  


 ここで明らかなように、和語(訓)は概念
の表現には用いられるが、それは句(フレ
ーズ)であって、音読されて、はじめて
語(漢語)になるのである。「音」と
「訓」は互いに補完の関係にあることが
分かる。この点から  外来語(カタカナ語)
をみると、日本語の音訓とは無関係に、
原語の意味が背後から支えることになる。
漢語法とはまったく内容の異なる訳語法
である。今日の、この外来語の急増は、
これまで日本語が培ってきた漢字、及び
漢字の音訓の補完による日本語の造語、
理解を根本から問うことになろう。」  

 上の引用によって、外来語に日本人は
どのように対処してきたかの一端が知ら
れますが、とにかく和語の造語力の弱さ
がカタカナ語の増加に加担していること
はまちがいないと思われます。  

 これまで長く漢語の勢力が圧倒的だっ
たのに比して、最近は西洋語の受け入れ
に大きな変化が起きています。それは、
明治時代に苦労して翻訳語を考え出して
いたものが、単語を日本語の音韻体系に
合わせて、ほとんどそのままカタカナ語
にしてしまうという現象が顕著になって
きたためです。 それは世界のグローバル
化の波とろもに、コンピュータの主流
言語になった英語が、大量の技術・知識・
情報などを猛烈なスピードで社会を席捲
(せっけん)した影響が大きいのではない
でしょうか。

 そのため、専門家は明治時代のように
議論を尽くして、新出単語の翻訳に時間
をかけて造成したり、考案したりする
過程を無意識の内に避(さ)けるようになっ
たのが原因しているようです。これは、
あまりにも情報化やハイテク化が進化す
る中で、当事者が外来語を翻訳する時間
的な余裕がなくなったことが大きな理由
として上げられます。

 ところで、外来語導入の歴史的な背景
を見ると、大きく中国語、西洋語(ポル
トガル語、オランダ語、ドイツ語、フラ
ンス語)、英米語の三つに分けられます。
最も影響を受けているのが中国語で、
それは漢語として現在でも日本語の骨格
(こっかく)をなしているくらいです。

 しかし、日本人にとって中国は歴史的
にも長い交流があり、その文物から受け
た大きな呪縛(じゅばく)からは避けられ
ないことも事実で、漢語の使用はその最
たる例だということになります。その
証拠として、かつて宮沢賢治がローマ字
表だけで表現したり、志賀(しが)直哉
(なおや)のようにフランス語で書いたほう
がいいと考える作家がいたり、英語で
すべての日本語を書いたほうがいいと
主張する政治家が登場したたりしました。  

 また、第二次世界大戦後、アメリカ
占領軍時代に当局が日本語の英語化を
図る目的のため調査をした際、日本人の
識字率の高さに驚愕(きょうがく)して、
結果的にその政策は実行されなかったと
いう逸話(いつわ)が残っているくらい
です。

 つまり、日本人が「漢字仮名まじり」
の世界から抜け出せず、今日までその
スタイルを保ち続けているのは、日本
人にとってそれが最も利便性があり、
漢字の多い文体が骨の髄まで染み込ん
でいる何よりに証拠になります。  

 この漢字の世界といえ、とても安泰
(あんたい)とは言えず、新しい外来語と
の接触で、興亡の歴史が繰り返されて
きています。そんな中で、今でも生き
伸びているものもあれば、既に消滅して
いったものもあります。 

 ❤それにしても、意味の分かる
  外来語であればいいのですが、
  最近、意味不明のカタカナ語
  が激増しており、それに関し
  ては別の機会に考えたいと思
  います。 

アナミズ (2024.04.20) 

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