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100倍、身につく国語力(63)発音篇

❤小~高校生と,母親向けのレッスン

(1年間で国語力の悩みが解決できる!)
 
オノマトペ篇 ③
【日本語のオノマトペの特徴】
 
3.オノマトペを多用する国民性
(3) 太宰(だざい)治(おさむ)の
  「オノマトペ」の使い方

 
 擬声語と擬音語を「オノマトペ」とし
てまとめると、一見便利なようですが、
実は困ることがあります。
 
 例えば、太宰治(だざいおさむ)著の
『走れメロス』
にある「濁流(だくりゅ
う)がごうごうと流れる」という場合、
これは勢いよく流れる水の音と、水の
様子との、いずれなのでしょうか。
つまり、この「ごうごう」というのは
音を伴った擬音なのか、場面の様子を
伴った擬態なのかの判断に困るという
わけです。


 『走れメロス』には、身代わりの友
を救うためにメロスが走り続けると
いう話ですが、ここに紹介する場面で
は、オノマトペが巧みに織(お)り込(こ)
まれています。
 
 「メロスの足は、はたと、とまっ
  た。見よ、前方の川を。きのう
  の豪雨で山の水源地ははんらん
  し、濁流とうとうと下流に集ま
  り、猛勢(もうせい)一挙(いっ
  きょ)に橋を破壊(はかい)し、
  どうどうとひびきをあげる濁流
  が、こっぱみじんに橋げたを
  はね飛ばしていた。」                
       『走れメロス』より
 
 このように『走れメロス』には、他の
箇所にも「濁流は、メロスの叫びをせせ
笑うごとく」、「ざぶんと流れに飛び
込み」、「ぜいぜい荒い呼吸をしながら」
などのように「オノマトペ」を使って、
場面を効果的に盛り上げて読者を惹(ひ)き
つけています。


 少し前に、参考にした小野正弘編の
『日本語オノマトペ辞典』を見ると、
従来の擬声語や擬態語という区別だけで
なく、より広い視点から「オノマトペ」
という言い方をする考えのあることが分
かります。それは、「オノマトペ」の
意味に次のようないくつか基準のある
ことを指摘しており、注目に値する点
があります。
 
 まず第1の基準は、「人間の発声器官
以外から出た音を表した言葉」という
ことになります。
そうすると、逆に人間
の発生器官から出たものは、オノマトペ
に含まれないことになり、赤ちゃんの泣
き声の「オギャー、オギャー」や、人が
考え込むときの「ウーン」や、人混みの
「ガヤガヤ」などはどうなるのでしょうか。
 
 小野氏によると、これらの語は、猫の
「ニャーオ」や、足音の「トントン」、
鐘の音の「ゴーン」と同じように、ひとつ
ひとつの音に分解できない音声を、人間
の声の範囲内で、社会的にある一定の言
い方に決めている
のだという説明になって
います。
 
 そこで、オノマトペの第2の基準は、
「人間の分解できない音を表す言葉」と
いうことになります。
そうすると、物が
光るさまの「キラッ」、蝶が飛ぶ「ヒラ
ヒラ」、大きな音を表すときの「バーン」、
冷や汗が出るときの「タラッ」、感動や
衝撃「ガーン」、動揺したときの「ギクッ」
など、現実には音などは出ていないのに、
それを音として表している
のです。
 
 更に、第3の基準は、「音のないもの、
または聞こえないものに対し、その状況
をある音そのものが持つ感覚で表現した
言葉」ということになります。
しかし、
「オノマトペ」には、音を伴ったものか、
そうでないのか判定に困るものがありま
す。例えば、「ザアザア」は少し微妙な
表現になります。
 
 <例> 
  ①「暑いので、ザアザア水を浴
    びている」
   ②「お金に糸目をつけず、ジャン
    ジャン使ってしまった」
 
 ①は大量の水が流れ、身に降りかかっ
ている音だとも、水が際限(さいげん)なく
大量に降り注ぐ様子を表現しているとも
解釈できます。しかし、②の「お金を
ジャンジャン使ってしまった」というの
であれば、ほぼ音がない状況だと理解
できます。
 
 ❤このようにして「オノマトペ」を
  見て来ると、場面によって多様な
  使い方があるだけでなく、微妙な
  判断をすることも少なくありま
  せん。その上、外国語、例えば、
  英語ではどうなるのかと考えた
  だけでもだけでも、悩ましい問題
  になりそうです。
 
アナミズ (2024.04.14)

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