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100倍、身につく国語力(59)発音篇

❤小~高校生と,母親向けのレッスン

(1年間で国語力の悩みが解決できる!)
 
音便(おんびん)篇 ②
 
【日本語の発音の特徴】
 
3.音便から見た日本語
 
(2) 音便の形の起源は古典にある
 
 促音便は、すでに説明しましたが、
もう少し深堀りしてみたいと思います。
それは、主に活用語の連用形の語尾の
「チ・ヒ・リ」が、「て」「た」
「たり」などの語に連なるとき、促音
「っ」になる現象
を言います。
 
 例えば、「待ちて」→「待って」、
「歌ひて」→「歌って」、「取りて」
→「取って」など、今でもフツーに用
います。また、「追手(おって)→(おっ
て)」、「真白(ましろ)→(まっしろ)」と
いったように、名詞の熟語に組み込ま
れてしまっているものもあります。

ちなみに、古文では、【「っ」(小さい
ツ)】を【「つ」(大きいツ)】と書くの
で、注意してほしい
と思います。
 
 さて、促音は簡単に説明しようとすれ
ば、「取った」や「がっこう(学校)」な
どのように、小さな「っ」で表記される
音だと理解すればいいわけです。つまり、
「つまった音」と説明すると分かりやす
いかも知れません。
 
 下記の3つの単語は、同じ「っ」と
して表記されますが、ローマ字書きする
と、[t]と[k]と[p]となり、発音は
異なっています。

  ・葛藤(かっとう) [katto:]
  ・滑降(かっこう) [kakko:]
  ・割烹(かっぽう) [kappo:]
 
 このように促音には母音はないけれど、
一拍の長さをもっています。その意味で
は、「特殊音節」とも呼ばれているわけ
です。 ところで、促音・撥音の歴史的
背景を少し遡 (さかのぼ) ってみると、
促音のことがよくわかると思います。

 日本最古の歌集である『万葉集』の
中では、促音・撥音・拗音(ようおん)・
長音ともに、表記の上では存在しなかっ
た、ようです

 
 しかし、実際の生活の中では、これ
らの音節は存在していたといわれてい
ます。例えば、「とさか(鶏冠)」が
「とり+さか」からできていたとすれ
ば、音声学的には「とっさか」の時期
があったはずです。
 
 ご存知のように促音や撥音は、動詞
の連用形に助詞の「て」が付いたとき
に生じることが多く、平安時代から変化
が始まったと言われています。例えば、
「取り+て↓取って」、「読み+て→
読んで」のように変化したようです。
[tori+te]の[i]が脱落すると[torte]
になり、これが[totte]に変化していっ
たようです。


 外国語でも母音が省略されたり、異
なった子音が挿入されるケースがみられ
るように、日本語でも同様の変化が生じ
ていても、不思議ではないと思われます。
 
 奈良時代においては、音声としての
促音は存在していたようですが、文字の
表記は存在しなかったようです
。例えば、
「あやまって」という口語表現があった
としても、日本語表現する際は「あやま
りて(誤り+て)」と記述することが、
通例だったようです。
 
 日本語表現での促音「っ」の記述が
一般的になったのは、そう古くからでは
なく、どうやら江戸時代になってからの
ようです。ですから、歴史的にはわずか
300~400年ぐらいのことのようです。

 以上、いくつかの例を引用しながら、
簡単に促音便の形の意味や役割を書いて
みました。こうしてみると、つまる音の
「っ」はまるでマジックのよう働きを
しているのが、よく分かります。
 
 これは余談ながら、外国人にとって、
促音の発音はかなり難しくて、日本人の
ように自然に発音できるようになるまで、
そうとう時間がかかることは確かです。

 私自身の経験でも、昔、留学生に日本
語を教えていたとき、何度直してもなか
なか上達しなかったことが、いまだに
記憶に残っているくらいです。
 
 確かに外国人の発音は、以前に比べる
と随分上達して、今ではほとんど日本人
と区別つかないくらいです。ただ、依然
としてこの促音とともに長母音も苦手で、
なかなか自然に発音できない
のも事実で
す。例えば、次のような言葉に苦戦する
ことは意外に知られていないようです。
 
 ・一生懸命(いっしょうけんめい)
   →「いっしょけんめい」
 ・一挙(いっきょ)両得(りょうとく)
   →「いきょりょとく」

 というように日本人には、少し聞き取
りにくい発音になってしまいます。
 
❤これは「いっ」の促音、「りょう」
 の長母音の複合語で、特に難しい
 ようです。
 
アナミズ (2024.04.10)

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