見出し画像

20230121 立川こはる独演会(大須演芸場)

先週の春風亭一花の独演会に引き続き、女流二つ目落語家の独演会。女流落語家おっかけおじさんみたいでなんか嫌だけど、立川こはるも生で見てみたい落語家の一人。とはいってもこの人の高座はネットでも一度も見たことがなく、ただ「あの談春の弟子」という一点のみで興味を持った。完全に独演会やメディアで感じたイメージだけで書いているが、談春って相当めんどくさいおじさんだと思う。こはる自身もマクラで高田文夫の言葉だと前置きしておいてから「歩くパワハラ」と称していたが、絶対に間違っていない。なにしろ自己評価が異常に高い、自分の中の正解を断固として持っている、そして、たちが悪いことに認めざるを得ない落語の技術、実力がある。それもトップレベルで。弟子は本当にやりづらいと思う。奥歯をかみしめながら談春のダメ出しをもらっているこはるの姿が目に浮かぶ。完全に妄想だけど。

妄想ついでに、僕が落語家を目指し弟子入りするとしたら談春は真っ先に消す師匠だと思う。三遊亭圓歌より嫌かも。で、この妄想を進めていくと、弟子入りするならやっぱり瀧川鯉昇か春風亭一朝、柳家さん喬と弟子が多い師匠が思い浮かぶところが僕の限界か。

しかし談春も立派で真打までつとめあげたこはるに「小春志」という素敵な名前を用意し、5日間にわたって東京で行われる襲名披露興行のゲストには現存の落語家の上から10人並べたくらいのスターを集めてしまった。落語協会や芸術協会の披露興行に全く負けていない。落語の腕なんて全部本人次第で師匠の選択によって落語の上達度合いが変わるとは思わないが、真打になってからのプロモーションが師匠によってかなり違うんだなと感心した。こんな立派な舞台を用意するなんて、談春さすがだなと見直した。

ということで、立川こはる独演会。一階の客席は満席。二階席にも客が入っていた。先週の一花のときとは明らかに入りが違う。正直、ここまで人気がある落語家だと思っていなかったので驚いた。

こはる登場。生で見るのは初めてなのだが、ネットで見るより、ずっと女性っぽかった。生前の談志にしばらく男と思われていたというエピソードがあるくらい女を捨てた人だと思っていたが、髪の毛も伸びてどこからどう見ても女性に見えるし、今年41歳になるとは思えないくらい若く見えた…こうやって女流落語の見た目について書くのはどうかと思うと勝手に自己検閲しちゃっている自分が嫌だ。端的に書いてしまうと、ちゃんとすればかなり美人なのではと思ってしまった。もちろん、こはる本人はそういう人気は全く求めてなさそう。むしろ切り捨てている。

緩いまくらからの最初のネタは『黄金の大黒』。ちょっと忙しない。これを歯切れのいいと評価するのかはちょっと違う気がする。ドタバタした噺、これでいいのかな。

次のネタは『品川心中・上』。僕の好きな噺。忙しない感じなのは変わらないが、お染さんの身勝手ぶりと金蔵の間抜けな感じがよかった。とぼけた感じを表現するのが上手い。お染さんがやり込められる下の噺も聞きたい。

こはるには全く関係ないが、僕の斜め前のおっさんが最初から最後までずっと寝ていたのが気になって仕方がなかった。寝るのはまだ許す。酒臭いのといびき、これがひどかった。周囲の人、全員が気になっていたし、イラついていたと思う。こういう客を起こして寝るならうちに帰って寝なさいと言えるようになりたいが、難しいだろうなぁ。と同時に僕もまぁまぁ落語会で寝ちゃう人間なので気をつけようと思う。あんなにうっとおしいものだとは思わなかった。いい大人が酒に酔って潰れているのもみっともない。

もう一個、愚痴を書くと、暖房費をケチっているのか会場が寒かった。先週の公会堂ほどではなかったが。

中入りを挟んでトリネタは宿屋の仇討。たぶん何度か聞いたことはあると思うのだが、初めて聞いたかのように楽しめた。こはるの忙しないわちゃわちゃした感じが、宿で暴れる三人組のわちゃわちゃした感じと実にマッチしていた。上手い下手を忘れて噺に没入できるっていうのが面白い落語の条件だと思うが、この宿屋の仇討はそんな感じだった。サゲのお侍さんの台詞が、あぁなるほどとストンと心地よく落ちて、幕が下り、こはるに拍手を送りながらいい噺を聞けたなぁと満足して、独演会は終了。

いびきおやじさえいなければ大満足の落語会だった。さすがに東京の披露公演には行けないが、小春志になって最初の名古屋独演会は必ず行こうと思った。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?