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事件ファイルNo1 天井裏の結露

ホームインスペクションってご存じですか?

 私は ホームインスペクター(住宅診断士) という資格も取得しているのですが、その協会のHPでは、お住まいの地域のインスペクターを検索することができるので、時々私にも相談の連絡が入ります。
下は、その 認定会員リスト のページです。

 実はこれまではインスペクションを通常業務とはしてきませんでしたので【 忙しい 】ことを理由として、お断りするばかりでした。

 ところが、昨夏はどうしても断り切れない案件が二件ありました。

 そのうちの一つは引き渡しを受けてから3か月しか経ってはいないお宅でした。

 内容的には『 インスペクションというよりは、明らかな不具合ですから、対処方法に関しての知識が必要ですね。』とお伝えしつつ、『 先ずは建設した大手ハウスメーカーさんの見解と対処方法を図面と文書できちんと確認してみてください。 』とお伝えしました。

  問題点とは、具体的には天井裏の 驚くほど大量の結露 とそれに伴う天井の シミ その結露水が壁を伝って、壁にまでシミとカビが発生しているような状況でした。

 そして建設したのは全国大手のハウスメーカーさんでしたので、私にも『 きっと、きちんとした対策を講じてくれると思いますよ。』という感覚が前提にはありました。

 実際にも最初の相談の際にメールで送ってくれた写真から判断しても『 さすがに大手さん! 』と思うような天井の仕様になっていました。

写真からは『 その水の量からは 雨漏りでしょ? 』と思いましたが、メーカーさんの詳細調査により その可能性 は否定されていました。

天井のボード裏 には 不透湿フィルム(ビニール) が張っていました。

『 もしかすると 結果的にはこのフィルムが悪さをしているのではないかな? 』とも思いましたが、【 悪い 】といえる根拠がないのでその点は指摘しませんでした。

ただし、そのようなフィルムがあるからこそ 壁 にまで流れ落ちていたのは間違いありませんでした。

しかしながら 実績のある工法 だとも思っていましたし、それを確認もしました。

 ・・・・
そしてまたもや相談の電話がかかってきました。

 『 メーカーさんは 納得できるような きちんとした理由 を説明してくれず、はぐらかされているように感じますのでメーカーの説明に立ち会ってもらえないでしょうか。』という内容でした。

  そこで『 インスペクションとは関係なく 知り合いの建築士 として立ち会いましょう。 』という事にしました。

 【 音・熱環境 】は、私が最も苦手とする分野ではありますが、メーカーさんの説明に関しては【 チグハグ 】という感じをうけました。

 『 その対応では室全体の断熱効果は上がりますが、ヒートブリッジ が解消されないのではないですか? 』 さらに『 その対応では 夏型結露が解消できたとしても 厳冬期に大丈夫だといえますか? 』に関しては、『 もう一度社に帰って本社の技術センターと再度検討して参ります。 』というような返答でした。

 『 現状において 目先の手当て をするのではなく、年間を通じて御社の目指すスペックが約束できるように 可及的速やかに提案をまとめてから次回の面談を設定するようお願いします。 』 というような話をして最初の面談を終わりました。

 『 また、私の本(!な家選び)のP123にある挿絵を用いて 御社の提案する方法が どのようにその問題点を解決するのかを説明してください。 』と伝えました。
 ※ 下の写真が そのP123の挿絵 で、オーナー様には予めメールで送信していました。


予め送っていたP123の写真です

横で聞いていたオーナーさんの感想は『 私たちだけではメーカーさんの説明が理解できないままに その場を誤魔化されてしまっていたと思います。』という事でした。

  そして、その後の経緯までは具体的には書きませんが、私が立会 できなかった 修繕日に【 私が提案していたこと 】は却下されたそうです。

その提案とは『 次回以降に結露の発生がないことを確認できるように 天井点検口を 移設して再設置 しておいてください。』という事でした。

手直し工事において、当初より天井は一旦全部撤去する予定でしたので内容的には造作もないことのはずなのですが、『 結露のリスクが大きい。 』という理由で点検口をつけてくれなかったそうです。

何をもって『 リスクが大きい。 』のかは 理解できない 旨はオーナー様に伝えています。

なぜならば、もともとあった点検口を、次回点検しやすい位置に 場所をずらして 再設置 してもらう だけの事 だったからです。

新たに増やすことを要求したわけではなかったのです。

つまりそのメーカーさんは【 天井点検口は 天井裏の結露に対してリスク 】だと言いながら、【 標準装備 】として新築時に設置しているということになります。

それでは 矛盾でしかない 事になります。

現場の担当者が 技術センターの意思 を理解できないままに単に言われたことをオーナー様に ごり押し した結果であろうと推測します。

経緯についての【 状況説明 】は詳しくはしませんが、こちらのお宅は 天井裏が極めて狭く、断熱材を詰め込んでいるので、実際問題として後日の天井裏の点検が困難なのです。

今回の事前調査でも スコープを使いましたが、既存の断熱材や野縁・野縁受けが邪魔をして 見たいところ が見えなかったという事実もあるような状況下です。

また、前述の通り 天井ボードの裏に 不透湿シート(ビニール) が張っているので、結露が減れば、室内からはそれを直ぐには確認できない可能性があります。

また、メーカーさんは『 結露しても問題ない程度の結露になる。 』と説明したそうで、オーナーさんも【 納得いかないながら頷いてしまった 】ということです。

『 しかし、【 基本的に結露しないような高級グレードのスペック 】の建物だと思いますが、それで納得できますか? 』とオーナーさんに聞くと『 そうですよねっ! 結露しないことが前提でなければなりませんよね。 』というように 納得できたよう でした。

結果的に このままでは点検しない間に10年後に『 天井にシミが・・・・ 』という可能性があることをオーナー様には示唆しています。

また、結露に関しては【 瑕疵担保責任保険 】の対象外だと思われますので、十分な注意が必要です。

ですからこそ、今回の件に関しては『 担当者 支店長 等の記名押印 をした報告書と 約束内容(来夏・猛暑日の点検調査他)を文章にしてもらっておきましょう。』とアドバイスしました。

 結果的に 天井ボードに貼り付けている不透湿フィルム(ビニール)の目的が 本当は何なのか がよく理解できないのですが、たくさんメリットがあるのでしょうが、デメリットとして 結露を促してしまっているのではなかろうか・・・・という気もしています。

・・・・

ちなみに私は 20年前までは『 ガラスの結露は室内を除湿してくれているのだ、と考えることもできます。ですからガラスの結露に関しては空調装置だと思えば肯定できますよ。 』と話していました。

しかしもう そのような時代 ではありません。

ガラスの結露は【 熱損失の証明 】と捉えるべきでしょうね。

しかし、ガラスの断熱性が上がって 暖房効率が上がったとしても、生活の仕方によっては 室内に浮いている 水蒸気の総量 は変らないのかもしれませんね。

するとその水蒸気の余剰分は 室内のどこかで結露 するかもしれないのですし、施工の良否によっては 天井裏なのかも しれません。

そのあたりは事前にキチンと説明を受けておきましょうね。

中途半端な 高気密・高断熱住宅はかえって住宅の寿命を短くする可能性があるのだと時々話していますが、そのような理由が根拠です。

今回の オーナー様は『 家を建てる前に 緑の本(!な家選び)を読んでおけば良かったです。 』と仰っていました。

こちらの リンク からも確認できますよ。

 相談程度でしたら匿名で結構ですのでコメント欄にコメントをどうぞ。

もしくは kurashi-johokan@outlook.jp   にメールください。

対応可能かどうかは 私の状況 に応じますが、対応可能の場合でも【 基本的には無料 】のつもりですのでご遠慮なくどうぞ。

 

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