500字小説『全部、嘘』
「明日、一緒に映画観に行かない?」
彼女は朗らかだ。誰にでも同じように接する。
「いいけど」
「ほんと?じゃあ駅前の本屋。朝10時に」
「分かった」
「遅刻しないでね」
ばいばい。
手をブンブン振ってから走り去った。
来ないだろうな。
そう思いつつ「もしかしたら」という望みを捨てきれずに待ち合わせ場所へ急いだ。
でも。
「やっぱりね…」
分かってる。彼女は嘘つき。
溜息を吐いてから、映画館へ向かった。
何を観ようと悩んでいた時、後ろから声をかけられた。
振り返ると、同じクラス