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記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。

宮殿のような屋敷で僕の声を探している。

読了しました。
短くまとめると救いの話です。しかし私は短くまとめたくせに長々と語りたい女なので、どうぞまるまる1ページお付き合いいただいてもよろしいか?? (イイヨッ)

ありがとう皆〜〜〜!!!

実は私、BL小説字書きながら、他の商業作品はあまり読めないタイプの腐女子です。なんでかっていうと、締め切りのない執筆に追われて首を締めておるからです。
その中で、ここ最近は気になる表紙だったり、内容の予測がつかないタイトルだったりを手にとって読むようになりました。これは自分にもびっくらこきまろ。商業BLだけでなく文学作品までな!? きっと逃避したい現実がそこにあるから〜🎶てなわけなんですが、そういう、没入したい時に限って私の脳は鮮明に文字を映像化していくのです。

今回の作品は株式会社Jパブリッシング様から出版された、「宮殿のような屋敷で僕の声を探している」著者キトー先生の本の感想です!!!

そしてネタバレクソほど含みます

一応キトー先生にネタバレクソほど含むnoteをかいてもよろしいか!? と突撃かましたところ、海のように広い懐でオッケーもらえましたので!キトー先生強火勢いの方々はどうかだいきちの背にナイフを投擲しないように頼みます(重要)

作品の表紙は石田恵美先生の美しい作画。そこに描かれる美しい攻めライルを、まずはじっくり見てほしい。
しかし彼は地べたを這いずるような絶望を心に宿していたのだ。
多くのBL小説では、攻めは救う側、そして受けに対してどこまでも大人であり、苦境に手を差し伸べ、深い懐と不器用な愛情で導く存在だ。
だからこそスパダリという根強い人気を誇る性癖が生まれるわけなんだから異論は認めん(強火)

しかし攻めであるライルは、人の手を借りなければ生きられない。お荷物な存在として描かれた姿に衝撃を受けた。
容姿も美しく、頭脳も明晰で、誰もが羨むような富豪であり、その隣を誰もが狙う特別な存在から引き摺り下ろされた男。人生の暗転期真っ只中、意識はあるのに目も開けられない、喋ることもできない。鼻から管を通されて、ただ有用だからと生きながらえている。そんな社会的に弱者になってしまった攻め。
数ある作品の中で、こんなふうに描かれている攻めはまず見ない。そして世話をするものたちに蔑ろに扱われているシーンなんかは本当に見ていて心が痛む。
でも、そんなライルにとっての暗闇の中の光はターリクである。そう、後のライル様のお嫁さんである。
身内でもないのに、ターリクは汚れ仕事を請け負いながらも独り言にしかならない問いかけをしたり、寝たきりのライルの体に床ずれができないように体をずらしてやったり。
大きな男を介護するだけでも重労働なのに、ターリクは本当に知り合いに接するような気軽さでライルの世話をする。
ターリクとの二人きりの時間が、少しずつライルに生きる希望を与えていくのだ。
人間の尊厳破壊がいくら大好きだってだいきちがいってもさ、これはちがうじゃん。泣いちゃうじゃんだいきちがライルの立場なら。
終わりの見えない孤独に堕とされて、ずっとターリクの声をよすがに人に戻っていくライル。男としての矜持を取り戻していく姿は懸命だったよマジで。
意識のない中で、ターリクが呟いた、腕のいい職人が似た黒豆のように艶やかな黒髪です!と寝たきりのライルの容姿を褒めるセリフから伝わるように、ターリクはちょっとずれているが、それでも、ライルはターリクが言った、いつか一緒にミランの花が観れるといいですね。という言葉を気力に、掠れ切った声で「そう、だ……な……」と声を出す。
感動のシーン、まるでドラマを見ているかのように映像が鮮明に浮かび上がるのは、間の持たせ方が実に秀逸だからですな!

まあターリクにライルの声は聞こえていなかったんですけど(大泣)

大事な場面だったのにおいターリクこら!!おい!!!と思わず私の方がヘエエッと情けない声を漏らしてしまった。
多分私がライルだったらなんでや(困惑)とさらに発語する自信しかない。

しかしライルが意識を取り戻したとは言え、二人の距離はそう簡単には縮まらない。なんでかというと、ターリクさん部署異動ですう!!(憤怒)
お前これからやん、これからはじまろうとしてましたやんそんないけずうなことせんといてキトー先生!!
と、思わずだいきちはんに゛い゛ぃ゛い゛!!!! と悶絶しました。でも好きじゃん読者はじれじれ、すれ違う二人とか。
でもこの二人はマジで本当の意味でのすれ違う二人なんですよ。タイトルを読んでください、なにがかいてありますか? そう、宮殿のような屋敷。そこが二人の現住所なのです。(悟りの境地)

そして読み手がのめり込む話や映像として浮かぶ話は、総じて会話にテンポがある。それは創作の話に出てくるキャラクターのセリフではない。何が言いたいかというと、人ごみの中に紛れた時に聞こえてくる他愛のない会話とか、そんな感じだと思う。
キトー先生が書く会話のやり取りをマジでよく読んでほしい。
まるで仲の良い大学生同士の掛け合いだったり、子供がママに抱っこをねだる可愛らしい駄々のような、そんな日常で当たり前のように会話をする言葉の抑揚がリアルに描写されている。
会話文になりがちな「」の中、だいきちは文じゃなくて肉声に聞こえた。
作中、場をかき乱す役としてカルイという青年が出てくるんだが、ライルの側近であるくせにマジでいい意味で仕事をしない。
クラスに一人いるお調子者枠が側近という、ライルの人間不信を鮮明に表す存在としてのポジションでもあるカルイは、語彙力が食欲に振れているターリクですら呆れる青年である。
でもカルイがいるからこそ、仕事以外でのターリクの人間関係や、幼馴染として接するライルのきやすさも感じられる。
マジで仕事の出来はともかく、カルイはいい意味での撹拌機というか、かき混ぜた水面が渦を作って全てを中心に引き摺り込んでいくように、どんどん周囲を巻き込んで事態を好転させていく存在。仕事の出来はともかくとしてね(2回言うな)

そしてカルイもまだまだ語りたいんだが、文字書きとして目が離せなくなった理由はキャラクター同士の掛け合いだけではない。情景描写と行間の奥行きだ。
この作品を救いの物語といっただいきちだが、救いは人物に当てはまるだけではないと思う。
序盤にターリクが呟いた、いつか一緒にミランの花が観れるといいですね。と言う言葉。このセリフにあるミランの花が芽吹き、枯れ散る様子が出会えぬ二人の月日とライルの焦燥を表している。だいきちはそうだと思うので是非注目して読んでたもれよ。
何せ私はそこに文学を見出してしまった。なんならミランの花のイマジナリースメル(言い方)すら感じてしまうくらいには、その描写だけで引き摺り込まれてしまったわけである。
人物だけではないといったのは、このミランの花もその救いに入っていると思ってしまったからだ。
ミランの花が美しく咲き誇った時、その場に二人がいればこそ。綺麗に咲いたその時を見守られてこそ花の本分。時の経過で描写されるミランの花からの漂う哀愁が悦びに変わる。その瞬間は二人のゴールなんですよわかりますか?分かりますよね!?わかるって言え(落ち着きなさい)

取り乱したっていいじゃない!!

(開き直るんじゃないよ)

ほんと、小説はキャラが多ければ多いほど動かすのが大変だし上手くまとめられずに活かしきれずに終わることが多いのに、キトー先生はセリフとキャラの性格通りの立ち回りもさることながら、ライルとターリクがタイトルにもある宮殿のような屋敷でうまく巡り会えないように、自然に他キャラを駆使してストーリーを展開していってるところも見もの。
ただ攻めと受けの一方通行な追いかけっこではない。ターリクがライルの目覚めを耳にして純粋に喜んだかと思えば、己の不敬の可能性に触れて逃げ回る動機も完璧。その理由に絡んでくるのがサブキャラクターであるルルとロングだ。
2人はいたずらにターリクをそそのかしているわけではない。目上の方への一般的な振る舞い方として、ターリクの話をきちんと聞いたうえでの友人としてのアドバイスをしていた。それが奇しくもライルからターリクを遠ざけるきっかけになってしまっただけのこと。例えるなら、
灼熱の土地でグロッキーになったグリズリーを憐れんだアライグマが、その毛並みをライオンのようなサマーカットにしてやった。
苦しくなく暑くもない。意識の戻ったグリズリーは超喜んだけど、アライグマ仲間からは「バレたらお前食い殺されるぞ!? だって相手はプライドの高いグリズリーだぜ!?!? いまのうちに逃げよう!?!?」と仲間を守る前提のアドバイスをしたってかんじのやつである。

普通の人としての常識ならまず物怖じする親切を分け隔てなくやっちゃったターリクの素直さを周りは危ぶんだわけです。

めっちゃいい友人じゃん。


だって普通にそれはすごい勇気のいることだろうよ。不敬を働いたターリクを探しているライル(じつはちがう)から、ターリクを隠し通すこと。下手したら見つかり次第友人もろとも処罰されてしまう可能性があるんだぞ?
しかし行間からにじみ出る友人達の必死な思いで、ターリクは元気になったライルに思いを馳せつつも、友人たちに守られながら何気ない日常をたのしんでいく。

ここもすごいんだよだっていつまでも攻めが受けと出会わないのに、日常描写が読者を飽きさせない!むしろターリクの無意識の逃走劇を楽しく読めるし、読者はライルへ、一進一退!がんばれライル、カルイテメーには言いたいことが山ほどあるぞ?ってなかんじで、本当の意味でのじれじれを味わえる。受けと攻めが面と向かってやりあう恋の駆け引きなんかではなく、純粋に日常としておこりうる追いかけっこ。しかもターリクは使用人、当然ライルが世話をしてくれた恩人を必死で探していると聞いても、まあどうせ僕じゃないしねー!と呑気にルルとロングと舞台を見に行ったりしている。
読者からしてみればお前のことだぞ!!!おいこら!!!!胸に手を当てて考えてみろ!!わかるだろ、なんか色々あったじゃん!?!?てなる、こちら側が親戚のおばちゃん気分で変なところに手に汗握る。
すごく読みやすく、詰まることもなく流れるように視線を運べる筆致なのに、なんかこう、そこはかとなく漂うシュールもほんとにさじ加減が良くて(語彙力)
これはぜひ読んで感じてほしいのであまり語らないようにしようかな(ここまで語っておいて今更何を)
そしてなによりもだいきちが熱くなってしまったのは、攻めであるライルの姿勢だ。

その前に拙作に対する攻めのあじわいを書かせてもらいたい。拙作の攻めはほんとにクズがベースで、人が転ぶなり指さして喜んじゃうような人でなしが多い。だからほんと、スーパー攻め様とかは正直性癖ではないのである。
だから私はいくらライルが過酷な運命で自我を見失い這い上がったとしても、きっとスパダリになるのは早いんだろう!そうにちがいない!そうであってくれ!!安心するから!!と切に願った。なぜなら受けに感情移入するよりもだいきちがライルに気持ちが移ってしまったから、逃げ場が欲しかったのである。
しかし相手はキトー先生(すみませんナイフを投擲しないでください)いい意味でほんとうに裏切ってくれる。
声を大にして聞いて下さい。クズ攻めを愛するだいきちの魂の叫び。

不器用拗らせ努力型攻め、いい!!!!

死ぬ!!!!!やめろ!!!!酸素が薄いんだよそこは!!!!!!!

ネタバレを観たくない方用に分けて書きます。
第二部はだいきちがハマった深い穴2024夏〜ままならない男ほど沼るって知らなかった〜について!!!!!
次回更新分、こうご期待!!!

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