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人の心がないのか

安定の身バレ防止でボカシもありますよろしくどうぞ。

家から電車で片道1時間15分の場所まで仕事をしに行く。電車もそれだけ乗ってれば、いろんな人に出会う。

私はデブだ。もうしっかりと腹が出ている。コロナのせいで通っていたジムに行けなくなり、環境も変わったせいかストレスで爆食い。
今のグラマラスナイッッバリィーーが出来上がったわけである。
静かな部屋でうるせえなと思ったら自分の呼吸音だったこともあるし、三段腹に嘆いていたあの時代が輝いていたことにも気がつけた。
健康診断では看護婦から「甲状腺が気になり……あ、あごですねあご!!」と言われ、てめえまじで顔と名前覚えたからな岡崎……(憤怒)となるくらいには自他共に認めるデブである。

だから私は腹が出ている。
でも骨格ストレートなこともあり、そんなに目立ったためしはない。だけど見る人が見れば、腹が出てると思われる。

今日は、そんなだいきちが健康診断で看護婦に心配される以外で、初めて他人に社会的に心配された話を投稿したいと思う。

某沿線ユーザーなだいきちは、自宅最寄りから乗り換えまでおおよそ30分前後かかる。その日は平日の昼前くらいで、だいきちは中番の出勤。
私の目の前から見て電車の角席にお婆さんが座っていて、その隣には男子大学生。そして男子大学生の隣にはくたびれたおっさんが座っている。
電車で座れたらラッキーだなと思っていたけど、たったまま三駅くらいを見送った。不思議な視線に気がついたのは、最初の駅を通り過ぎたあたりだ。

なんか知らんけど、目の前のお婆さんが舐めるように見てくる。仕事柄コミュ力を発揮するだいきちも、時間外労働はしない主義である。しっかりとまるむしをして窓の外を眺めていた。
でも見る。すげえ見てくる。困惑するだいきち、一応目を合わせたら、なぜか微笑まれて頷かれる。
困った。知り合いだったか? だいきちは途方に暮れた。記憶を捻り出しても、そのお婆さんの顔がどこにも見当たらない。だから間違いなく他人なんだが、おばあさんは微笑んでくる。なんすか、え? 普通に怖い。
そしてお婆さんの隣に座っていた大学生が、次の駅で降りた。乗り換えまであと三つほど駅を通る。だから座ってもよかったんだが、普通に怖くて迷ってた。

「ねえあなた、お座りなさいよ」

痺れを先に切らしたのはお婆さんの方である。
おいやめろよ、今の一言で座ろうとしてたサラリーマンが座れなくなっちゃっただろ! 気まずいを作るんじゃないよ!!

「ぁウス」
とかニチャアってぎこちなく笑って答えてしまったから、私も気持ち悪かったかもしれない。
サラリーマンに心の中で謝罪をして、お婆さんの隣に座る。
もしかしたらデブの呼吸が聞こえて体調不良者にでも見えたのか? いやそれとも他の親切? 一向に定まらない答えを見つけたいが、本人に聞けるかこんな状況で。
「ぁウス」って言ってしまったから、もしかしたら日本人に見られてないかもしれない。
奇妙に笑いかけるお婆さんの視線に加えて、頭上からは不満そうなサラリーマンの視線も降ってくる。満員電車にはない謎の緊張感がだいきちの体を支配した。

「ねえ、何ヶ月?」
「はい?」

何ヶ月is何?????

暫定初対面のお婆さんからそんなことを聞かれて、思わずにっこりした(これは販売員の特性です。困ったら笑っておけというやつ)

「だからお腹のこ、何ヶ月? つわりは平気なの?」

オッケー理解した。ありがとうお前は私の心を殺した。

どうやら私を妊婦だと思い込んだ親切なお婆さんだったらしい。だけど訝しげな視線を送るサラリーマンに気がついてくれ。私のリュックには どこにも マタニティマークがついていない ことに 気がついてよべいべえええええええ(しょげないでよベイベーと同じイントネーションで頼む。)

だけどだいきちは職業柄、お客様の言葉を否定しては行けないという刷り込みがされていた。
こんな人がたくさん乗っている車内で、こんな上品な婆さんに「あたい妊婦じゃねえんだけど」と凄んでしまったら気まずいことこの上ない。私がいじめたことになるかもしれない。

だから言ってやった。

「さあ、何ヶ月ですかねえ」
あわよくばついてねえマタニティマークに気がついてくれと思っていた。
でも、お婆さんの反応は違ったんだ。

「……大丈夫よ、今はいろんなことがあるけど」
「はい?」
「母はつよしっていうじゃない」

母は剛is何?????

何? 剛田?? オメガバースの世界線??
まじで言ってる意味がわかんなかった。ただ強く手を握りしめられて、真剣な顔で見つめられるだいきち。頭の中には臨月の剛田。なぜか息を呑む頭上のサラリーマンis何。

「シングルマーザーでも社会は手を差し伸べてくれるから」
(んあーーーーーーーーーーーーー!?!?!?!?!?)

ようやく言葉の意味をだいきちが正しく理解した時には、おばあさんは降りる駅に着いたらしい。
力強く頷き、手を振りながら電車を降りていった。気まずい空気と、ぎこちないサラリーマンと、私だけを置きざりにして。

いや弁解の余地をさあ!!!!!くれよ!!!!!
それかこの場からだいきちを消してえええええリラ◎トしてええええええ(困惑)(動揺)(声のない悲鳴)

ア◉アンカンフージェネレーションのリラ◉トはいいですよ。

嘘だろ。
私は通勤電車の中。到着駅まであと一駅。おおよそ五分程度。思考するにはあまりある時間は、けして私だけではないだろう。
隣には頑なに顔を上げようとしないサラリーマン。正面にいる女子高生は虚無の顔で壁を見つめている。騒がしかった車内が静かになった気がした。
私は大衆環境の中。マタニティーマークをつけられぬ理由のある、影のある女を演じなければいけないというのか。
今日から四連勤の始まりだというのに。
私は人の優しさに殺されることもあるのだと知った。

くそが。




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