自然対数の底eについて語らせて ④実数

前回、数列の極限を定義しました。この定義から$${e}$$があるってことをきちんと示してみようと思います。前回の数列の収束の定義とは次のものでした。$${\lim_{n \to \infty }a_n = \alpha}$$とは、
$${\forall \varepsilon >0 ~~ \exist n_0  \in \mathbb{N} ~~ \forall n \ge n_0  ~~|a_n-\alpha |< \varepsilon }$$
でした。
自然数全体の集合を$${\mathbb{N}}$$、実数全体の集合を$${\mathbb{R}}$$と書いたりします。



$${e}$$は存在するんでしょうか、
数列$${\{(1+\frac{1}{n} )^n\}}$$は収束するでしょうか。これを確認するには、二つのことをクリアできればいいです。

  1. 数列が単調増加であること

  2. 上に有界であること

一つ目は簡単で、すべての$${n}$$で$${a_n \le a_{n+1}}$$となることです。
二つ目もシンプルで、越えられない「天井」があるということです。詳しくは下で説明します。
今回はまず、この二つのこと満たすときにちゃんと数列が収束することをみていきましょう。

上限(sup)なにそれおいしいの?

集合$${A}$$が上に有界とはどんな元$${a \in A}$$に対しても、ある実数$${M}$$があり、$${a\ge M}$$となることです。
上界はたくさん考えられます。例えば、集合$${A=\{ 1,2, \cdots ,99\} }$$なら100は上界です。このとき101も102も上界です。そうなると気になるのは一番小さい上界です。その最小の上界を上限($${\sup A}$$)といいます。

最大値に似ていますが、違いもあって例えば、区間で$${B=[0,1]=\{x \in \mathbb{R} |0 \le x \le 1\} }$$を考えると最大値も上限も1ですが($${\max B =\sup B =1}$$ )、$${C=[0,1)=\{ x \in \mathbb{R} | 0 \le x <1\} }$$の場合、最大値は存在せず、上限はというと、$${\{x \in \mathbb{R}|x \ge 1\} }$$(上界全体)の最小値なので1となります($${ \sup C =1 }$$)。

上限は上界全体のうち1番小さいものでした。これを式で表してみましょう。上限のすぐ下には集合の元があるはずです。つまりどんなに小さい$${\varepsilon}$$に対しても、$${\sup A -\varepsilon <a}$$となる$${a\in A}$$が存在します(上限の特徴づけ)。

実数を実数たらしめるもの

すこし話はとんで、実数とはなんぞやという話をします。おもに有理数との比較をし、連続性の公理に焦点を当てて話を進めます。
ここで、数直線上に有理数をプロットしていくことを想像してみましょう。もちろん無限個点がうてます。ところが、無理数のところは穴になります。これも無限個あります。(説明はしませんが、有理数よりも“たくさん”あります。)つまり、有理数は穴だらけのスカスカなのです。
これに対して実数はびっちり詰まっているのです。本当に穴がまったくなく。このことを「上限」をつかって表現すると次のようになります。

まず、実数$${A \subset \mathbb{R}}$$を空でない集合とします。$${A}$$が上に有界のとき、$${\sup A \in \mathbb{R}}$$が存在します。ピンとこないかもしれないですが、これが実数がびっちり詰まっていることを表しています。これをベースにして本題に戻りましょう。


収束することをきっちりかっちり

では、数列$${a_n}$$が上の二つのことを満たしていると仮定してこの数列が収束することを示してみましょう。
まず、$${A=\{a_1,a_2,\cdots ,a_n,\cdots\}}$$とおきます。このとき、$${A}$$は上に有界なので、実数の連続性公理から上限$${\alpha =\sup A}$$が存在します。また、任意に$${\varepsilon >0}$$をとります。すると、上限の特徴付けから$${\alpha -\varepsilon < a_{n_0}}$$となる$${n_0 \in \mathbb{N}}$$が存在します。数列が単調増加であることに注意すると$${n \ge n_0}$$を満たす任意の$${n \in \mathbb{N}}$$で、$${\alpha -\varepsilon < a_{n_0}\le a_n \le \alpha <\alpha +\varepsilon}$$が成り立ち、これは$${\lim_{n \to \infty}a_n =\alpha}$$を意味します。これで証明が終わりました。

では、次回この二つを満たしていることを確認しましょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?