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心の底から好きじゃない、ごめん。⑤

就職してから2年が経った

少しずつ仕事にも慣れ始め
社会人としてわたしは日々働いていた

高校卒業後
特にやりたいことも見つからなくて

なんとなく興味のあることは
いくつかあったけれど

働きたいという気持ちの方が強くて
すぐ就職した

彼とは連絡は取っていなかった

彼女がいることを分かっていたし

連絡は取らずにいた

けどきっと
連絡を取る事が怖かった

彼の言葉に一喜一憂する自分をわかっていたし

彼の近況や彼女とのことが
垣間見えるのが怖かった


傷つきたくなかった


そういえば
出会ってすぐに彼はもう進路を決めていた

彼は頭もよく、県内でも優秀な進学校に
通っていた

周りはもちろん大学に行く人がほとんどだった

彼は親や先生や誰になんと言われようと

夢が決まっていた

惹かれた魅力のひとつに
そこもあったのだと思う

彼は元気にしているだろうか
思い出すたびに
そう思っていた




20歳になって
彼氏ができた

同い年の彼だった
彼も専門職に就きたいと夢があり
勉強中だった


好きだった彼とは
性格もすべて真逆だった

男臭い環境で育ち
学校も同性ばかりで
見た目も雰囲気も男らしい人だった

グループで仲良くなり
みんなでよく遊んでいるうちに

彼から告白された
驚いた

その彼に好きという感情はあるか
まだわからなかった

それも正直に伝えた

とてもいい人だったし
すごく思ってくれて
なによりピュアなところが素敵だと感じた

彼の気持ちに押されて
付き合いをはじめた


すごく大切にしてくれた
お家に遊びに行った時はわたしより手際がよく
美味しい料理をよく作ってくれた

クリスマスは仕事後のわたしに
特別なクリスマスディナーまで作ってくれた

プレゼント交換をしたりして
楽しく過ごした

半年が過ぎた

楽しく過ごしていたけど
少しずつ彼と会う頻度が少なくなった

わたしが彼の家に通うスタイルだったけれど
わたしが行かなくなった

楽しいけれど
恋愛として好きでないことに気づき始めていたから


変わらず優しくしてくれる彼に
申し訳ないと思うようになった


ある日 彼に打ち明けた

彼と出会う前に好きな人がいて
2度振られていること
忘れるのにとても時間がかかったこと


彼から言われた言葉

『それは忘れてないよ』

『全然終わってないと思うよ
   まだREIは好きなんだよ』

『どこかでその彼と僕を
   比較してた気持ちあると思う』

『責めてるわけじゃないんだ。
   ただ、もっと自分を大事にした方が
いいよ』

『無理に忘れることもないし
   少しずつでいいんじゃないかな』

『楽しかったよ
   今日で会うのも終わりにしよう
    ありがとう』

彼は優しくなぐさめるように
わたしにそう言ってくれた

涙が止まらなかった

傷つけてしまった

自分もまた前の彼を忘れてないことに気づいて
その自分と向き合うことがまた怖かった

なんて勝手なやつなんだ自分は

そう思って情けなくもなった

わたしがもしその彼だったら
彼と同じことをわたしは相手に
言ってあげれるだろうか

本当に優しくて強くて素敵な人だった

わたしより彼を大切に思ってくれる人は
きっといるはず


あとから数年経って
その彼が結婚して
子供が授かったことを人づてに聞いた

嬉しかった
きっといいパパになるんだろうな


時が経つのは早いもので
春になった

春は出会いと別れの季節
わたしはそういつも感じる


そんなある日
好きだった彼の友人とばったりご飯屋さんで会った

彼が学校を卒業したあと
引っ越してまた離れた場所へ行くことを聞いた

あぁ
とうとう夢を叶えるんだ

本当に夢叶えたんだ


時間が経っても
また気持ちが揺すぶられる

REIが元気にしてるかどうか気にしてたよ

あいつが引っ越す前に
またみんなでも集まりたいね

そう言われた


会いたい

やっぱり会いたいんだ

時間は過ぎているのに
またあの時と同じ気持ちにすぐ引き戻される


4月になる
桜が咲き始める頃

彼と久しぶりに再会した

 


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