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昭和の8mmフィルムと、大学生の私【前編】

進学を機に長野県・松本市へ引っ越してきて、3度目の夏。
私は今、50年も前の松本市を映した8mmフィルムを浴びるように眺めるという、なんとも不思議な体験をしています。

8mmフィルムからつくられる「地域映画」

この8mmフィルムを見る作業、実は、映画を作るためのお手伝いなんです。
昭和の時代の松本市を映した8mmフィルムを集め、市内のたくさんの人たちともに「地域映画」を作り上げる。それが、三好大輔監督が中心となった市民による団体「まつもとフィルムコモンズ」の活動です。

このなかで、私を含めた学生メンバーがお手伝いしているのは、地域の方が提供してくださったフィルムの中からすてきなシーンを厳選し、さらにその撮影者の方にインタビューをするという大事な行程です。

今回は、このインタビューまでの過程を、ふらっと松本市に進学してきた大学生の私の目から、ご紹介してみたいと思います。


(「まつもとフィルムコモンズ」の活動や、松本市の地域映画第一作『まつもと日和』について、詳しくはこちらのnoteをおすすめします!)



昭和の松本を眺める。今の松本を重ねる。

さて、「地域映画」は、まずは地域の方から8mmフィルムを集めることから始まります。そこから編集・インタビューを行うにあたって、持ち込まれたたくさんのなかから、学生メンバーがインタビューを担当する提供者さんをそれぞれ決定していきます。

というわけで、まずは「まつもとフィルムコモンズ」のメンバーとともに、持ち込まれた大量の8mmフィルムを眺める会に参加してきました。

「フィルムを見よう会」にて、集まった映像をながめるメンバー。


持ち込まれた8mmフィルムに映るのは、様々な人の手によって撮影された松本市内の様子や、ご家庭の様子を映した素敵な映像たちです。

もちろんですが、昭和の時代の松本と今の時代の松本では、街の様子はずいぶん違っています。松本市に住んでたったの3年(かつ、生まれてからたったの20年)の私には、いったいどこの映像なのやら見当もつかないことがしばしばあります。

そんなときに頼りになるのが、「まつもとフィルムコモンズ」に所属する様々な年代の大人たちです。松本市の大ベテランである皆さんが口にする、「ここは〇〇だ」「これは〇〇じゃないか」という言葉によって、ようやく私にも当時のまちの姿が見えてくるようになります。

私の知っている現在の松本と、フィルムのなかに映るかつての松本。それが、少しずつ重なるようなその感覚は、なんともいえずワクワクするものです。

まるで映画のような、素敵なフィルムを発見!

今回の募集で8mmフィルムを持ち込んでくださった提供者の方は10人以上。たくさんの映像を眺めるなかで私の目にとまったのは、大自然のなかにいる小さな女の子が、真っ白なヤギと一緒に遊んでいるショットでした。

大自然の中で、ヤギとあそぶ女の子を写したフィルム


まるで「アルプスの少女ハイジ」のようなのんびりした映像に惹かれ、私はこのフィルムを撮影した方のインタビューを買って出ました。

愛のつまったフィルムたち。厳選できるのか?

さて、件の「ハイジ」フィルムを持ち込んでくださった方は、ほかにもたくさんのフィルムを持ち込んでくださいました。その数なんと合計46本。この映像だけで一方の映画が作れてしまいそうです!

このなかから、主に松本市を映した合計10本の映像をもとに、インタビューで使いたい映像をセレクトする作業に入ります。

三好監督からもらった指示は、この90分ほどの映像のなかから、20分ほどの映像を厳選するということ。しかし映像を眺めていると、「これは無理なんじゃないか」という思いが募るばかりです。
というのも、持ち込んでくださったフィルムが、どれもこれもあまりに素敵なんです。

常念岳と桜がみえる風景。


歩き始めたばかりのお子さんがよちよちと一生懸命に歩く姿や、それを優しく抱きとめるお母さんの表情。地道な農作業の合間、田んぼの脇でみんなでわいわいと休憩している様子。中山地区から見える冠雪した常念岳や、お庭に咲いているピンク色のつつじ。

撮影者の方が、家族や周囲の人たち、そして暮らす土地に、確かな愛情をもってカメラを構えていたことが、画面を突き抜けて伝わってくるように感じます。
自分でもどういう感情なのかは分かりませんが、眺めているといろんなことを考えてしまい、思わず涙が出そうになるようなフィルムもありました。

一生懸命頭を悩ませつつ、なんとか「これは外せない」という映像を選んだ結果、監督の編集作業を経て映像は合計で30分ほどにまとまりました。この映像をもとに、提供者さんご夫婦に実際にお話を伺っていきます。

残念ながら採用できなかった映像。カラーできれい!

いざ、インタビューへ!

撮影されたご本人は、8mmについて「どんなのを撮ったか、まったく覚えていない」としきりにおっしゃっていました。何十年ぶりにこんなに素敵な映像を見たら、一体どんな気持ちになるんでしょう。私はフィルムを編集しながら、「早く見てほしいな」というワクワクが抑えきれませんでした。

どんなお話が聞けるのかを楽しみに、インタビューの準備を進めていきます。



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