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【短編小説】クリスマスの手紙

扉を叩く音がした。

“トントン”

愛しいあなたへ

元気にしていますか?こうしてあなたに手紙を書くのも何年ぶりでしょうね。まるで、あなたに初めて手紙を書いた時のように手が震えています。
手紙を書くのは上手くないけれど、ちょっとしたクリスマスプレゼントとして受け取ってもらえると嬉しいです。
そろそろ寒さも厳しくなってくるころかと思います。あなたは、自分のことに無頓着だから、薄着で過ごしていないかとか、ちゃんとご飯を食べているのか心配です。
しっかり食べて、健康に気をつけてくださいね。
それに、今日はクリスマス。あなた、クリスマスになるといつも張り切って部屋を飾り付けていたから、今年もやっているのかしら。変わらずめいいっぱい素敵に飾り付けてくださいね。私は、あなたのそういう無邪気な所とっても好ましく思っていますよ。
でも、後片付けも忘れずにね。
あなたと過ごすクリスマスがとっても恋しいわ。

愛を込めて、私より


愛しい君へ

君から手紙を貰うなんて久しぶりすぎて、驚きすぎて家の中で転んでしまったよ。相変わらず君は僕を驚かせるのが上手だ。とにかくとても嬉しいよ、ありがとう。
僕は、前よりは体調を崩しがちになったけれど、なんとか暮らしてるよ。そっちはどうだ?寒くはないか?僕も君が心配だよ。
今年のクリスマスは本当は何もしない予定だったけれど、君に言われたから今年も部屋を飾り付けたよ。もちろんあのツリーも。ただいつも君は、僕が一番上の星をつけるとちょっと拗ねるから、今年は星は付けないでおいたよ。君が飾った方がきっと星も喜ぶと思う。
僕も君と過ごすクリスマスがとっても恋しいよ。

愛を込めて、僕より


“トントン”

愛しいあなたへ

今年もまたクリスマスがやってきましたね。変わらず元気に過ごしていますか?
あなたももう若くないんだから体には気をつけてくださいね。無理はせず、クリスマスを楽しんで。
ちなみに、いつもクリスマスの夜に二人で飲んでたあのココアだけれど、実はひとつまみだけお塩を入れてたの。塩を入れるともっと甘く味が深くなるのよ。よかったら試してみてちょうだい。あと、マシュマロも忘れずにね。そういえばあなた、私がマシュマロを入れた後にこっそり自分で足しに行ってたのバレてたわよ?最初から言ってくれれば良かったのに!
とにかく、ココアも飲んで体を温かくして過ごしてくださいね。
きっと今年も素敵なクリスマスになるわ。どんなクリスマスだったか、また聞かせてもらえる日を楽しみにしてる。
愛しているわ。

愛を込めて、私より


愛しい君へ

そっちでもクリスマスを祝っているかい?きっとそっちのクリスマスはもっと綺麗なんだろうなあ。まあ、きっと君がいてくれればそれだけで素敵なクリスマスになる気がするよ。
僕は、正直寒さもあって体調を崩すことが増えてしまって、今年はあまり盛大にクリスマスをお祝いできていないよ。君を残念な気持ちにさせていたらすまない。
そういえば、手紙にあったココアの秘密だが、実際にやってみたんだ。確かに、なんで自分で同じように淹れても味が違うのか不思議だったけど、謎が解けたよ。ただ、やっぱり君が淹れてくれた方が美味しく感じるんだ。あと、今年は料理も作ってみたんだ。君ほどじゃないけど、食べられる程度にはなったから安心してくれ。ただ、作りすぎたから、御近所さんにもお裾分けしたよ。君の分もあるから早く帰っておいで。待っているよ。
僕も愛しているよ。

愛を込めて、僕より


愛しい君へ

今年のクリスマスは君からの手紙が無くて悲しいから、僕が先に君へ手紙を書くよ。今年のクリスマスは、飾り付けも料理も盛大にやったんだ。特に家に呼ぶ人はいないけれど、なぜか体の調子も良かったから、久々になんだか楽しかったよ。
そういえば、もうすぐ君のところへ行けそうなんだ。僕も歳だからね。少し怖い気もするが、君がいる場所へ行けるのなら幸せだ。ここ数回のクリスマスを僕がどんな風に過ごしたのか語り尽くす予定でいるから、ふかふかのソファーであのココアを作って待っていてくれ。あと、できればマシュマロは多めで頼む。
そして、どうか僕が君のもとへ向かうことを怒らないでくれ。予定より少し早いけど、僕にしては頑張った方じゃないか?会えたら今まで会えなかった分抱きしめあおう。
きっと手紙はこれで最後だ。
早く君に会いたい。
僕は君が本当に大切で愛おしかったよ。
愛してる。

愛を込めて、僕より


“コンコン”


書き終えた時、玄関先で扉を叩く音がした。
ああ、迎えにきてくれたみたいだ。

作者 : 碧

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