やっちゃば一代記 思い出(12)
大木健二の洋菜ものがたり
セロリアック
1873年渡来と書物に記されている古い野菜です。
多分オランダから入ってきたものでしょう。
私が京橋の大根河岸に勤め始めた(昭和八年)頃は千葉県から入荷し、面長で葉が付いていました。香りと姿形に抵抗があったためか、需要は細々としていましたが、戦後は洋菜ブームにのって千葉県の勝山、岩井、保田、長野県の原村、宮川村で栽培が再開され、あちこちに自称『セロリの神様』が輩出したのです。この野菜は普通のセロリのように茎が大きくなりません。ただ
スが入りやすいので栽培は大変難しい。静岡県の浜松で試験栽培してみるとここは暖かすぎるのか、株の形が三角、トウの立つのも早く、花まで咲いてしまうのです。試行錯誤を繰り返し、ようやくセロリアックの栽培には豊富な水と冷涼な気候が必要なことが分かったのです。作るなら高冷地です。
千葉県のセロリアックが比較的小さなうちに収穫、出荷されていたのは温暖な気候のせいだったのです。
余談ですが、千葉県は野菜王国とも乳牛王国ともいわれていました。
花や野菜の茎を食べさせると、牛の乳の出が良いというので、洋菜を作っている農家は必ずと言っていいほど乳牛を飼っていました。乳牛が尊い時代でしたから、洋菜農家は生活を豊かにしてくれる牛に敬意を払い、牛ステーキは決して食べなかったと言われています。
※セロリアック
明治初めに栽培用種子が導入され、カブラミツバ、根セロリともいわれま
すね。一般のセロリは茎から上部が食用となりますが、この野菜は根っこ
の部分ですね。
ヨーロッパではイタリア、フランス料理のスープ、シチュー、サラダに利
用されています。最近ではフライにする食べ方も開発されているようです
が、一般的ではないでしょう。
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