企業の遊休不動産の解決策となる不動産M&A
近年、企業が保有する遊休不動産(=保有しているだけで活用されていない不動産)が増えています。遊休不動産になっている理由は様々あると思いますが、活用せずに保有しているだけで固定資産税などの固定費となる金喰い虫状態です。これではもったいないですよね。
そこで、そのような不動産を売却する手立てとして、不動産を有効活用してくれる会社に不動産M&Aにより売却し双方に利益を得るといった方法もあります。
現在の遊休不動産の状況
国土交通省が令和元年9月24日に発表した「平成30年法人土地・建物基本調査」の速報集計結果によると、企業が所有する不動産のうち、遊休不動産と同義の「低・未利用地(駐車場、資材置き場、利用できない建物及び空き地の合計)」は全国に43万件も存在するそうです。しかも、現在の遊休不動産のうち、「5年前も遊休不動産だった」ものは約29万件と7割近くに及ぶと言われています。
なぜ保有し続ける?
高度経済成長期からバブル期にかけて、日本産業の発展により日本国内でビル建設などの開発が進み、急激に土地の価値が高まりました。地価の高騰が著しい時代、「不動産は持っているだけで価値が上昇する」ことが当たり前だったそうです。その名残が今でも残っているのかもしれないですね。それが現在では、少子高齢化と供給過剰な再開発により不動産の価値はむしろ下落し、今の状況になっていると言えます。
不動産M&Aとは?
簡単に言うと、譲渡会社が所有する不動産の取得を目的として行うM&Aです。単なる不動産売買でなく、会社ごと買い取ってしまいます。例えば、以下のような人物がいたとします。
・とある事業を営む経営者(オーナー)は高齢となったが、親族や従業員に後継者がいない
・引退後の生活資金を確保したく、即座に現金がほしい
・会社で古くから都心の一等地に土地を所有するが、使い道がわからず、不動産会社にも依頼することに躊躇しそのままにしている
なぜ不動産M&Aがいいのか
売り手企業のメリット
事業の引継ぎをしてもらえる
後継者がおらず事業を継続できない。従業員の雇用確保じゃ取引先とのネットワークの継続にも役立ちます。
売却時の節税効果がある
一般的な不動産売却と比較し、売却時の所得税が異なります。
仮に地価が高騰している場合、地価の上昇分に譲渡所得が発生(譲渡価額―(取得費+譲渡費用))し、課税所得額として一定の税率がかかります。それに対し、M&Aであれば譲渡対象が株式のため不動産は簿価で計上が可能。つまり不動産の譲渡所得は発生せず、株式の譲渡益に対する譲渡所得20%のみとなります。
不動産を即現金化
保有する不動産を会社の資産ごとすべて同時に売却し、現金として得ることができます。また不動産仲介会社を利用する必要がなく、買い手を探す時間と手間、手数料がかかりません。
買い手企業のメリット
また買い手側のメリットも考えてみます。例えば、以下のようなことが言えます。
税制上のメリット
一般的な不動産売買で取得するより費用を抑えられます。不動産取得時には、不動産取得税や登録免許税といった税金が発生します。それに対し、不動産M&Aはあくまで対象株式の売買のため所有権が移らず、上記のような費用はかからずに済みます。
市場に回らない物件を手に入れられる
競争が激しく、土地が取得しにくい時代です。地元の不動産業者やネットに掲載されていない、穴場な物件を手に入れることができます。
結 論
やったほうがいい。
買い手、売り手双方で得する状態であるのであれば、不動産M&Aという手法をとるべきだと思います。。
ただし実際には、そもそもM&A自体があまり普及していない、事業を継続してくれる買い手を探すのが難しいといった問題がありますが、あくまで選択肢の一つとして検討してみてもいいのではないかと思います。
そのためにも、不動産M&Aを広く浸透させること、どういったメリットを享受できるのか等を理解してもらうことが大事だと思います。
※個人の見解ですので間違いは多々あると思います。