見出し画像

ふぐちり

 今回は、前回の続きです。
 好きで好きで堪らない女性に、どうにかこうにかアプローチしたい。しかし、自分にも自信がなくて、好意の伝え方が分からない自分が、金にものを言わせようとした話しです。

前回のお話しは、これ↓

 さて、その頃には、とりあえず出勤と退勤の時の挨拶に始まり、用もないのに用のあるふりをして、その子の部署に顔を出したら、無理感満載の会話をしたりして、ぎごちないながらもアプローチをする様になっていました。まさに薄氷を踏む思い。しかも、相手の子からは、職場の同僚以上の反応は貰えてなかったのですから、毎日が顔合わせて嬉しい反面、もどかしい気持ちでいっぱいでした。
 流石に一人では手にあまり、女慣れした職場の仲間にも相談したりもしましたが、間を取り持ってくれる様な有難い事はなく、
 「まぁ、頑張れ」
と言われただけでした。何をどう頑張ったら良かったんですかね

 とある時、用のあるフリをしてその子の部署で雑談をしていたところ、なぜか、ふぐちりの話しになりました。あの毒のある魚の河豚です。魚といえば、サバかサンマかシャケしか普段は食ってないので、滅多に食えない、というか食う用事のない魚です。だから、食べて見たい、という話しになったんだと思います。
 これを聞いて、当然のごとく、しめしめと思いました。これに誘えば、距離を詰めれるキッカケになると思ったのです。そこでふぐ料理の事をしらべてみると、ちょっと名の通った専門店でふぐ料理のフルコースを調べてみると、一人2万5000円とありました。結構いい値段というか、お高いです。当時はバブル時代だったので、こういうのが平気でありました。
 さて、ここで尻込みしなかったのは、やっぱりバブル時代で金回りが良かったのと、実家の母の教育が徹底していたからでしょう。これで上手いこといくなら、むしろ御の字といったところでした。

 気前の良いのは結構なことなのですが、問題は、その子と二人っきりでは、一体どうしたら良いのか分からない、という事でした。どうしたらも何も、一緒にふぐ食って、「これ美味しいねー」なんて話しすれば良いだけの事なのですが、それが分からない。一人だと失敗してしまうんじゃないかと不安なのです。
 そこで、その子の友達にあたる女性にも声を掛けて、一緒に来てもらう事にしました。ちなみにこの女性は、さっき出てきた仲間と付き合ってる人で、それとなしに自分がその子に好意を持ってる事も伝わっていました。3人分で7万5000円。大奮発です。

 でもって当日、3人してふぐ料理店に行き、あらかじめ予約してあったので、運ばれたコース料理を食べ、「これ、美味いっすねー」なんて言いながら、実は緊張しまくりで味なんかさっぱり分からない。目の前の女子二人がなんか盛り上がってるのを見ながら、なんとなく自分はそっちのけになってる様な感じを味わいつつ、終了。そのまま、ご馳走様でしたー、と解散。一人、とぼとぼと家路につきました。

 結局、奮発しはしたが、思いっきり的を外した感じです。その当時、「メッシー君」という、ご飯奢る事でしか女性の歓心をひけない弱者男性がいましたが、それ以下といっても良いかもしれません。というのは、メッシー君はワンチャンあった場合のその後のことを考えていたからです。(実際はほぼワンチャンありませんでしたが)
 しかし、ともあれ、店を調べて予約したり、案内したり、そういった行動力を発揮し始めたこと、どういう形であれ、割り勘などとみっともない事を言わずに甲斐性を見せた事、これだけは認めて良いかと思います。要は、やり方使い方が未熟だった訳です。

 ちょっと長くなりましたが、今回のnoteはここまで。この子との事は、次回で終わりです。思い返せば、格好悪い話しですが、いいねやコメントいただけると励みになります。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?