ハムレンとうしれん、マルシェに出店する その7(最終話)

その晩、ハムレンは妹のコハムに電話しました。


「もしもし、コハム?…今日はどうだった?」

「あぁ、今日こっちは雨で中止になっちゃった。屋外の青空マーケットだったからね。」

「あら、それは残念だったね。」

「うん…ハムちゃんは、上手くいったの?」

「まぁ、そうね。最初は緊張したけど、お客さんの温かさに救われたわ。得難い体験だったよ。」

「そう。良かったじゃない!」

「うん、まあね。」


ハムレンはふと、あのにらんできた女の子のことを思い出しました。

その、何となく浮かない感じを、勘のいいコハムは感じとって言いました。


「何?ハムちゃん、何かあったの?」

「あ、いえ…実は、私のことをにらんできた女の子がいたのよ。結局お人形買ってくれたんだけど…。」

ハムレンが思いきって話すと、コハムは明るく言いました。


「その子、きっとにらんでないわよ。…いまスマホやりすぎで目が悪くて、やぶにらみになってしまう子、多いんだって。」

「えっ?そうなの?」

「初対面で人をにらむような、そんな子、いないわよ!」

やけに説得力がありました。

ハムレンは気持ちがとてもホッとして落ち着くのを感じました。

「そうね、そうかも。ありがとう。」

「ううん。ハムちゃんが元気になって良かった!」

コハムは明るくそう言いました。


「お休みなさい。」

「お休みなさい、またね。」


電話を切ったあと、ハムレンはふと思い立って、バッグの中に入れておいた、ネコハタさんの絵を出しました。


「いけないいけない。忘れるところだった。」


そして絵を寝室の机に飾りました。


「絵があるって、いいわねぇ。今日は色々あったなぁ。うしれんにも、感謝だわ。」


その時、うしれんが寝室に入ってきました。

「もう遅いから、寝るよ〜。」

「はーい。お休みなさい!…今日は本当にありがとう。」

「うん。」


その晩、二人は泥のように眠りました。



2週間後の夜。

ハムレンとうしれんは、テレビの前に陣取ってました。


「そろそろ始まるね、ヤマノハラテレビ。りすれんから教えてもらったのはこの時間だったね。」

「どのくらい映っているのかな。」


ワクワクしながら待っていると、番組が始まりました。ヤマノハラのニュース仕立てで流れるようでした。


「…次の特集です。ヤマノハラのヤマダ中学校体育館でマルシェが行われました。」


「きたーー!」


見ていると、体育館の中がぐるりと映し出されました。


「あっ!ハムレンだ!」


ハムレンも小さく映りました。

そしてアナウンサーの声で

「地元野菜や、地元のクラフト作家たちの作品が並べられ…」

と流れた時、何人かの作品と共に、ハムレンのお人形も大きく映りました。


「あーっ!映ったぁ!」

「結構大きく映ったね。」


その後、観光協会の局長さんが、インタビューに応じていました。そういえば、お店にも来たかな。


テレビの放映は、ものの数分で終わりましたが、ハムレンたちは、まぁまぁ満足しました。


「マルシェにも出させてもらって、こうしてテレビにも映って。いいことだらけだね!」

「そうだね。…ハムレンはこの後、どうしたいの?」

「うん…りすれんからメールが来てて、ヤマノハラ駅前のお店で、お試しで出品しないかって。」

「そりゃいいね!」

ハムレンは嬉しそうに小さくうなずきました。



こうして夜はふけていきます。

この後、どうなるかはまだ分かりませんが、とりあえず無事出店できて、良かったですね!


ハムレンもおつかれさま。

うしれんもおつかれさま。




おしまい

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