ハムレンの甥っ子

うしれんとハムレンはどうぶつの夫婦です。


ある日ハムレンがSNSを見ていると、甥っ子のハムセイが写真を投稿していることに気づきました。

「あら?」

その写真には、可愛い女の子が。

その数日後にも、そのまた数日後にも。

「あらら?もしかして、彼女かな。」


小さい頃からハムセイを知っているハムレンとしては、嬉しいような寂しいような、なんとも複雑な気持ちでした。



その夜、夫のうしれんにも相談しました。

するとうしれんは

「温かく見守ってやりなさい。そんなに大事な人なら、向こうから話してくれるだろう。」

と言いました。


「そうね…色々聞きたいけど、そうするわ。」

それにしても…あのやんちゃ坊主がねぇ。

ハムレンは、ハムセイが小さかった20年前を思い出していました。



ハムセイは小さい頃は、可愛いけれど、とても生意気な子供でした。


ハムセイがまだ小学校低学年の頃です。


「ハムねえねえ、オレをパンチしてくれよ!」

「えっ!…いくよ〜!ハムパンチ!!」

パスッ!


「チッチッ、弱えなぁ」

「えっ、えっ?」

「もっと打ってみ。」

「生意気な〜!ハムパンチ!ハムパンチ!」

パスッパスッ…パスパスパスッ!

「へへっ、効かねえなぁ〜」

「ハムセイィ〜!…ハァハァ」



こんなこともありました。

ハムレンが村作りのゲームにハマっていて、ハムセイにも貸してあげました。


しばらくして戻ってきたゲームの中の村の木々が、すっかり切り倒されていました!


「ハ…ハムセイィィ〜!!」


大事に育てていた村をめちゃくちゃにされて、ハムレンは烈火のごとく怒りました。


ハムセイはまだ小学生で、家も離れていたので、母親である、妹のコハムにメールでその怒りをぶちまけました。


するとコハムは

「たかがゲームでしょ。そんなに怒らないでよ!そんなに怒ると、教育上良くないから!」

と、ぴしゃりと言いました。

「そんなぁ〜!」

確かに大人げないのはハムレンのほう。

ハムレンは結局泣き寝入りしました。



そんなハムセイも、中学生になると、口数も減り大人びてきて、女の子にモテるようになりました。


ハムレンも片思いばかりでしたが、たまにハムセイに恋バナしたりしてました。

ハムセイはその時ばかりは、真剣に話を聞いてくれました。


でもひとしきり話した後、ハムセイは決まってこう言うのでした。

「早く彼氏作りなよ、ねえねえ。」

「〜〜〜!」


ハムセイが二十歳位の時、ハムレンはうしれんとの恋に悩んでいました。


「ハムセイ。彼氏のうしれんさんは強引で…結婚式場も決めちゃうし、今度山登りに誘われてて。

でも、とても優しい人で…どうしていいかわからないのよ。」


「それはねえねえの気持ちが大事だよ。

結婚したくないなら、式場もキャンセルしちゃっていいんだよ。

ねえねえが幸せになれば、それでいいから。」


「ハムセイ…。」


そんなことを言っていたハムレンも、うしれんと結構幸せな結婚をして、ハムセイも家から独立して、都会のレストランで料理人になりました。



そんなことをハムレンは思い出しながら、ハムセイのSNS上の、彼女らしき女性を見つめるのでした。


「ハムセイも、皆に見せたくなるような、ステキな彼女を見つけたね。


ほんとにいい青年に育った。あのハムセイは。」



ちょうど今度ハムセイの働くレストランに、コハムとお母さんハムと行くことになっていました。

ハムセイも、きっと顔を見せてくれるでしょう。


子供がいないハムレンは、コハムの子供たちの成長が、とても楽しみでした。


いつか、ハムセイの方から話してくれる。

その日まで待っていようと、ハムレンは心に誓うのでした。



おしまい

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