ハムレンとうしれん、マルシェに出店する その4

いよいよマルシェが始まりました!

少しずつですが、お客さんも入ってきてます。


ハムレンは少し緊張してましたが、深呼吸して、明るい声でお客さんに呼びかけました。


「いらっしゃいませ!ハムレンのうさぎさん人形はいかがですか〜?いらっしゃいませ!」


年配のおばあさんと目が合いました。おばあさんはニッコリしてこちらに近づいてきました。


「いらっしゃいませ!」

「何を売ってるの?…ああ、うさぎさんだね。可愛いねぇ。」

「ありがとうございます!」

(やったぁ)

ハムレンは心の中で、ガッツポーズを取りました。


「ふうん…へえぇ…」

おばあさんはハムレンのお人形をひととおり見た後で笑顔で言いました。

「ありがとう!んじゃ、がんばってね!」


そして他のお店へ行ってしまいました。


あら〜。

(買わないのね…とほほ。)


一部始終を見ていたうしれんは言いました。

「今の人、買うと思ったのにね、残念。

でも、こっちをチラチラ見てる人もいるし、これからだよ!」

「そうかしら…ありがとう、うしれん。」


ハムレンは気を取り直してもう一度声かけを始めました。


「いらっしゃいませ!うさぎ人形はいかがですか〜」


「ハムレン!」

声のする方を見ると、りすれんでした。

アリクイの奥様と一緒のようです。


「どーお?調子は。」

「全然よ〜。」

「そうなんだ、でもまだまだ始まったばかりだからね!ドンマイ!」

「ありがとう。」

「それはそうと、この人はアリクイのアリイさん。ヤマノハラ観光協会の人よ。」

紹介されたアリクイさんは、ハムレンに挨拶しました。

「どうも〜、ハムレンさん。アリイです!」

「あ、どうも。はじめまして。」

「私の身に付けてるブローチやストール、みいんなヤマノハラのアーティストのものなのよ!」

「はぁ、よくお似合いです。」

「あなたのお人形もとても可愛いわ!…そうね、3つちょうだい!」

「えーっ!」

ハムレンはびっくりしました。

「ありがとうございます!」

「良かったね!ハムレン!」

りすれんも嬉しそうに言いました。

「アリイさんの、見る目は確かよ。」

「そうね…。3つで900円になります。」

そして、お手製の袋に入れて、リボンをかけて手渡しました。

「まぁ!素敵なラッピングね!」

「ありがとうございます。」


そしてりすれんとアリイさんは他に行ってしまいました。


ぼーっと見送るハムレンに、うしれんが言いました。

「ああして、観光協会の人は、お義理で買ってくれるのかね。でも、売れて良かったね。」

「そうね。有難いことね!」

ハムレンは深呼吸して、笑顔を作りました。

「よおし、がんばるぞぅ!」


「いらっしゃいませ!」

「おっ!人形売ってるよ。」


仲の良さそうなネコのカップルが立ち止まってこちらに来ました。見たところ、30代くらいでしょうか。

「いらっしゃいませ!彼女さんにおひとついかがですか〜?」

「うーん、ちょっと見せて。あれ?紹介文がある。あなたはハマサキ市出身なんですね…それじゃヤマノハラは田舎に感じるでしょう。」

「そ、そんなこと…。ちょっと交通の便は悪いけど、いいところだと…。」

「結婚してヤマノハラに移住、とあるけど…」

「あ、あぁ、私の場合、引っ越しですよね!」

ハムレンはてへへ、と笑ってごまかしました。


ネコの男性は、はははと笑って

「今日は彼女に連れてこられたんだけど…ひとつお土産に買おうかな。」

「えっ?…は、はーい!300円です!」

ハムレンは、丁寧にラッピングして渡しました。

「ありがとうございます!」

ネコの男性はハムレンに笑って歩いていきました。女性のほうもハムレンに軽く会釈したようでした。


「うしれん!売れた!売れたよ!」

「良かったね、ハムレン!見ず知らずの人に、ひとつ売れたね。」

「うん!」


自分が作ったものが売れる、認められる、というのは、なんてうれしいことなのでしょう。


ハムレンは喜びを噛み締めていました。

その後も、弾みがついたのか、2つ、3つと売れていきました。


「ありがとうございます!」

お客さんにお礼を言ったハムレンに、うしれんが言いました。


「さぁ、ハムレン。そろそろお昼だよ。そこの売店で酒饅頭といもの煮ころがしを買ったから、パンのお弁当と一緒に食べよう。」

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