ハムレンとうしれん、マルシェに出店する その5

「うわぁ!ありがとう!」


ハムレンは酒饅頭をうしれんに半分分けてもらって、美味しそうに食べました。

いもの煮ころがしの甘じょっぱさも、パンのお弁当と合う合う。


「美味しいね。」

「美味しいね。」


あっという間にペロリと完食しました。

そんなハムレンに、うしれんは言いました。


「ハムレン、他のお店も見ておいで。その間、うしが店番しとくから。」

ハムレンの顔がパッと輝きました。

「ありがとう!うしれん!」

うしれんに店番をお願いして、ハムレンは他のお店巡りに出かけました。


(さてと、どこから回ろうかな。なんかワクワクするわ。)


隣のクラフト雑貨のお店には、大きな松ぼっくりに人形をあしらった、クリスマスっぽい素敵な飾りがあったので、それを買いました。


雑貨屋さんのおしゃれなお姉さんが、この飾りの松ぼっくりは、屋久島から取り寄せたものだと、お話してくれました。


「へぇ、そうなんですね!」

「カワムラといいます。ハムレンさん、よろしくね。」

ハムレンは名刺を頂きました。


「ハムレンさんは、お人形作家さん?」

「えっ、えーっ?そんなぁ。

趣味でやってたのをりすれんさんに誘われただけです。」

「そうなんですね。観光協会もいまお試しでアーティストを集めているのを知ってますか?」

「えーっ?そうなんですか?」

興味があったら、やってみたらいいですよ、とカワムラさん。

ハムレンは、何だかすごい情報を聞いてしまったと思いました。



その隣はドーナツ屋さんでした。

見たところ、このお店が一番人気のようでした。

ハムレンも、プレーンとチョコのドーナツを買いました。うしれんへのお土産です。


(でも、うしれんはいつも私にも分けてくれるけどね…えへへ。)


ハムレンは、マルシェを順繰りに回って、作家さんとお話したり、陶器のお皿や野菜を少し買ったりしました。


(大分散財しちゃったわねぇ、いけないいけない。)


そして、ハムレンたちの真向かいでやっていた、絵のお店に着きました。


(何かここ、気になってたのよね…。)


センスよく並べられた絵は、ネコやどうぶつ、鳥などがメインでした。その前には、おしゃれなベレー帽を被った印象的な瞳のネコの女性が立っていました。


(私と年が近いのかしら…?)

そんなことを考えていると、ネコの女性が話しかけてきました。


「こんにちは。」

「あ、こんにちは。」


ふっと紹介文を見ると


ネコハタ ヒロミ 判画家


とありました。


「お店、素敵ですね。」

「ありがとうございます。これ、消しゴムはんこなんですよ。」

「へぇ〜、凄い!…それで判画家?」

「そうなんです。私の造語ですけどね。」


ハムレンはすっかり感心しました。

「私じゃなかなか…こういった発想は出ませんもの。すごい素敵ですね!」

「ありがとうございます。」


ネコハタさんは、名刺を渡してくれました。

ハムレンは嬉しそうに受け取りました。

「よろしくね、ネコハタさん!」

「よろしくお願いします、ハムレンさん。」


「あ、インスタやってらっしゃる?」

「ええ。あ、インスタは名前が違うので、書きますね…。」

ネコハタさんは書くものを探しました。

「ええと、この辺に…?」

「あ、私、ボールペン持ってますよ〜。」

「…あぁ、ありました。…ボールペンは私、使わないんです。書き味が苦手で…。ごめんなさい。」

ネコハタさんはそう言うと、鉛筆で名刺にハンドルネームを書き入れました。


ハムレンはちょっとびっくりしましたが

「あぁ、こちらこそごめんなさいね。知らなくて。」

と答えました。


(ネコハタさんは、繊細なんだなぁ。私は書ければ何でも書いちゃうけど。)


逆に、何だかその感覚に感心しました。


「ひとつ、買って行こうかしら。…この鳥さんがいいわ。」

「ありがとうございます!500円です!

それはとんびなんですよ、ヤマノハラの鳥なんです。」

「へぇ〜。ありがとう!大事にします!」

そして、ネコハタさんと笑顔で別れました。



こうしてハムレンは、マルシェを満喫して、ハムレンショップに戻ってきました。


「ただいま〜。店番ありがとう!うしれん!」

「うん、お帰り。」

「随分油を売ってしまってごめんね。お土産あるよ。」

「お、ドーナツか。後で食べようね。」

「うん!少しは売れたかな。」

「売れてないよ。」

「そう(やっぱり)。あと少し。売ってしまいましょう!」


休養十分のハムレンは、気合いを入れてお店に立ちました。



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