ハムレンとうしれん、マルシェに出店する その6

「いらっしゃいませ〜!」


ハムレンのお人形は、午後もぼちぼちとですが、売れていきました。


中にはハムレンのお人形をとても気に入ってくれる人もいました。

「かわいい!かわいい!」

「あなたの世界観、大好きだわ!」


「ありがとうございます!」


そんな嬉しい感想が直に聞けて、ハムレンはとても幸せな気持ちを感じながらお礼を言いました。


(がんばってお人形を準備した甲斐があったわ。)


思わず笑みのこぼれるハムレンでしたが…。


「いらっしゃいませ〜…」


「!!」


ハムレンのお店に、若いお母さんと小学生くらいの女の子の、うさぎの親子が来ました。


優しそうなお母さんの後ろから、女の子がめっちゃハムレンをにらんでます!


(あぁ…子供…!)


ハムレンは実は子供が苦手でした。

昔、子供の頃、周りの子供たちにいじめられたことがあるのです。


(ひるまないで…ひるまないでハムレン…!かわいらしいうさぎさんじゃない。あぁ、でも…!)


そんなハムレンの気持ちを知らずに、お母さんうさぎがハムレンに言いました。


「このこ、お人形、ほしいみたいです。」

「えっ?」


お母さんうさぎは女の子に言いました。

「ほら、どれにする?」

女の子はうさぎさん人形のひとつをじっとにらみつけました。

(あ…ほしいのね。)


「すみません、これ下さい。」

「はい。ありがとうございます!星空模様のうさぎさんですね!」


ハムレンは丁寧にラッピングして女の子に手渡しました。

女の子は黙って受け取りました。


「あら、ありがとうは?」

「…」

女の子は黙ったままでした。


「いいんですよ。」

と、ハムレン。

「マルシェ、楽しんでって下さいね!」


うさぎの親子が行ってしまってから、ハムレンは少しため息をつきました。


(あ…私ったらため息なんかついて。もっとマルシェを楽しまなきゃ…。)


うしれんが気づいて言いました。

「どうしたの、ハムレン?」

「あ、何でもないわ。」

「そう?あ、お客さんだよ。」

「いらっしゃいませ!…あら!」


なんと、真向かいのお店から、ネコハタさんが来てくれました!


「ハムレンさん、作家さんだったんですね。」

「えっ、いえ…趣味でやってて…。」

「わぁ!かわいい!ひとつ下さいな。」

「ありがとうございます!」


「これは、雪うさぎのゆきちゃんです。」

「ありがとうございます!大事にします。」


そう言って、嬉しそうにネコハタさんは帰っていきました。


もしかしたら、さっき買ってあげたから、そのお返しかもしれない…それでも作家のはしくれとして認められたような気がして、ハムレンの心は温かい気持ちで溢れていました。


(またどこかで会えるかなぁ…。)




さて、色々あったマルシェももう少しで終わり。

りすれんがやってきて言いました。


「そろそろ終わりです。少しずつ片付けて下さいね。…ハムレンのお人形、大分減ったね。」

「ありがとう!完売はしなかったけど。ドーナツ屋さんは完売して、先に帰ったものね。」

「まあね。でもハムレンも初めてにしては売れたほうじゃない?楽しかった?」

「えっと、まぁ。そうね。」

「そっか…また声かけさせてもらってもいいかな。」

「え?」

「あ、よく考えた上でいいのよ!また連絡するね!お疲れ様!」

りすれんは忙しいのか、他のお店に行ってしまいました。



片付けをしていたうしれんが、後ろから声をかけました。


「ハムレン、今日は頑張ったね。お疲れ様!」

「うしれん、ありがとう。お疲れ様!」

「また、こんな機会があるのかな。…うしはハムについていくよ。」

「まぁ、ありがとう!…そうね、なかなかできないことを経験したものね。楽しかったわ。」


二人は荷物を車に載せて帰りました。

疲れたので、夕飯はスーパーのお弁当にしました。


⭐次回、最終話です。

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