ポイント制
恋をするとポイントが貯まる仕組みになった。自分を磨けば磨くほどお金がかかるからだ。溜まったポイントで美容室に行き、ファッションを勉強した。失恋をした場合でもポイントだけは失効しない。恋をしている間に貯めたポイントは1人になった時にやけ食いするのにも使っていいし、最後まで諦めないで頑張った自分に一人旅をプレゼントしてもいい。
片思いで終わりにした場合には、貯まったポイントに鍵をかけてもよかった。一度鍵を預けておいて、完全に忘れなくても良いようにそう決められた。人を愛するときにはエネルギーをたくさん使うので、フルハートパワーポイントととして、祖先が作ってくれたシステムだった。
貯まったポイントはお金に変えることが多かったが、同じポイントを有するもの同士でプレゼントし合うことも出来た。自分の恋が足踏み状態にある時に、友達にあげて楽しんできてもらうこともできる。
変に膨らんでいく残高を見ていると虚しくなるから、少しだけ安心できる。それに人に善意を施すと一時的に自分への満足度があがる。恋がうまくいかない時に自分を少しでも好きでいる方法として。
恋愛は中々前に進まないのが普通だ。カップル成立とばかりはいかない。膨れ上がったポイントを盗んで売る人が現れた。お金と同様に使えるのだからそう考えても無理はない。彼らは自分でポイントを増やす事はしない。純粋に生きるより捕った方が楽だ。
そこで世界は二極化する。
豊かさは心の中から湧き出るものであって誰からも盗まれたりはしない。盗人なんて怖くない人々。
楽して生活を盛り上げる、そういうお金そのものを手に入れていることが豊さであって人から取り上げられたら尚良いという人々。
泥棒は盗めば満足だった。だって満足そうな人達の持ち物を奪ったのだから握りしめた戦利品は自分を幸せにするに違いないと。
だけど違った。被害者は誰一人惨めになんてなっていない。。あの幸せそうな顔にどうしても近づけない。
どうしたら奪える?あいつらは何を笑っている?
どこに隠している?
ついに泥棒は痺れを切らしナイフを持って幸せな人間を追いかけ始めた。自分には見えない、それがなんだかもわからない。とても悔しかった。
私はそこで目が覚めた。殺される恐怖で汗をかいていた。同時に殺しそうな寂しさも持っている様な気がした。
小説家になろう、初期作品です。
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