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第96回アカデミー賞期待の作品紹介No. 2「バービー」

AWARDS PROFILE Vol. 2

バービー

RT: 88%
MC: 80
IMDb: 7.1

 ここは全てがハッピーで、全てがピンク色のバービーランド。このポジティブな場所で、普通で典型的なバービーは、多種多様なバービーやあくまで添え物のケンと幸せに暮らしていた。死について考えを巡らすようになるまでは...。

 これまで、監督作「レディ・バード」と「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語」を成功させてきたグレタ・ガーウィグ監督にとっても、アメリカにとっていろいろな意味で象徴的な人形「バービー」を映画化することは、困難な仕事だったに違いない。監督は公私にわたるパートナー、ノア・バームバックと共に、現代社会を皮肉るメタ的なバービーの世界を脚本に抽出した。主人公の典型的なバービーを演じるのはマーゴット・ロビー(製作も兼任)。イマイチ冴えないケンにはライアン・ゴズリング。この二人を中心にバービーランドと人間世界に豪華なキャストが集まった。イッサ・レイ、ケイト・マッキノン、アレクサンドラ・シップ、エマ・マッキー、シム・リウ、キングズリー・ベン=アディール、チュティ・ガトゥ、マイケル・セラ、エメラルド・フェネル、アメリカ・フェレーラ、ウィル・フェレル、リー・パールマン...。出番の大小に関わらず、みんな楽し気に己のコメディセンスをぶつける。才能という才能が結集した結果、今年の夏どころか、今年一番の大ヒット作となった。バービーランドと人間世界をまたぐ旅路の中で、バービーは否定や拒絶、差別などの事象に初めてぶつかることで、新たな生き方を見出す。カオスでコミカルながら幾重にも織り込まれたストーリーは、何度見ても新たな発見があることだろう。とある母娘のやり取りに涙。主演ロビーは、バービーという現実離れしたキャラクターに魂を吹き込み、思い悩み迷う人間らしさ全開の人形を好演。ゴズリングは、ケンのバービーに対する空回りした想いを真面目に突き詰める。真面目であればあるほど面白おかしい("I'm Just Ken"、"Push"歌唱シーンに爆笑)。ケンの旅もまた、現代社会の、そして男社会の問題点を炙り出す。他にも、フェレーラが女性と母の叫びを代弁し、最後はパールマンが優しく背中を押す。キャストは最&高だ。ピンクでプラスティックなバービーランドを支える、エンドレスにポップな美術セットと、オタク心をくすぐる凝った衣装の数々も胸躍る。サントラも聴いているだけで楽しい。非常にモダンで的確なテーマを持った破格のエンターテイメント映画誕生。

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