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葛藤を抱えながらも歩幅を合わせる頼れるサポーター~ジョディ・フォスター~

ACTORS PROFILE Vol. 36

ジョディ・フォスター
「ナイアド ~その決意は海を越える~」


1962年アメリカ生まれ。葛藤を抱えながらも歩幅を合わせる頼れるサポーター。

 ボニーはダイアナの唯一無二の親友だ。お互いにスポーツマンであり、ダイアナの言い出したら聞かない頑固な性格もちゃんと受け止める。それでも困った。ダイアナが、60歳になるというのにキューバとフロリダ間の遠泳に挑戦したいと言い出したのだ。

 ▲しかもボニーにコーチとしてついていて欲しいという。もちろん断るし、無謀だと言ってやめさせようとする。結局、ボニーの思いとは全く逆の展開になっていくのだが。ボニーの役割は重要だ。ダイアナの健康状態をはじめ、天候、危険な海の生き物に目を配らなければならない。最終的に挑戦を続行するか否かの決定権も一応持っている。海は厄介だが、それに負けないくらいダイアナも厄介だ。傲慢で、自信家で、ボニーの心配は尽きない。その自信で無理を言っては協力してくれる周囲の者と衝突を繰り返す。

 ▲だからフォスター演じるボニーの存在は大きい。ナイアドを理解しながらも、命を落としかねない行動は避けさせる。チームが険悪なムードになるときは潤滑油となる。冷静さが求められるコーチとしての絶妙な距離感が最高の鍵となるのだ。

 ▲ダイアナの挑戦を優先するか、命を優先するか。フォスターが体現する、葛藤を持ちながらも優しく愛の溢れる演技が何よりも最高で、作品を生きたものにする。おかげで一人の偉業とされそうな挑戦が、チームワークによる賜物であるメッセージに火を灯す。


ジョディ・フォスターとアカデミー賞

第59回アカデミー賞(1976)助演女優賞候補:タクシードライバー

 ジョディ・フォスターの存在に世界が衝撃を受けたのは1976年、彼女が14才の時だった。「タクシードライバー」で思いがけなくしてデ・ニーロ演じるタクシードライバーと親交を深める、身体を売って金を稼ぐ少女アイリスを演じた。モヒカンのデ・ニーロや、ロン毛タンクトップのカイテルといった厳つさ満点の男たちを前に動じない姿は目に焼きつく。いくつかの批評家賞にも選ばれたが、オスカーでは「ネットワーク」のベアトリス・ストレイトに敗れた。ストレイトは劇中5分ほどしか出演しておらず、オスカーの歴史上最短の出演時間でオスカー受賞を果たした俳優として記録に残っている。

・第61回アカデミー賞(1988)主演女優賞受賞:告発の行方

 「タクシードライバー」の衝撃から12年後、子役から大人の俳優へとスムーズに成長したフォスターが「告発の行方」で挑んだのは3人の男たちから性暴力を受けた女性サラの役だ。身も心も傷つきながら、バーで起こった事件をめぐり裁判で戦う勇気あるパフォーマンスをみせた。30年以上前の作品だが、伝えるメッセージは今も昔も重要だ。

・第64回アカデミー賞(1991)主演女優賞受賞羊たちの沈黙

 クラリス・スターリング。ホラー史に残る作品のヒロイン。「羊たちの沈黙」で、フォスターは連続猟奇殺人事件の犯人を追うFBI訓練生を演じた。ホプキンス演じる狂気の精神科医ハンニバル・レクター博士の助けを借りて犯人を追うと共に、博士との面会で徐々に、彼女の心の迷宮も浮かび上がらせる重層的な演技をみせる。作品を単なるサスペンスホラーの枠を超えたものにする一つの大きな要素を担った。サランドンデイヴィスダーンミドラーといった力強い顔ぶれを抑えて3年のスパンでもう一つのオスカーを獲得した。

・第67回アカデミー賞(1994)主演女優賞候補:ネル

 社会と隔絶された山奥で独自の言語で育った女性ネルを演じたフォスター。実在の出来事に着想を得た舞台劇をフォスターが設立した製作会社で映画化した。彼女はプロデューサーとしても携わるパッションプロジェクトだった。映画自体の評価は伸び悩んだが、フォスターの演技は賞賛され、自身4度目のオスカー候補になった。この年の主演女優賞に輝いたのは「ブルースカイ」のジェシカ・ラングだった。5度目の主演候補で待望の受賞となった。奇しくもフォスター、ラング共に以降、オスカー候補にはなっていない。


P.S.ひとまずこれで俳優紹介はおしまい。もし紹介してない俳優がノミネートされたら追加で紹介します。

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