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第96回アカデミー賞期待の作品紹介No. 19「プリシラ」

AWARDS PROFILE Vol. 19

プリシラ

RT: 82%
MC: 78
IMDb: 7.1

 14歳のプリシラ・ボーリューはパーティー会場で一際、カリスマと異彩を放つ男エルヴィスと出会う。世界を巻き込むロックンロールのスターである彼と恋に落ちたことで、プリシラの人生は信じられない規模とスピードで移り変わっていく…。

 昨年公開の「エルヴィス」に引き続き、今作もプレスリー家にまつわる物語が展開される。ただ今回は、妻プリシラの目線で。バズ・ラーマンが打ち上げ花火のようなド派手さで彩った「エルヴィス」とは対照的に、今作はそのド派手な人生を生きたエルヴィスをすぐ隣で目撃したプリシラの心のうちを描く抑えた作品になっているそうだ。1985年に出版されたプリシラ・プレスリーの回顧録「Elvis and Me」を基に、女性の繊細な機微をポップに描くソフィア・コッポラがメガホンをとる。プリシラを演じるのは、ケイリー・スピーニー。エルヴィスを演じるのは、ジェイコブ・エロルディ。近年、頭角を現している若き二人の演技にも注目が集まっている。ヴェネツィア国際映画祭で初公開されて、監督にとって「ロスト・イン・トランスレーション」以来の素晴らしい作品と高評価を受けている。コッポラらしいタッチでセレブの心の闇を分析する心痛ましい作品であるとの評。プリシラが体験した、十代の同世代の憧れの人との夢のような生活の実像をスケッチする。スターに愛を与えるために家に留まり、スターの帰りを待つ存在だった彼女が待つことを止めるまでの心の旅路を静かに、でも凄まじい重みで描く。そのユニークで正直な視点は、そこに自分から留まっているのか、他人から囚われているのかの狭間のグレーな空間を描く。まだ子供だった彼女が、名声が生み出す騒乱の中で、女性へと成長していく過程は、まるで日記を読んでいるかのよう。結末に向けて盛り上がる伝記映画の典型を打ち捨てて、プリシラとエルヴィスの関係性は完全にすれ違っていく。エルヴィスとの善悪の一言では言い切れない関係性にも注目だ。主演スピーニーは14歳から27歳までのプリシラの年代ごとの変化を細やかに演じ分け、ヴェネツィア国際映画祭で女優賞に選ばれている。エロルディもその存在でスクリーンに電流を走らせる。猛烈な恋に落ち、夢の中を生き延びたプリシラが感じた夢への幻滅は、紛れもなく共感を呼ぶことだろう。4月12日に公開予定。

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