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捻くれ中年教師の哀愁をしかとご覧あれ〜ポール・ジアマッティ〜

ACTORS PROFILE Vol. 21

ポール・ジアマッティ
「ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ」


1967年アメリカ生まれ。捻くれ中年教師の哀愁をしかとご覧あれ。

 全寮制寄宿学校で古典西洋学を教えるポール・ハナムは、学校中から嫌われている。そんな彼は冬休み期間、帰省しない生徒の監督のため学校に残ることに。そこで問題を抱えた生徒と食堂長と共に、一冬を過ごす。

 ▲ジアマッティは、いわゆる「無冠の名優」の一人だ。主演、助演に関わりなく、役が善人、悪人に関わりなく、作品にいたら安心の名パフォーマーだ。とある年のアカデミー賞の司会曰く、「P・ジアマッティは素晴らしい俳優だ。「それでも夜は明ける」で黒人を嫌う奴隷商人を演じた後、「ストレイト・アウタ・コンプトン」でイージーE(ラッパー)の葬式で涙を流してた。」と、ジョークを交えて語られるくらい幅の広い俳優なのだ。助演として「それでも夜は明ける」や「ストレイト・アウタ・コンプトン」「スーパー・チューズデー」「ジャングル・クルーズ」等々、伝記映画からアクションものまでジャンルを問わない作品選びながら、ちゃんと力強い印象を残す個性は稀有なものだ。彼唯一のオスカー候補に結びついた「シンデレラマン」も助演だった。

「サイドウェイ」より。メルローなんて絶対飲まない。

なんといっても他のキャストとのケミストリーを生み出す力が抜群なのだ。主演作の「アメリカン・スプレンダー」や「WIN WIN」「プライベート・ライフ」、そして「サイドウェイ」。どれもこれもジアマッティが主演ながら、ちゃんと他のキャストたちの嬉々とした顔がすぐ浮かび上がる。主演にもかかわらず出過ぎず霞まずな存在なのがすごい。

君は落第だ。

 ▲「サイドウェイ」以来のタッグとなるアレクサンダー・ペイン監督作の「ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ」で、ジアマッティは全校から嫌われている、ひねくれ者の中年教師ポールを演じている。生徒を演じるドミニク・セッサと食堂長を演じるダヴァイン・ジョイ・ランドルフと共に、親密にして見事なトライアングルを創り上げているという。周囲を寄せ付けない孤独な男の心の中に生まれる小さな希望の光を見逃さない、しみじみとしたパフォーマンスに胸打たれる。

 ▲キャスト全員を際立たせながら、ポールという頑固なキャラクターの過去と現在と未来を感じさせるジアマッティの渋みがきらりと光る。


ポール・ジアマッティとアカデミー賞

・第78回アカデミー賞(2005)助演男優賞候補:シンデレラマン

 2003年に「アメリカン・スプレンダー」、2004年に「サイドウェイ」と強力な演技を連発していたもののオスカーではスルーされまくったジアマッティ。2005年のこの年に「シンデレラマン」でラッセル・クロウ演じるボクサーのマネージャーを演じて、オスカー初ノミネートを果たす。弁が立ち、時には主人公を鼓舞するその演技は助演の鑑と評判を得た。全米映画俳優組合賞を受賞するなど、オスカーまであと一歩まで迫ったが、受賞は「シリアナ」のスター俳優、ジョージ・クルーニーに渡った。ほぼ主人公のような立ち回りだったが、いつもの華々しいオーラを消し去り、中東の混沌とした政情に足を踏み入れるキャラクターを好演していた。


祝!ゴールデン・グローブ賞主演男優賞(ミュージカル/コメディ)受賞!

祝!ブロードキャスト映画批評家協会賞主演男優賞受賞!


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