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第96回アカデミー賞期待の作品紹介No. 8「哀れなるものたち」

AWARDS PROFILE Vol. 8

哀れなるものたち

RT: 93%(現時点)
MC: 92(現時点)
IMDb: 8.5(現時点)

 若きベラは自殺を図ったものの、彼女の保護者にして科学者のバクスター博士の手によって蘇らせられる。手術により子供のように無邪気になった彼女は、もっと世界を知りたいといかがわしい弁護士ダンカンと駆け落ちし、共に大陸横断の旅に出る。その旅は彼女の平等と解放を探求するものとなる...。

 1992年に刊行されたアラスター・グレイによる同名小説を基に、ギリシャが生んだ鬼才ヨルゴス・ランティモスが監督を務める。脚本は、監督と前作「女王陛下のお気に入り」でタッグを組んだトニー・マクナマラが担当する。体は大人、頭脳は子供の主人公を演じるのはエマ・ストーン。彼女と旅を共にする弁護士ダンカンにマーク・ラファロ、狂気の科学者バクスター博士にウィレム・デフォー、そしてラミー・ユーセフ、ジェロッド・カーマイケルも出てるよ。奇妙にしてタイムリーな今作は、ヴェネチア国際映画祭でお披露目されるやいなや、映画祭一の大絶賛で迎えられ、そのままの勢いで最高賞の金獅子賞をゲットした。とめどないアイデアの洪水と化したすべてのフレーム、すべてのイメージ、すべてのジョーク、すべてのパフォーマンスが終わりなき興奮を誘う。ぶっ飛んだ原作からファニーで、気まぐれで、セクシーな部分を抽出しつつも、その中にある反抗的精神は大事にされる。下品、猥褻、不条理、ウィットに次ぐウィット、けばけばしいほどド派手な悪夢と夢の狭間のような世界観、さながらパイ投げ合戦のようなアイデアの乱痴気騒ぎをこの過激なファンタジーの中に封じ込める。それらが主人公ベラの成長の旅路に計り知れない力をもたらす。エマ・ストーンは恐れ知らずの足取りで、止めることの出来ない好奇心を持つ摩訶不思議キャラクターのマインドに入り込む。大胆不敵そのものの演技にアゴが外れる。ラファロはその爆発的なコメディセンスをぶん回し、デフォーは不気味にデフォフォする。モダンで風変わりで、でも決して見せかけに終わらない、スリリングでユニークな今作は、ランティモスの作品の中でも圧倒的なベストとして大歓迎されている。「フェミニスト的好色フランケンシュタイン」「アブサンをひっかけたバービー」とも形容されるベラのジャーニーを目撃せよ。来年1月26日公開。

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