見出し画像

親なきあとに備えて〜成年後見人制度と信託制度

FP2級、相続終活専門士の母365_です。
私の息子3歳には、知的障害・発達障害・内部障害があります。

親なきあとの記事をいくつか書いてきましたが
今回最も気になっていた、成年後見制度と信託制度について見てみたいと思います。

うちは使わなければならない確率が高そうです。
そして安易に使うと後悔しかねないこわい話が検索するといっぱい出てくる・・・
そんな理由からこのnoteを書いてみます。

みなさんはどんなイメージをお持ちでしょうか。
今回は、ざっとイメージを掴む目的でこのnoteを書いてみたいと思います。


2つの制度の起源

成年後見制度
日本にあった禁治産・準禁治産制度(1896年〜2000年)に代わるものとして、ドイツの世話法、イギリスの持続的代理権授与法を参考に見直されたものです。
禁治産・準禁治産制度は、心神喪失の状況にある人を家族などが裁判所に請求することで「禁治産」と宣言され、戸籍に「禁治産」と書かれ、後見人が必ず1人付き、法律行為を常に取り消すことができました。
「禁治産」の言葉の意味は、「財産を治めることを禁ずる」ということであり、家制度の廃止された日本国憲法下での民法では合致をしないこと、国家権力により私有財産の処分を禁ぜられ無能力者とされること、禁治産者と戸籍に記載されること等が差別的であるという批判を受けている制度でした。鑑定を引き受ける医師が少ないなどの問題もあり、成年後見制度に置き換わりました。

信託制度
「ある人が、自分の大切な人のために、信頼できる人に自分の財産を託して管理や運用をしてもらう」という制度です。
イギリスで11〜13世紀に行われていた慣習法を起源とすると言われています。十字軍の遠征で国を離れなければならなかった時代、離れている間、領地の管理を信頼する第三者に任せて収益を家族に給付してもらい、戦地から戻ると領地を返還してもらうユースという制度が行われていました。この制度を起源として、現在の制度は2006年の信託法改正でできたものです。


どちらも「財産管理」の役割がある

さて、現在の制度の話をしていきます。
成年後見制度も、信託制度も、
「自分の財産を自分以外の人に管理してもらう制度」である点は同じです。
しかし管理の仕方が異なります。

成年後見制度の財産管理

成年後見制度では、障がいのある子本人の財産を全て管理します。
本人の名義はそのまま、変更しません。
家庭裁判所の監視のもと、基本的な考え方として財産を減らさないような方向で管理します。つまり運用するとか投資するとか積極的なアクションができません。

信託制度の財産管理

信託制度では、契約によって管理する財産を定めるため、
一部だけ管理することができます。
名義は受託者(管理する人)に変更します。
管理するための口座を新たに作って、受託者の財産とはきちんと区別して管理します。
家庭裁判所の関与がないので、自由度が高く管理することができます。たとえば投資マンションを購入することや借入をすることが可能になります。


管理体制の違い

成年後見制度には、法定後見と任意後見がある

法定後見は
すでに判断能力が低下してしまっている場合
に裁判所が選んだ弁護士や行政書士などの専門家が後見人になります。親や親族が立候補することは可能ですが、あくまで決定するのは家庭裁判所になります。そして希望が通らなかったからといって、じゃあ辞めておきます、と取り下げることはできません。

任意後見は、
将来判断能力が低下した時に備えて元気なうちに
後見人を選任しておきます。
親・兄弟・親族が後見人になることが可能です。
ただし後見人の上に、任意後見監督人を裁判所が選んで必ず付け、不正が行われていないかチェックをする体制になります。
任意後見監督人は申立書に候補者の記載欄はありませんが、原則として家庭裁判所は任意後見監督人候補者に関する本人の陳述を聞き、また同意の確認をすることになっています。任意後見監督人の資格については、法律上特に制限はありません。親族や知人がなることができます(ただし任意後見人の配偶者、直系血族、兄弟姉妹はなれません)。
※少し脱線しますが
任意後見は判断能力があるうちに約束をしておく形なので、使えるのは「軽度の子」に限られます。

信託は、成年後見制度のように監督人はつかない

信託は、家庭裁判所と関わらずに管理することができます。
受益者保護のため、契約によって「信託管理人」「受益者代理人」を決めておくことができます。
信託管理人とは、受託者を監督する人、
受益者代理人とは、受益者のために、受益者に代わって受益者の権利を行使する人をいいます。


管理対象の財産は異なる

ともに財産管理をできる制度ではありますが、対象財産が異なります。

成年後見制度は
全ての財産が管理可能となります。

信託制度は、
金銭的な価値のあるものだけ管理できます。
お金、不動産、有価証券、貴金属、美術品、債権、特許権などの知的財産権は法的には管理できます。
(実際に信託するには、受託者に管理できる状況が整っていることが必要です)
管理できない財産の代表的なものは、「年金」「農地」です。


信託は「身上監護」ができない

成年後見制度は「財産管理」・「身上監護」の役割があります。
それに対して信託は「財産管理」しかありません。

「身上監護」とはなんでしょう。
これは、介護保険の申請、福祉サービスの契約、病院の入院手続きや施設入所手続きなどを指します。信託ではこういった医療・介護・福祉関係の手続きをしてあげられないのです。


契約の終わり方

成年後見人は、被後見人が亡くなるまで続きます。
信託は契約によっていつ終わるか自由に決められます。


コストについて

成年後見制度のコスト

初期費用➕ランニングコストがかかります。

初期費用
専門家への報酬を20万円程度とした場合、実費を含めるとこれくらいかかります。
法定後見・・・21〜25万円程度
任意後見・・・22〜27万円程度

ランニングコスト
●法定後見の場合

成年後見人へ支払う報酬の目安です。
被後見人(障害のある子)が亡くなるまでこの費用がかかってきます。

画像は新宿区社会福祉協議会HPより

●任意後見の場合
任意後見人に親族がなることで報酬は0円にすることが可能となりますが
その任意後見人の上に任意後見監督人が付きますのでそこにランニングコストがかかってきます。こちらも被後見人が亡くなるまで費用がかかります。

画像は新宿区社会福祉協議会HPより

信託のコスト

信託は初期費用のみで済みます。
財産額や信託によって何を実現したいかによって金額は異なりますが
例として自宅と預金を信託しておきたい場合では一般的に30〜60万円ほどが相場になります。


成年後見制度の要注意点

成年後見制度は、
仮に後見人との相性が悪くてもチェンジはできません。亡くなるまで続きます。
辞任するには家庭裁判所の許可が必要で、例えばそれは後見人が病気になって後見人の仕事ができなくなったとか、遠方に引っ越すので管理できなくなるとか、客観的にやむを得ない理由が必要です。

後見人との相性が悪いとは例えばどのようなことでしょうか。
私が聞いたことのある例は、
・タバコを吸うのがすごく楽しみなのに、体に悪いからと、タバコ代を出してもらえない
・癖毛のためストレートパーマをかけていて、本人は楽しみにしているのに、高価だからと禁止する

知的障害・発達障害のある子にとって、客観的に無駄に見えるものが実は本人にとってすごく楽しみな習慣であるケースは珍しくないと思います。そこらへんの理解がない専門職が後見人についてしまう可能性があるのです。

また成年後見人の弁護士が、お金を着服していたニュースもありました。
このような悪いニュースを見ると我が子を任せざるを得ないのに本当に大丈夫なんだろうかととても不安になってしまいます。

確かに悪用する一部の人がいるようですが、
悪い部分が目立ちやすいだけでとても誠実に対応されている方も多いのではないかと思います。

今回はざっと大きな違いについてまとめてみました。
もっともっと、制度の細かいところや実際の話を研究していきたいと思いますので、
引き続き記事を書いていきたいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?