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親なきあとに備えて〜障害者扶養共済制度を活用しよう

障害のある子供に財産を残す方法の一つとして
障害者扶養共済があります。

この制度は、都道府県・政令指定都市が条例によって実施している公的な制度です。

障害者を扶養している保護者の連帯と相互扶助の精神にもとづき、障害者の生活の安定の一助と福祉の増進、将来への不安の軽減を図る目的で生まれました。

この記事ではこの障害者扶養制度について解説します。


制度の概要

①障害のある子をもつ親などの保護者が加入者となる。
②毎月掛金を支払う(1口9,300円〜23,300円。口数は1人2口まで)
※掛金の免除制度があります。加入者が65歳以上、かつ、継続して20年以上加入したときは、その後の掛金は免除されます。
③保護者が死亡または重度の障害になった場合、障害のある子供が終身年金の形で亡くなるまでの間毎月2万円(2口の場合は4万円)もらえる。


障害者表共済の掛金一覧

加入年度(4月1日〜3月31日)の4月1日時点の保護者の年齢によって、掛金がきまります。掛金は、改定がない限り、そのあと年齢を重ねても上がりません。

保護者の年齢    掛金
35歳未満      9,300円
35歳以上40歳未満  11,400円
40歳以上45歳未満  14,300円
45歳以上50歳未満  17,300円
50歳以上55歳未満  18,800円
55歳以上60歳未満  20,700円
60歳以上65歳未満  23,300円


加入要件

子どもの加入要件

①知的障害の人
②身体障害者手帳1級〜3級の人
③自閉症、統合失調症、脳性麻痺、進行性筋萎縮症、血友病などの病気の方で、上記①②と同程度の障害がある人
④①〜③のいずれかに該当し、将来自立した生活が難しいと認められる人

親などの保護者の加入要件

保護者は下記3つとも要件をクリアする必要があります。
①65歳未満の人
②特別な障害や病気がなくて、生命保険に加入できる健康状態の人
③受取人となる障害児者を現に扶養している人


障害者扶養共済のメリット

①公的な制度で安心

公的な制度であるため、民間の生命保険のように保険会社の都合で制度がなくなったりすることがありません。また、加入者が他の都道府県・指定都市に転出しても、転出先での加入手続きにより継続して加入できます。

②掛金が安い

 民間の生命保険であればかかってくる「付加保険料」が必要ないため、割安とされています。

③生活保護支給の上で、「収入」としてみなされない

生活保護の支給額は、国が決めた「最低生活費」に対して本人の収入がどれくらい不足か、その不足部分を補う仕組みです。そのため通常の収入であれば、収入が増えることで生活保護の支給額が減ってしまったりストップしたりしてしまいます。
しかし、この制度であれば「収入」とみなされないため、毎月2〜4万円、ゆとりのある生活を子が送ることができます。

④掛金全額が所得控除される

支払った掛金の分だけ、課税所得を減らすことができます。結果、所得税や住民税が減ります。

⑤親が早く亡くなった場合に備えられる

親が将来お金を残すつもりであっても、働き盛りのときに亡くなってしまうことがないわけではありません。万が一の時のためにあると安心です。

⑥もらえる年金は非課税

所得税や住民税がかかりません。

⑦年金管理者を指定できる

保険金の請求は生命保険同様に受取人自身が行わなければなりませんが、年金管理者を指定することでその人が代わりに手続きできるます。


障害者扶養共済のデメリット

①実質的に掛け捨ての生命保険である

実質掛け捨てであることを理解したうえで制度を検討しましょう。
・加入5年以上の場合(脱退一時金)
・親より子供が先に亡くなってしまった場合(弔慰金)
は一時金が支払われますが、上記両方とも金額は、5年以上10年未満で75,000円、10年以上20年未満で125,000円、20年以上で25万円となります。

②掛金の引き上げのリスクがある

少なくとも5年ごとに保険料の見直しをするとされており、これまでに4回の改定が行われてきています。(1979年、1986年、1996年、2008年)加入者の掛金に加え公費も投入されていますが、加入者が減ることにより掛金が上がる可能性が高くなります。

③インフレで貰える金額の実質的な価値が下がる可能性がある

これは生命保険でも一緒なので仕方ない話ではありますが
2万円もらえるつもりで始めたものの、何十年も先の終身年金ですからいま保護者が想定した2万円ではなくなっている可能性があります。支給額も改定される可能性がありますが「ないよりはあったほうがいい」くらいの金額だと思っておくのが良さそうです。支給額や保険料は、あとで出てきます、独立行政法人福祉医療機構が管轄しています。


掛金総額を安くする方法がある

前述のように、
・掛金は、加入年度(4月1日〜3月31日)の4月1日時点の保護者の年齢で決まります(保険料は改定がない限りずっと同じ)
・掛金は、20年以上かつ保護者が65歳以上になると免除されます。

そのため掛金総額はいつ加入するかによって変わってきます。
最もお得になるのはいつでしょうか?
それは免除に最短で近づける年齢(65歳時点で20年以上支払っている状態)なので、44歳です。
掛金の総額は
14,300円×12ヶ月×21年=3,603,600円

注意点は、加入手続きには何ヶ月も時間がかかることです。都道府県・政令指定都市の窓口に予めいつまでに申し込めば良いか確認しておくと良いでしょう。

制度を管轄するのは独立行政法人福祉医療機構

この制度は独立行政法人福祉医療機構がとりまとめて実施しています。各都道府県が窓口となっていますが、全国のこの共済を取りまとめているのが「心身障害者扶養保険事業」です。
リンク先に出てくる「心身障害者扶養共済」という名称は、「障害者扶養共済制度」と同じものです。自治体によって、呼び方が若干異なり「心身」が付いたり付かなかったりするそうです。

最後に

この制度はメリットのところで触れた通り、生活保護の支給に関して、収入とみなされないという大きな利点があります。
独力で生計をたてることが難しい障害者にとって、この制度で少しゆとりをもって暮らすことができるのは、親としても安心につながるのではないかと思います。

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