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プログレは曲の長さでゲームチェンジ(プログレッシヴ・エッセイ 第18回)

去る2024年4月27日。

主宰するプログレバンド「金属恵比須」のワンマンライヴを吉祥寺シルバーエレファントにて催した。

ゲストでお呼びしたのがキーボードの塚田円さん。1990年メジャーデビューのプログレバンド「プロビデンス」のリーダーで、現在は「那由他計画」で活動中。10年前に金属恵比須『ハリガネムシ』発表直後から気に入っていただいていたのが縁で今回の出演に至る。

塚田円(那由他計画)

ライヴのMCでこう語る。

『ハリガネムシ』は日本のプログレの歴史の“ゲームチェンジャー”だった。

塚田円談

80年代のシンフォニック系、90年代以降のドリーム・シアター系という音楽性がメインだったプログレの音楽性を、70年代風の音に置き換えたというのだ。当人、まったくその意識がない。結成してこのかた、70年代ロックに憧れて作り続けているだけだ。

むしろ今回のライヴこそ金属恵比須にとっての“ゲームチェンジ”だったことは確かだ。8年ぶりのメンバーチェンジが行なわれたことを理由に、新曲「雪割草」という新境地の開拓に出た。なんの変哲もない4分の歌謡曲のチャレンジ。こんな時にしか挑戦できないかと思ってのこと。

曲が長いのを特徴とするプログレの世界で生きていると「4分」というワードだけで“ゲームチェンジ”となるのだ。かつてエイジアが「3分でプログレを作る」というキャッチコピーで成功したことのように、普通のジャンルでは考えられないような縛りが“ゲームチェンジ”のネタになりうる。

筆者

金属恵比須にとって「4分縛り」は“ゲームチェンジ”時にしばしばあった。1998年の夏に作った「トイレの花子さん」もそうである。高校時代に初めてプログレの方法論(不協和音、変拍子)を意識して作った曲であり、その後の金属恵比須のハード・ロック×プログレの音楽性の基礎づけとなった。

後藤マスヒロ

作曲した高校生当時、塚田さんのプロビデンスもドラムの後藤マスヒロさんが在籍したジェラルドももちろん知っていた。だからこそそんな「トイレの花子さん」を一緒に演奏していただけることは光栄を通り越し、こそばゆく、恐縮しっぱなしである。

加えて金属恵比須の“ゲームチェンジ”エピソードをもうひとつ。塚田さんと初めて同じ舞台に立った時のこと。2017年の居酒屋ROUNDABOUT3周年記念ライブ「CANDYTREE GARDEN」だ。
塚田さんはMC中、おもむろにポケットから新聞記事を取り出しコメントをし始めた。のちに『武田家滅亡』でお世話になる作家・伊東潤氏の記事だったと思う。
そのシュールな話術に大笑い。楽屋でマスヒロさんに「これは負けましたねぇ」といった記憶がある。

それからである、金属恵比須が真剣にMCをしなければならないと思い、私自らが前説を始めたのは。MCも重要なステージングのひとつと気づかせてくれたのが塚田さんだった。金属恵比須にとっての“ゲームチェンジャー”だったのである。

それを機に、曲よりも喋りの方が長くなったのは内緒だ。

(撮影:木村篤志)

     ※

⾦属恵⽐須ワンマン・ライヴ
Featuring 塚田円
~猟奇爛漫FEST Vol.6~
アーカイブ配信は2024年5月11日23:59まで

CDジャーナルによるオフィシャルライヴレポはこちら

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