アルバイトは見た!路地裏の日本料理店(親族編)
渡りのバイター#32
パラレルワールドで秒を刻む
前編あらすじ
スキマバイトで訪れた日本料理店。
路地裏の老舗の暖簾をくぐったはずが
スキンヘッドにピアスの大将、金髪な女将。
そこは日本料理のレジスタンスが営む異世界。
任された仕事は団体15名の接客。
果たして無事勤めあげることができるのでしょうか??
コスプレ完了!
店に到着するや否や、支給されたお衣装に着替えました。そう、金髪女将と同じ上下に分かれた簡易なお着物に帯と前掛けを締めてコスプレ完了。
これで私も立派なレジスタンスの一員です。
1st order
これからお越しになるお客様が15名、内2名がお子様との前情報ですが会の趣旨までは現時点では不明。
しかし、次のご予約があり、必ず2時間でお開きとの指令が下ります。
できるか超不安ですが、金髪女将の指示は明確かつ爽快です。
「18:30デザート死守」
いよいよ、お客様の到着です。
ぽつぽつと家族単位でご来店、フォーマル。
法要の親族と判明すると金髪女将が囁き女将と化し、耳元で「18:30デザート、いける」
途端、脳をハッキングされたコスプレロボ子は
「イケル、イケル」と繰り返し脳内再生するのであります!
華麗なる一族
そう、アルバイトは見たのです。
偶然見えただけです。そしてくれぐれもお願いしますがこれはフィクションです。
最初は慣れないお運びに悪戦苦闘。柱にぶつかりそうになったり、草履で躓いたり。
「慌てない」と「18:30」を念仏のように唱えながら八寸あたりで急に冷静になり視界が開けます。
どうやら今日はおばあさまの法要でそっとお写真が立ててあるところから品の良いご親戚一同様な事が伺いしれます。
むむ、どうやら公務員一族。詳しくは控えますが
お子様はおばあさまの玄孫にあたるらしく、孫世代までがだいたい同じ職業で、職場結婚もあるのかお嫁さんも同じ、お婿さんも同じ…
お酒が進むほどに会話のエグ味が増します。
同じ仕事であれば、愚痴も似ますし、何より盛り上がります。
聞いてはいけない。そう思っても、お耳はもはや自分では止められない。
だって公僕が市民の悪口言ってるんだもん。
そんな中、末席のご夫婦はなんとなく肩身が狭そう。
端で子どもたちをあやし、ちょっと引き気味。
あれは違う職業だな。頑張れぇい。
横一列に向かい合う席なのですが、何度運んでも
ひと組の隣同士のご夫婦が近すぎでお料理が置きづらい…なぜ右に寄ってくれない。
左に身体を入れて避けてる?超仲悪いやん。
親子かな〜母親と息子っぽい。
など、など。バイトは見てしまったのです。
他所様の内側を覗き見て悪趣味ですよね。
反省します。
でもなかなか見れない光景で興味津々でした。
なのでnoteの壺に吐き出します。
王様の耳はロバの耳ーーー!
素直にこういう、ご一族のおかげで国家組織が保たれているんだなぁと有難くも感じました。
煮物の蓋を開け泣き崩れる
結果お子様は全部で3名いらっしゃいました。
小学校低学年ぐらいの男の子は大人のコースだったのです。どうやら本人の希望らしかったのですが…
コース料理が運ばれてくる度、顔が曇り、隣の従兄弟のお子様膳のハンバーグをチラ見。
そしてとうとう、その時がきました。
煮物の蓋を開け、トコブシと茄子を目にした途端
希望は絶望へと変わりました。
もう、我慢の限界!
テーブルに突っ伏し泣き崩れたのでした。
「食べたいものが…うぇっ、ひっく、
うぇ、うぇっ、何も…ズッ何もない〜!」
彼の魂の叫び声、絶望した顔を思い出して
当分、白ごはん3杯はいけそうです!
ありがとう!少年!
結果デザートは押したものの
無事、次のお客様をお迎えできました。
めでたしめでたし。
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