『国境亡き騎士団・バリアント』 第5話
「何だお前、殺せるじゃないか」
バァーーン!!!
「えっ?どういう意味ですか?」
門に入り屋敷へと続く中庭を歩んでいる中、アザートはヨグに向けて声を掛けた。
「意味?意味も何もお前はあの金髪女を殺した事を余り良く思わなかった。『騙されてたのだから殺すは・・・』とな。故に、お前はこの戦いにおいて誰も殺さないのではと思っていた」
バァーーン!!!
「いや、あの人達は別に騙されてた訳じゃ無いですし・・・」
「何故そう言い切れる?騙されてたかも知れないぞ。いや、騙されて『た、いない』はどうでもいい。重要なのはそれが分からないまま殺すのはお前にとって良いのかという点だ」
「あっ・・・」
アザートの言葉よって何かを感じたのか身体が小刻みに震え出した。
表情は先程の行動に後悔の色が見える。
バァーーン!!!
「ハイ、ストップ!そこまで。アザート君、あまりヨグ君をいじめないでよ。せっかく前回の最後にカッコよくきめたのに」
「ニャルラさん?」
「ほら、大鎌・デスサイズを片手に『行くか(キリッ!)』って」
ニャルラはそう言ってポーズを取る。
「ニャルラさん!!!」
「ニャハハ・・・さて、ちょっとは落ち着いた?」
「────あっ・・・ハイ」
バァーーン!!!
ヨグがそう言うようにさっきまでの震えが消えた。
「よろしい。アザート君もアザート君でこれから敵陣に突っ込もうとしてる時に味方のやる気削いでどうすんの?聞いた事ないよ、そんな奴」
「分かった分かった」
本当に分かってんのか、コイツ・・・
そんな瞳でニャルラは見るが、アザートは気にする素振りは一切見えない。
バァーーン!!!
「まぁ、私から言いたい事は1つ・・・此処からは難しい事は考えずにクールに行くニャ・・・うん、これを作戦とするニャ。作戦は『クールに行こう』異論は無いね?」
「無い」
「分かりました」
アザートとヨグは了承した。
特にヨグの表情は先程の青い顔が嘘のように笑顔である。
怖っ・・・
アザートはそう脳裏に浮かんだ。
「さて、作戦も決まったとこで丁度良く玄関まで楽に来れたね」
「そうですね、アザートさんが目と目が合った瞬間、有無を言わさず殺しまくったお陰ですからね」
此処に来るまでに既に5人がアザートによって亡き者にされている。
「で、どうする?・・・これ」
カンカンと玄関を叩きながらニャルラが聞く。
「どうするも何もブッ壊す」
そう言ってアザートが装飾銃を向け、撃ち抜こうとしたその時・・・
ギィィィィィィィィ
「「「────ッ!」」」
突如、親親ドアが自動的に開いた。
突然の事象にアザート達は一瞬でドアから距離を取り、各々武器を構える。
しばしの沈黙・・・
しかし、屋敷内から出てくるものはおろか、生物の気配が一切感じない。
「罠・・・でしょうか?」
「フッ、馬鹿馬鹿しい」
アザートはそう呟くと武器を下ろして屋敷内へと入って行った。
「ちょっ、アザートさん!?何やってんですか!?完全に罠ですよ!?」
「罠もナニもあるか。開けてくれたのだ、入らなくては失礼だろう?」
「・・・・・・まぁ、そうだね。失礼だね」
「え〜〜〜、絶対罠でしょ!知りませんよ、僕は」
数秒何か考えた後、ニャルラも屋敷内へと入って行き、それに続いてヨグも入って来た。
しかし、これといって何も起こらない。
「なんだ、罠じゃなかったのか。これなら安心です────」
ギィィィィィィィィガシャン・・・ガチャ
入って来たドアが閉じた。
ついでに鍵もかけられた模様・・・そして、その数秒後・・・
『────アーアーアーハロハロハロー聞こえるか、バリアントのミナサマ。聞こえるか、陰険でクソなアザートォ?』
何やらスピーカーから男の放送が鳴り響き出した。
『俺は『バリアント虐殺し隊!副長ルイ』さ!よろしくよろしく!いやー、遠路遥々って訳じゃないけどご苦労ご苦労!俺達に殺されに来てご苦労ご苦労!』
スピーカーから放送される声の主はルイと呼ばれる男のようだ。
そして、放送はまだ続く・・・
『此処がお前達の墓場となるのさ。仕事の依頼は済ませたか?いや、お前達異形者に依頼するバカはいねーか。親類に遺言は済ませたか?いや、お前達異形者に親類なんかいねーか。まぁ、震えて待ってな・・・と此処で終わりたいところだが、アザート・・・お前は別だ」
ルイがそう言うと、
アザートが立っていた床が開く。
「なっ────」
突然の事だったのか、アザートは何も動けず地下へと落ちていった。
「アザートさん!」
そう言ってヨグはアザートの後を追おうとするもすぐに穴は閉じてしまった。
『ヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッ!!!こんなチンケな罠に引っかかるとはおたくらの切り札も大したことねーな』
「アザート君は・・・何処に?」
『安心しろ、今は生きてるよ。今はな。つーか、あんなんで死ぬ訳ねーよな、だって異形者なんだからな』
その言葉にニャルラは引っ掛かりを覚える。
『まぁ、過ぎたことを考えを巡らすのは良くない。お前達の相手はこの俺がする訳だ、震えて待ってな!!』
ブッッ…ザッ…ザ──────
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