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WRC 2023 Rd.3 Guanajuato Rally México

灼熱と情熱のメキシコ

ラリーメキシコは、メキシコを舞台に繰り広げられるラフロードグラベルラリーだ。
2004年からWRCに登場しすっかりWRCの名物イベントとして定着している。
折しも2020年は高まるCOVID-19パンデミックの影響で、日程が短縮され、それ以後カレンダーから外れていたが、23年はメキシコの歓喜がWRCカレンダーに舞い戻った。

ラリーはグアナファトを中心に構成され、例年と同じステージも見かけることが出来る。第2戦で優勝したタナックが久しい砂利かき役を担うことになり、ロバンペラ、ヌービルと各チームのエースが出走順に顔を揃える。
が、注目はモンテカルロでその実力が全く陰ってないどころか、未だに超一流として一線級のパフォーマンスを誇ったオジェの再登場だろう。


時差15時間

この週末は大変だった。WECのセブリング1000マイルはあるし、WRCはメキシコだしで、双方丸っと確実に昼夜逆転の時差帯であるため、正直殆どリアルタイムで追いかけられなかった。
なんか目が覚めて気が付くと1日がそれぞれ終わっているような感じで、さぞ中継に携わった関係各所の皆さんは大変だったであろうと思う。

寝てる間に事が進むので、寝起きに眠い目をこすって
eWRC-result.comをチェックする日々だった。
ハラハラドキドキするのもいいけど、結果がドンッとくるこの感じも割りに嫌いではない。ハラハラ待っていると心臓がキュッとするので、正直ル・マン24時間なんかも1日だけ気を失っていたいと思ったことが1回や2回ではない。


この人パートタイムですよね?

このメキシコを制したのはオジェだった。通算7勝という記録に積み上げて、メキシコでもマイスターの名前を欲しいままとした。記念のウィナーズブーツも7足目を手に満面の笑みだ。
初日のラッピとの首位争いはもちろん、ラッピがリタイアした後も安定感を遺憾なく発揮。SS16では他を圧倒する8秒以上速いベストタイムを刻んで見せるなど、タイヤマネジメントに定評のあるオジェらしい実にステディかつスムーズなラリー運びの中で押すとこ引くとこを弁えたバツグンのラリーを展開した。生ける伝説とはまさしくオジェのことだ。え?ローブもいるだろって?まぁ今回は出てきてないので一旦置いておいて下さいな。

ラリーメキシコ 2023 最終結果
1位:セバスチャン・オジェ/ヴァンサン・ランデ(トヨタ)
2位:ティエリー・ヌービル/マーティン・ヴィーデガ(ヒョンデ)
3位:エルフィン・エバンス/スコット・マーティン(トヨタ)
4位:カッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン(トヨタ)
5位:ダニ・ソルド/カンディド・カレーラ(ヒョンデ)
6位:ガス・グリーンスミス/ヨナス・アンダーソン(シュコダ) ※WRC2
7位:エミル・リンドホルム/リータ・ハマライネン(TOKスポーツ) ※WRC2
8位:オリバー・ソルベルグ/エリオット・エドモンソン(シュコダ) ※WRC2
9位:オイット・タナック/マルティン・ヤルヴェオヤ(フォード)
10位:カエタン・カエタノヴィッチ/マチエク・シュチェパニアク(シュコダ) ※WRC2


各チーム其々の週末

◆トヨタガズーレーシングWRT
トヨタはオジェの優勝によって、今期2勝目を記録した。昨シーズンのサルデーニャとギリシャといった同類の高温地域におけるラフロードラリーで
1-3-4フィニッシュを決めたのは、マシン開発の方向性が正しい事を示していると言っても良いだろう。
ただ、今回はスウェーデンをスキップしたオジェの出走順+オジェの盤石の経験から繰り出さられるクレバーな走りが合わさって、2位以下を大きく引き離しての優勝だったと見れなくもない。
最後の最後でエバンスが2位を滑り落してしまったのは、惜しい事に変わりはない。足回りにトラブルを抱え、だましだましで完走するも0.4秒差で3位へ転落。エバンスの完全復調とはまだ言え無さそうだ。
また、王者ロバンペラがスウェーデン、メキシコと出走順に泣かされている。今回はいきなりSS3でタナックがターボトラブルで離脱したため、結局先頭走者として砂利をかき分ける役を担わざるを得なかった。
今回の4位でヌービルにランキング上での逆転を許してしまったが、当のロバンペラは落ち着き払っていることだろうと思う。彼の真骨頂はまだこれからだ。

◆MスポーツフォードWRT
スウェーデンで歓喜の勝利を挙げ、砂利かき役の不利を担うことに名乗りを上げ、士気高くメキシコへ降り立ったフォード。
だが、それはいきなりSS3で悪夢へと変わる。タナックはターボトラブル、ルーベはマシンを壊しデイリタイア、結果的に選手権でタナックは9位まで上がったものの、久しいランキングリーダーの座は早々に明け渡すことになってしまった。メイクスは5位と6位相当の定位置で終えることになり、フォード勢にとっては辛く厳しい週末になってしまった。

◆ヒョンデ シェル モービス WRT
スウェーデンに続いてラッピが飛び出し、出走順の有利を最大限活用しながらチームと新代表が待ち望む今期の初勝利が見えたかのよう思われたが、SS11でそのラッピが脱落。今回はソルドもパンクなどで不発に終わっており、エースのヌービルが表彰台2位を争って最終日までバトルを展開。
結果的に2位を奪取し、ヌービル自身もこのスウェーデン、メキシコと宿敵ロバンペラに勝ち越すこととなった。
ランキングボードでもロバンペラを抜いて2位浮上、オジェの参戦形態を鑑みれば実質のランキングリーダーと言って良い。
次戦はターマックであるため、ヌービルはここで更なるリード拡大につなげられることが出来るか。興味深いところだ。


ラリーメキシコのおわりに

【WECとちょいカブってて忙しい】
金曜日はWECの決勝も行われていてハイパーカー規定黄金時代の幕開けも追いかていたので、WRCまでよくよく手が回っていなかった。
どっちも同じ週末で楽しめたのは良かったけれど、筆者個人で別の用事もあったりでアワワってしている間にどっちも過ぎ去ってった感じだ。
次のクロアチアは・・・ポルティマオと1週間ズレてるのでいい感じだ!

【勝田選手は苦戦が続く】
スウェーデンではベストを刻むもその直後にリタイアを喫してしまったが、メキシコも道路外へズリ落ちる形でデイリタイアになってしまった。
初出場となるメキシコでは、速さと安定感のバランスが思うようにミックスしにくかったようで、2戦連続のノーポイントで週末を終える事に。
しかし、現在選手権9位の勝田選手は、次戦クロアチアは出走が不利になるものの、その続くポルトガルでは表彰台に期待がかかる。
出走順有利となるポルトガルで、昨年の様なパフォーマンス+αで欧州イベントにおけるRally1での初表彰台をゲットなるか。
はたまた初優勝ももしかしたら・・・と淡く期待している筆者がいる。

【カッレロケットが見たい】
この2戦、出走順の不利を囲う展開に耐えるロバンペラ。
昨シーズンは先頭出走でも構わずブッちぎる姿が見られたが、各チームともに開発が進み、Rally1の走らせ方を心得始めた今期は中々それを許さない状況とも見て取れる。
だが次はクロアチア、昨シーズンの圧倒的なパフォーマンスと、最後の大逆転はまだ記憶に新しく。オジェと一緒にトヨタに大量得点をもたらして欲しい限りだ。もちろんランキング首位に立てば、その次のポルトガルでは砂かき役になるのだが、ポルトガルでならば"気が付くとロバンペラ"みたいな感じで、ちゃっかり表彰台に立っているような気がしないでもない。
いずれにせよ、あの圧倒的で無慈悲なまでのスピードで走り抜けるロバンペラをもっと見たい!


次戦は春のターマック祭り

次戦は4月20日~4月23日にかけて実施されるラリークロアチア
昨シーズンの大波乱の雨から、最終SSの大逆転の他
一昨年シーズンは、最終SSを前にオジェがリエゾンで一般車と絡むアクシデントがあり、極限の状態の中フルポイント優勝を攫うなど毎年何らかの劇的な展開がある。更には順当なターマックイベントであり、ここで各ワークスのマシン開発の方向性が"正しい"のか"そうでない"のかが、克明に表れてくる。今期の選手権を占う上でも目が離せない1戦となる。

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