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『さよなら私のクラマー』に見る第一話の大切さについて考えてみた

「さよなら私のクラマー」という作品があるんです。

この作品は、『四月は君の嘘』を描いた新川直司さんが『月刊少年マガジン』(講談社)で連載した漫画で、自分は凄く好きな作品なんです。なんですが、この作品がアニメ化されたんですね。

『さよなら私のクラマー』には前日談があるんです。同じ講談社のマガジン系で連載されていた『さよならフットボール』という作品。前日談というだけあって、『さよなら私のクラマー』の主人公である恩田希の中学時代を描いている作品です。

アニメ化するにあたって、前日談の『さよならフットボール』は劇場版として、後日談の『さよなら私のクラマー』はテレビシリーズとして制作される事になったんです。
まあ、それはいい。しかし問題は公開(放映)のやり方です。
前日談である『さよならフットボール』が4/1。(※公開は7月に延期されました)後日談の『さよなら私のクラマー』は映画公開から一週間もしない同4/7放映開始。テレビ放映で評判になってからの劇場版政策決定という流れではなく、ほぼ同時の公開(放映)では先に映画を観るなんていう方は、よっぽどのファンの方くらいしかいないんじゃないかと思うんです。

いくら『四月は君の嘘』がヒットしたからって、知らない原作のアニメを公開日から一週間以内に映画館へ観に行こうと思う人は少ないですよ。

その制作方式を聞いた時なんか嫌な予感がしたんですが、奇しくもそれは現実になっちゃっいました。

『さよならフットボール』という作品は、サッカー好きで、誰よりも練習し、実力もある主人公『恩田希』が、女性だという理由だけで男子サッカー部の公式戦に出場させてもらえない状況の中、半ば強引に出場するんだけど、男子とのフィジカルな差をまざまざと見せつけられ、ボロボロに打ちのめされても最後には自らのスタイルを見出し、そのテクニックで観客を魅了し、それを糧に前へ進んでいくお話です。

そして『さよなら私のクラマー』は、高校生になった主人公、恩田希を中心とした群像劇です。

話数的に『~フットボール』はコミックス二巻分でサイズ的に劇場版には丁度いいですし、テレビや配信で『クラマー』を観た方が興味を持って劇場に足を運ぶ……そういう思惑があったんでしょう。

でも、原作漫画を何回も読み込んだ自分は、『~フットボール』での恩田希の経験があってこその『~クラマー』だと思ってるんですね。
『~フットボール』部分があるから、『~クラマー』のあらゆるシーンが重みを持つし、恩田希以外の登場人物の持つ気持ちや背景、女子サッカー界の状況、ラストに恩田が出す答えが生きて来るんです。

だから多くの人が最初に目にするであろう、テレビシリーズの頭はやっぱり『~フットボール』にしないといけないんです。

それに原作漫画の時点で『さよなら私のクラマー』は、導入部で主要人物が多く入ってくるので、『~フットボール』を知らないで観ると、どのキャラクター目線で入ればいいかが解りにくいんです。

この話の中心人物が恩田希である事が、『~クラマー』序盤ではハッキリさせずに、じわじわと話数を掛けて解ってくる構成になっているから余計です。

原作漫画をリアルタイムで読んでいた自分も『~フットボール』から『~クラマー』まで少し間が空いたので、ちょっと解り辛かったです。キャラクターの見分けも「ん?」となった部分もありましたし。

だからアニメ第一話を観て、「あー、やっぱり解り辛いよな」と思ったんですよね。それに原作ではまるで動いてるような躍動感がある『シザース』や『ルーレット』が逆に動画であるアニメで静止画の様に見えちゃったのも興をそがれる一因でした。

私はストーリー至上主義みたいな傾向があるんで、漫画なら一話。小説ならプロローグ。テレビドラマやアニメなら最初のCM入るまでかオープニングまで、もしくは5分位。映画は自宅で観るなら長くて10分で惹き込まれる要素が無ければそこで観る(読む)のを止めます。
作品を観たり読んだりするのって、意外と体力がいるんですよ。
おっさんになって涙もろくなったのもあって、昔より止める基準が短くなった気もします。

こんな感じだったら、後半良くなってとしてもそこまで観るの辛いなって思っちゃうんです。

ちなみに原作漫画は何回も読みなおしては毎回ボロ泣きする程のお気に入り作品です。
だから言いたい。『さよならフットボール』は、『さよなら私のクラマー』における主人公の中学生編でも無ければスピンオフ作品でも無い。ただの前日談じゃなく、物語のテーマに関わる重要な作品なんです。そこを飛ばして『~クラマー』から入ってしまうと、原作一巻で起きる出来事の細かい部分の多くが観ている人に伝わらないんです。

だから初見の多くの視聴者は、どういう作品なのかが掴めずに「もういいかな」って次回を観るのをやめてしまうかもしれない。

NetFlixやAmazonプライムビデオの様に、定額見放題のストリーミングサービスが普及してきた現在、勝負はオープニング5分あるかないかなんですよ。
この作品は中盤から後半に見せ場があるんですなんて言い訳なんて通じない時代ですよ。その辺を考えたら、こういう構成にはならなかったんじゃないかって残念に思うんです。

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『さよなら私のクラマー』公式サイト



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