夕陽

アルコール依存症


それは危険な病気である。

「もしかして、まいはまさんも依存症なんじゃないの?」

毎日飲んだくれの様子の私に、そんな声が飛んできそうであるが、実は私には無縁なことである。

なにしろ、もともと私は酒が飲めない体質で、飲むとすぐ顔が赤くなり、これ以上体内に流し込むのはやめてくれと身体に必死の訴えをされるくらいアルコールに弱いからだ。

ワインは3杯が限界。

なので、醸造酒は1杯でやめておき、早めに蒸留酒に切り替えるか、蒸留酒で通すかにする。それでも、ウイスキーはストレートで3杯くらいまでかな。

わかっているのは4杯以上飲めば、確実に寝る。

その場合、電車に乗ったら最寄駅では降りられない、もしくは、上り下りを間違えて辿り着かなくて、ここどこ状態になり、帰路はますます遠くなるというパターンになるので、家ではない限りやめておく。

それでも寝室がどこなのかわからなくなる。。。

友人は風呂場で寝ていたことがあるらしい。湯船にお湯が張ってあり、温かったので、蓋の上に横になって寝ていたそうだ。

まあ、酔っ払いとはこういうものである。

とにかく、量は多く飲めない。
だから、ちびちびちびちび、だらだらだらだらやるのである。

そして、酒に合うつまみ、この一杯を活かすつまみとは……、と追求していく。これが最高に楽しい遊びであり、道楽とはこういうもんさ、へへん、と豪語しまくる。

だが、こんな私のようなお遊び酒飲みとは違う酒の強い人は要注意である。

アルコール依存症というのは、コントロール障害という病気で、病気であるからにはひたすら治療するしかない。

酒が好きなのではない。

空気がないと生きていけないとの同じく、身体が、アルコールがなくては生きていけないと要求するのである。

酒が切れた時の禁断症状は相当なつらさで、それを収めたくて飲むという病気である。心も身体もボロボロになり、通常の社会生活は送れなくなる。

禁酒ではなく、断酒しなくてはいけない。
一滴も飲んではいけないのだ。
酒は百薬の長であるのだが、依存症の病気の人には毒以外の何物でもない。

友人が若い時、その一歩手前になった。
不妊治療をしていた時、結果がなかなか得られず、このまま子供を産むことができないのでは……、と落ち込み続け、そのストレス解消として、ダンナ様が帰ってくる前にお酒を先に飲むようになったのだった。

だが、友人はそんな自分が怖くなり、早めに病院に通い、不妊治療を中断して仕事に復帰し、子供を諦めるという選択をした。

そんな友人とは、毎月のように一緒に楽しく酒を飲んでいるが、半端な強さではない。私がウイスキー1杯をちびちびやっている間に3杯くらい飲んでいるのだ。

友人は、依存症になる危険が常にあることを自覚していると言う。
だから、楽しく飲みたいのだと。

他の友人は、患ってしまった。
事業家を夫に持つ友人は、自身もその事業を手伝っていて、つまり24時間働いているのと同じ状態にあり、ストレス解消のため寝酒を始めた。

飲んで気持ちよく眠れればよかったのである。

だが、私のように酔っ払って正体をなくすということはなく、朝まで飲み続けることができる。それを連日続けて、それでも良い眠りはやってこなく、やがて一日中アルコールなしではいられなくなった。仕事中もこっそり飲んでいた。いつも酒の匂いを漂わすようになり、従業員たちが心配したそうだ。

友人の夫は止めさせようと努力したが、家族がやめさせられるようなものではない。なので、現在は専門の病院に入院し、ほとんど家には帰ってこないという状況にある。

退院すると怖いのだそうだ。
酒を容易に手に入れることができるということが怖いそうだ。コンビニでもどこでも売っているし、飲み屋はどこにでもある。
すると、酒に呼ばれるような気がし、飲みたくなる。しかし、少しでも飲んだら自分ではやめることができず、その後の恐ろしい離脱症状(禁断症状)と戦うことは熾烈を極めるそうだ。

この友人ふたりに共通しているのは、ストレス解消のために酒を飲んでいたということである。

これはダメ!

「酒は飲んでも呑まれるな」

という言葉があるが、酔っ払うのはいい。
むしろ、酔わないなんてお酒に失礼である。
だが、ストレスを酒にぶつけると、酒の神様が怒るのか、悪酔いする。
(それは何度か経験済み)

おそらく酒の神様に呑みこまれてしまうのであろう。

だから、酒は楽しく飲まなければいけない。

ということで、早く禁酒期間が終了すればいい。要はそれが言いたかった。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?